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交通事故で入院したときの慰謝料

交通事故で入院したときの慰謝料

最終更新日:2023年9月5日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 辻 佐和子

Q交通事故で入院した場合、慰謝料はいくらもらえますか?
A慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準があります。

たとえば、骨折で入院2カ月で治療終了となったときの弁護士基準の慰謝料は101万円です。

実際には入院終了後に通院を続けることが多く、その場合は通院分の慰謝料を加算します。たとえば、入院2か月後に3カ月通院を継続した際の慰謝料は入院・通院合計で154万円です。

後遺障害が認定された場合、入院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が支払されます。たとえば、14級の後遺障害認定されたときの弁護士基準の慰謝料は110万円です。

足の骨折で入院

1. 交通事故で入院した場合にもらえる慰謝料

交通事故の被害に遭うと、次の慰謝料がもらえます。

  • ① 傷害(入通院)慰謝料
  • ② 後遺障害慰謝料(※後遺障害が残り、後遺障害等級が認定された場合のみ)
  • ③ 死亡慰謝料(※死亡した場合のみ)

後遺障害・死亡の有無にかかわらず、入院・通院することでもらえる慰謝料は傷害(入通院)慰謝料だけです。

2. 自賠責基準と弁護士基準

入通院慰謝料の計算方法は、大きくわけて3種類です。

  • 自賠責基準…最低限の補償を目的とした自賠責保険により支払われる保険金の金額。
  • 任意保険基準…各任意保険会社が慰謝料算定に用いる独自の基準。自賠責基準と弁護士基準の間の金額であることが多い。
  • 弁護士基準…裁判所が慰謝料算定に用いる基準。弁護士をつけることで、弁護士基準を用いることができるようになる。

3つの基準で最も慰謝料の金額が高くなる基準は、弁護士基準です。

3. 入通院慰謝料の算定方法

自賠責基準

  • 自賠責基準では、【4300円×対象日数】で入通院慰謝料が算定されます。
  • 「対象日数」は、次の①②のうち「少ない日数」です。

①治療期間(事故から完治日または症状固定まで)の全日数
②実通院日数(入院日数+実際に通院した日数)×2

任意保険基準

  • 各保険会社によって算定方法は異なります。
  • 自賠責基準と弁護士基準の中間位のことが多いです。

弁護士基準

  • 入通院慰謝料は、原則として入通院期間を基礎とし、次の別表Ⅰを使って算定します。

別表Ⅰ

(単位:万円)
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

入通院期間が長くなるにつれ、慰謝料の増加率は小さくなっていきます。

むち打ちで他覚所見がない場合や、軽い打撲、軽い挫創といった軽い怪我の場合は、次の別表Ⅱを使います。

別表Ⅱ

(単位:万円)
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

別表Ⅰや別表Ⅱの表の使い方は、次のとおりです。

①入院のみ・通院のみの場合は、該当する月数の金額が入通院慰謝料の目安となる。
例1:別表Ⅰで通院期間が5か月(入院なし)の場合は105万円
よくあるケースとして、むち打ちで半年通院する(入院はなし)というものがあります。

この場合は、別表Ⅱをもとに通院6か月のマスを見ると、「89」と記載があるため、89万円が入通院慰謝料の目安となることがわかります。

②入院期間と通院期間がある場合は、入院期間の入院慰謝料に、全体の治療期間の通院慰謝料から入院期間分の通院慰謝料を引いた金額を足す。
例2:別表Ⅰで入院2か月の後に3か月通院した場合(治療期間5か月)

2か月の入院慰謝料+(5か月の通院慰謝料―2か月の通院慰謝料)
=101+105-52
=154万円
※入院2か月と通院3か月の列がクロスするマスの数字と一致します。

③入院期間や通院期間について、月単位でみたときに端数が出る場合は、次のとおり計算する。
端数を除いた月数の金額+(その1つ上の月数の金額―端数を除いた月数の金額)÷1か月の日数×端数の日数

例3:別表Ⅰで入院が4か月10日の場合
4か月の入院慰謝料+(5か月の入院慰謝料―4か月の入院慰謝料)×10/30
=184万円+(217万円―184万円)×10/30
=195万円

なお、通院が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度をふまえて、実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあります。つまり、算定の基礎となる日数が減る可能性があるということです。

また、入院待機中の期間やギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は、入院期間とみることがあります。

4. 自賠責基準と弁護士基準の比較

自賠責基準と弁護士基準を比較すると、入通院慰謝料には以下のような違いが出ます。

例1:むちうちで半年間通院、実通院日数は60日。

  • ① 自賠責基準で算定した場合
    対象日数は実通院日数の2倍(120日)なので、
    4300円×120日=51万6000円
  • ② 弁護士基準で算定した場合(別表Ⅱ)
    89万円

例2:骨折して1か月間入院した後、4か月通院、実通院日数は50日。

  • ① 自賠責基準で算定した場合
    対象日数は治療期間(150日)なので、
    4300円×150日=64万5000円
  • ② 弁護士基準で算定した場合(別表Ⅰ)
    53万円+(105万円―28万円)=130万円
    ※1か月は30日で計算しています。

このように、弁護士基準で算定した慰謝料は、自賠責基準で算定した慰謝料の倍ちかくの金額になることもあります。

5. 後遺障害慰謝料

入院するような怪我の場合、後遺障害が認定される可能性もあります。

後遺障害が認定された場合、認定された後遺障害の内容に応じた慰謝料が別途支払されます。たとえば、後遺障害14級が認定された場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は110万円となります。

6. 慰謝料を増額させる方法

弁護士基準の慰謝料額はあくまで目安です。事情により慰謝料が増減額することがあります。

裁判で慰謝料額の増額を認めてもらうためには、次のような有利な事情を主張する必要があります。

①傷害の部位・程度

別表Ⅰが適用される場合で、傷害の部位・程度がひどいものであれば、20~30%程度増額の可能性があります。傷害の部位・程度のひどいものとしては、たとえば、複数箇所の骨折、内臓破裂を伴う傷害などが考えられます。

②特別の苦痛

生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、特別の苦痛が認められるとして慰謝料が増額されることがあります。

③ 入通院期間を短縮しなければならなかった事情

被害者が幼児をもつ母親であったり、仕事の都合などで特に入院期間を短縮したりしたと認められる場合には、慰謝料が増額されることがあります。

また、入院待機中の期間があったことや、退院後にギプス固定中等安静を要した期間があったことを主張することで、その期間が入院期間であったとみられる可能性があります。

7. まとめ:交通事故で入院したときの慰謝料

慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準があります。

たとえば、骨折で入院2カ月で治療終了となったときの弁護士基準の慰謝料は101万円です。

実際には入院終了後に通院を続けることが多く、その場合は通院分の慰謝料を加算します。たとえば、入院2か月後に3カ月通院を継続した際の慰謝料は入院・通院合計で154万円です。

後遺障害が認定された場合、入院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が支払されます。たとえば、14級の後遺障害認定されたときの弁護士基準の慰謝料は110万円です。

(監修者 弁護士 辻 佐和子

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