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交通事故の注目の裁判例

2020/04/13 更新

死亡慰謝料について被告の前方不注意等の責任が極めて重大等の理由から合計3,100万円を認定した事例

名古屋地裁一宮支部 平成31年3月28日判決

自保ジャーナル2049号

今回は、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い死亡した9歳男子小学生について、加害者の責任が極めて重大等の理由から死亡慰謝料等を合計3,100万円と認定した裁判例を取り上げます。

本件で、被害者は、信号のない交差点の横断歩道を集団下校で歩行横断中に、左方から進行してきた加害者普通貨物車に衝突され、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い死亡するに至りました。加害者は、本件事故以前から、夢中になっていたゲームアプリを起動させたスマートフォンのディスプレイを確認するなどしながら車両を運転しており、本件事故時もゲームアプリを起動させたスマートフォンを本件車両の運転席横のシートに置き、同スマートフォンを確認するなどしながら車両を運転し、本件交差点を通過するにあたって、右前方約38.2mの本件交差点入口の横断歩道手前に被害者を含めた小学生の集団がいることを認めました。それにもかかわらず、加害者は、スマートフォンを3秒程度注視した後、同横断歩道手前2.8mに至って顔をあげたところ、上記横断歩道上にいる被害者に気づき、ブレーキをかけたが間に合わず衝突させた事故です。

ながら運転の死亡事故

加害者は、本件事件直後、直ちに運転していた本件車両から降り、被害者の様子を確認した上で、携帯電話で警察に連絡したほか、近くの酒屋に行き、救急車を呼ぶようお願いしており、道路交通法上求められる救護措置義務を果たしているのであって、死亡慰謝料等の金額を判断するにあたってはかかる事情も考慮されるべきである等と主張しました。

これに対して裁判所は、

加害者は、前方注視という運転者として基本的な注意義務を怠ったばかりでなく、その原因が夢中になっていたゲームに気を取られていたという単に自身の欲求から出るものであって、しかも、加害者は本件事故以前よりその運転行為の危険性を十分に認識していたのであり、加害者の責任は極めて重大である。また、本件事故後においても、近くの酒屋に救急車を呼ぶようにお願いしたり、携帯電話で110番通報をしたりしたということがあるにせよ、加害者は別の女性が被害者に走って駆け寄っている中、被害者の脇を歩きながら酒屋の方に向かっているほか、110番通報を終えた後も被害者の脇にたったままの状態であり、被害者への声掛け等も積極的に行っている様子も伺われないのであって、被害者の救護に対する態度も慰謝料を判断するにあたって十分考慮しなければならないとして、死亡慰謝料を2,500万円、親族の固有の慰謝料として父親200万円、母親200万円、兄100万円、祖父母各50万円を認めました。

弁護士のコメント

このように死亡慰謝料等については、事故の原因となった注意義務の内容や原因及び事故前からの加害者の認識が慰謝料算定に加味されるだけでなく、加害者がある程度の救護義務を果たしていたとしても、救護に対する態度が不誠実である等の事情があると増額される可能性があります。そのため、事故前の加害者の認識や事故時の加害者の態様だけでなく、事故後の加害者の態度等も具体的に主張して慰謝料の増額主張していくことが重要です。

(文責:弁護士 小林 義和