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交通事故の注目の裁判例

2018/06/22 更新

以前に後遺障害認定(14級10号)がされた部位について、後遺障害認定(14級9号)をした事例

神戸地裁 平成29年9月28日判決

自保ジャーナル2012号

直進二輪車が右折四輪車に衝突されたという事故です。

被害者には頭痛・頸項部痛、腰痛、右下肢しびれ感の症状が残りましたが、自賠責の後遺障害等級認定手続では、次の理由で後遺障害非該当と認定されました。

頭痛・頸項部痛:この事故の約7年半前に発生した交通事故により受傷した頸部痛の症状で14級10号に認定されており、同一部位の障害として加重に至っていない。

腰痛:この事故の約7年半前に発生した交通事故により受傷した腰痛の症状で14級10号に認定されており、同一部位の障害として加重に至っていない。

右下肢しびれ感:将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えられない。

この訴訟で、被害者は、頸部由来の症状及び腰部由来の症状は後遺障害14級9号に認定されるべきであると主張したのに対し、裁判所は、いずれの症状も14級9号に該当し、被害者の後遺障害は併合14級であると判断しました。裁判所は次の事情を指摘しました(これらだけではありません。)。

  • 約7年半前の交通事故の怪我の治療の終了(症状固定)後、被害者は通院治療を受けていなかった。
  • 被害者は、この事故を機にこれらの症状を訴えるようになった。

自賠責の後遺障害等級認定手続では、以前に「局部に神経症状を残すもの」と認定されたことのある部位と「同一の部位」については、さらに「局部の神経症状を残すもの」との認定がされることはありません(「同一の部位」の解釈について判断した裁判例があります。自賠責は、後遺障害は永残性があるものであるという前提に立っているからです。

一方、賠償実務においては、いわゆるむち打ち症で14級9号「局部に神経症状を残すもの」の後遺障害が残った事案では、労働能力喪失期間を67歳までとしないことが通常です。将来治ったり馴化したりする症状であると考えられているからです。自賠責の前提と賠償実務との間に違いが生じています。

自賠責の認定がない後遺障害が残ったことを前提とする示談解決に応じる任意保険会社は皆無といってよいと思います。したがいまして、「同一の部位」について再度交通事故によって「局部に神経症状を残すもの」という後遺障害が残ったことを前提とする賠償を求めるためには、訴訟手続によるほかありません。

通常の14級9号の認定に至る事情(これも被害者が主張立証しなければなりません。)に加え、前回の症状固定日から今回の事故までの①期間②通院の有無③生活状況(積極的にスポーツをしていたなど)などの事情が重要だといえそうです。

「同一の部位」に生じた神経症状が後遺障害14級9号に当たるとの主張が奏功した事例として参考になると考え、この裁判例をご紹介いたしました。

(文責:弁護士 佐藤 寿康

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