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後で高次脳機能障害に気付いたときの対応

後で高次脳機能障害に気付いたときの対応

最終更新日:2023年6月27日

監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎

Q交通事故で高次脳機能障害になったことに後で気付きました。どうすればよいですか?
AまずはCTやMRIの画像検査を受けましょう。示談前のときは後遺障害申請をしましょう。示談後のときは追加の損害賠償は難しいです。福祉サービスの利用を検討しましょう。
画像診断

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは脳損傷による認知障害全般です。様々な認知障害だけではなく、行動障害や人格変化を伴うことが多いです。症状には記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。

脳外傷による高次脳機能障害は、次のような理由から見落とされやすいです。

  • 急性期の合併外傷の治療を優先し、医師が高次脳機能障害に気付かないため
  • 患者の意識が回復したので、家族は他の症状もいずれは回復すると考えているため
  • 自己洞察力が低下したので、被害者本人が症状の存在を否定しているため

CTやMRIの画像検査が重要

高次脳機能障害に気付いたとき、まずはCTやMRIなどの画像検査をしましょう。

交通事故から時間が経過した後の画像だけしかないと、事故による怪我と判断できないことがあります。そのため、高次脳機能障害に気付いたら、できるだけ早く画像検査をしましょう。

示談前のときは後遺障害申請

保険会社との示談前のときは後遺障害の申請をしましょう。

事故直後の画像がある場合と比べると、後遺障害認定の確率は低いです。しかし、画像所見があれば後遺障害認定の可能性はあります。

高次脳機能障害の場合、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級の後遺障害の可能性があります。

等級 認定基準
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

示談後のときは対応困難

では、保険会社と示談してしまった後に高次脳機能障害と気付いたときはどうなるでしょうか?

示談すると追加の損害賠償は請求できません。そのため、示談後に高次脳機能障害と気付いたときは、保険会社に追加請求は原則できません。

ただし、事故が原因でなくても福祉サービスは利用できます。市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、次のような福祉サービスの利用を検討しましょう。

  • ①障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス
  • ②介護保険法による介護サービス
  • ③障害者手帳制度に基づく福祉サービス

リハビリの重要性

高次脳機能障害は、できるだけ早い時期にリハビリを開始すると、その後の症状が軽くなります。怪我をした当初に適切なリハビリをしないと、後でさまざまな後遺障害に悩む確率が上がります。

高次脳機能障害に気付いたときは、できるだけ早期にリハビリを開始しましょう。

具体例の紹介

高次脳機能障害の発症に気付かず、後で大変な苦労をした具体例を紹介します。

Jさん(40歳男性)は、人身事故が原因で2週間入院し、その後職場復帰しました。

車にはねられて頭を打ち、事故直後は意識がもうろうとしていました。しかし、レントゲン検査では特に異常は見つからず、退院となりました。Jさんは当時、大きな商談をまとめるために奔走していました。体調に不安もありません。仕事を再開できることを喜んでいました。

交通事故で受けた損害賠償問題に時間を割かれるのが惜しく、Jさんは相手方の保険会社が提案する金額で和解することに同意しました。あとは書類を正式に作成すれば示談が成立するところまで話が進んでいました。

しかし、仕事を再開したJさんの体に異変が起きたのです。

得意先の会社を訪問して商談後、ちょうど昼時だったので得意先の社員を昼食に招待します。おいしいと評判の焼肉ランチに行きました。

Jさんは、肉の焼き方や食べ方が気になって、どうにもならなくなりました。

「その肉は私が食べるつもりだったのに」「食べるのが遅いからあなたの分の肉が焦げてしまったじゃないか」など、終始文句のオンパレードです。しかも冗談半分ではなく、叱責するかのような口調です。

これには、取引先の社員も驚きました。以前のJさんは、明朗快活な好男子でした。得意先の人に命令したり文句を言うことはありませんでした。

実は、Jさんの性格の変化は高次脳機能障害によるものでした。

空気を読まず言いたいことをずばっと言う、すぐ怒り出すなどの態度は、Jさんの所属する会社でもやがて評判になります。

上司がJさんに病院を再受診して精密検査を受けるよう助言し、MRI検査で詳しく調べたところ、高次脳機能障害との診断でした。

Jさんは、示談成立寸前で和解を取りやめ、治療を継続しました。

高次脳機能障害が疑われるときは、初期に精密検査を受けることが重要です。

まとめ:後で高次脳機能障害に気付いたときの対応

後で高次脳機能障害に気付いたとき、まずはCTやMRIの画像検査を受けましょう。示談前のときは後遺障害申請をしましょう。示談後のときは追加の損害賠償は難しいです。福祉サービスの利用を検討しましょう。

(監修者 弁護士 大澤 一郎

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