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交通事故の注目の裁判例

2019/11/15 更新

高次脳機能障害(3級)を残す63歳男性の将来介護費を67歳まで近親者介護費として日額5,000円、以降平均余命まで職業人介護費として日額8,000円で認めた裁判例

福岡地裁 平成31年3月25日判決

自保ジャーナル2047号

今回は、高次脳機能障害により自賠責3級を認定された63歳男性の将来介護費について、(被害者本人が)67歳になるまでは妻による介護費として日額5,000円、それ以降平均余命までは職業付添人による介護費用として日額8,000円が認められた裁判例について解説します。(本件で争われた点は多岐に渡りますが、今回は将来介護費の問題に絞ってご紹介します。)

本件では、大型貨物車を運転中の63歳男性(原告)が、高速道路上の登坂車線で大型貨物車に追突され、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、その結果、自賠責3級3号の高次脳機能障害が認定されました。本件訴訟では、過失割合等についても争点になりましたが、将来介護費について、裁判所は次のような判断をしました。

将来介護費について、原告の高次脳機能障害については、やや増悪傾向にある印象であること、原告には、無気力と易怒性が認められること、原告の生活のすべての局面で見守り、声掛け、準備等が必要であり、妻による介護が難しい場合には、介護の専門家による介護が必要であることが認められる。これらのことを総合すると、原告には、症状固定時の年齢である65歳から平均余命(19年)まで介護が必要であると言わざるを得ない。そして、原告が65歳から67歳までは妻による介護、68歳以降は職業付添人による介護を行い、妻による介護は1日当たり5,000円、職業付添人による介護は1日当たり8,000円とするのが相当である。
結論として、将来介護費として、3325万3033円が認められました。

〈コメント〉
重度の後遺障害が残る事案では、将来の付添介護が必要とされることがあります。医師の指示又は症状の程度により必要性が裁判上認められれば、将来介護費が、被害者本人の損害として認定されます。将来介護費は、請求額が多額になることが多く、その必要性、算定方法を巡って争いになることが少なくありません。

将来介護費の要否については、例えば、赤い本下巻講演録(平成19年、蛭川明彦裁判官、「後遺障害等級3級以下に相当する後遺障害を有する者に係る介護費用及び家屋改造費について」)では、「後遺障害の内容としては重度の高次脳機能障害、脊髄損傷ないし下肢欠損の場合で、日常生活を送る上で他者の看視(監視)が必要である場合や、排尿排便、食事、衣服着脱、入浴といった日常生活の支障が認められる場合には、随時介護として介護費用が認められ易い」と述べられていることが参考になります。

将来介護費の金額については、例えば、赤い本下巻講演録(平成23年、山田智子裁判官、「重度後遺障害の将来介護費の算定に関する諸問題~職業付添人による介護を中心として~」では近親者介護について、「自力歩行が可能で、一定の日常生活動作はできるものの、常時あるいは随時の看視が必要な場合には、日額8,000円より低い金額が算定されている傾向が見受けられる」、職業人介護について、「概ね日額8,000円から15,000円の間で認定されており」と述べられていることが参考になります。

本件では、職業付添人による将来介護費について、「原告には、無気力と易怒性が認められること、原告の生活のすべての局面で見守り、声掛け、準備等が必要であり」という具体的な事情を考慮して将来介護費の必要性が認められました。一方で、一定の日常生活動作は可能であることも考慮して、近親者介護費として日額が5,000円が認定されたものと考えられます。なお、近親者介護の場合、介護は肉体的精神的負担も大きいものですので、介護にあたる近親者が67歳以降は職業人介護を認める裁判例も多いです。本件では、同様の判断手法を用いているものと考えられますが、被害者本人が67歳以降は職業人介護としている点が若干特徴的です。

(文責:弁護士 粟津 正博

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