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交通事故知識ガイド下肢及び足指

股関節その3

股関節その3 大腿骨転子部・転子下骨折

大腿骨近位部
大腿骨近位部の骨折は、いくつかに分類されていますが、分類の方法にもいくつか種類があります。代表的なものは、次の2種類です。

(関節包の内部か外部かによる分類)

  • 大腿骨頸部内側骨折(関節包の内部で生じた骨折) 血流が乏しく、壊死を起こすことがある。
  • 大腿骨頸部外側骨折(関節包の外部で生じた骨折) 血流が豊富で、良好に癒合することが多い。

(骨折部位による分類)

  • 大腿骨頸部骨折
  • 大腿骨転子部骨折
  • 大腿骨転子下骨折

今回お書きするのは、大腿骨転子部骨折と大腿骨転子下骨折についてです。いずれも大腿骨頸部外側骨折ということになります。

転子部とは、大腿骨近位部のうち太く出っ張った部分です。足の付け根を外側から触ると、出っ張っている部分が1か所ありますが、それが転子部です。転子部に骨折が生じたものが転子部骨折で、転子部の下部に骨折が生じたものが転子下骨折です。
大腿骨転子部骨折は、足の付け根部分の骨折でして、交通事故では、自転車や原付が自動車と衝突したという事故において、自転車や原付の運転者に生じることが多いです。

高齢者の転倒で起こる骨折の典型でもあります。 転子部・転子下骨折が起きたときは、その直後から足の付け根部分に激しい痛みがあり、立つことができません。腫れは、大腿骨頸部骨折よりも早く大きく現れます。骨折の転位が大きいときは、膝や足趾が外側を向いて変形しているのが外観からも確認できることがあります。

単純XP撮影で、大腿骨転子部に骨折が見られ、確定診断となります。大腿骨頸部骨折または大腿骨転子部骨折が疑われるもののXP撮影で判然としないときは、MRI撮影と骨シンチグラフィーが有用です。
大腿骨転子部骨折は、安定型と不安定型に分類されます。安定型は、転位のないものや、転位があっても骨折線が単純なものを指します。不安定型は安定型と異なり、第3骨片や第4骨片ができるほどに転位したものなどを指します。
血行が良く、骨癒合も良好に推移し、適切に治療されれば偽関節に至ることは稀です。しかし、安定型、不安定型のどちらであっても、内反変形の防止、早期離床を目的として、観血的手術が行われることが多いです。
早期に手術を行い、早期に機能訓練を開始して、ゆくゆくは独立歩行ができるように治療が進められています。

安定型にとどまるときは、侵襲の少ないエンダー法が多く用いられますが、転位が激しいときは、固定性に優れているCHS法(コンプレッション ヒップ スクリュー)が用いられます。安定型骨折でもCHS法が行われることもあります。

大腿骨転子部・転子下骨折における後遺障害のポイント

1.股関節の機能障害と痛みが後遺障害の対象です。

転位の少ない安定型の骨折で、被害者が若年者であれば、後遺障害に至らないことがほとんどです。 しかし、骨折の形状、骨癒合の状況によっては、機能障害や痛みの残存が予想されます。

2.人工関節の弛み、耐久性等

約95パーセントが20年間持ったというデータがあるようです。これは、20年前に手術で入れたものについてのデータでして、現在は人工関節の材質が向上しているとして、耐久性はさらに上がっているのではないかという意見もあります。

かつては、人工関節の材質の問題があり、短期間で摩耗したり、置換後の骨との間に緩みが生じたりすることが問題となっていました。しかし、その後材質が向上し、耐久性が上がったとされています。そのため、かつては人工関節に置換されたときの等級は8級でしたが、現在は10級と評価することとしています。

人工関節を長持ちさせるには、関節を深く曲げるような動きを避けたり、転倒を避けたり、肥満の防止に努めることなどが求められます。以上に気を付ければ、耐用年数について過剰に心配する必要はありません。
なお、人工骨頭や人工関節の再置換が必要となったとき、労災保険は再発申請でこれを認めます。

3.人工骨頭、人工関節の置換術を行った場合と8級7号について

人工骨頭や人工関節の挿入置換手術が行われたとき、関節可動域の角度が健側の2分の1以下に制限された場合は、8級7号「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に該当するとされています。
しかし、人工関節に置き換えても、関節可動域が2分の1以下に制限されてしまうという状況は、通常、考えられません。