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交通事故知識ガイド損害賠償額の計算方法

慰謝料

最終更新日:2024年7月1日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 佐藤 寿康

交通事故の慰謝料

適正な慰謝料を獲得するにはルールを正しく理解することが必要です。
この記事では交通事故の被害者に向けて、慰謝料の計算方法や適正な慰謝料をもらうためにしてはいけないことなどを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすくお伝えします。
なお、慰謝料の計算方法は複雑ですので弁護士へのご相談をお勧めします。

交通事故の慰謝料は3種類

交通事故の慰謝料は3種類です。入通院慰謝料後遺障害慰謝料死亡慰謝料です。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故による怪我で入通院したことに対する慰謝料です。
傷害慰謝料ともいいます。入通院期間や日数が長くなると金額が増えます。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故の怪我で後遺障害が残った場合に、後遺障害の内容や程度により認められる慰謝料です。
後遺障害は1級から14級までの等級があり、等級が重いほど後遺障害慰謝料が高額になります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故で死亡したことに対する慰謝料です。
死亡した人がどのような人であったかにより金額が変わります。家族構成によっても変わります。

交通事故の慰謝料には3つの基準

交通事故の慰謝料には3つの基準があります。自賠責基準任意保険基準裁判基準です。

自賠責基準

自賠責基準とは、自賠責保険で保険金を計算するときの基準です。自賠責基準は3つの基準の中で一番低額となることが多いです。
自賠責保険基準ということもあります。

任意保険基準

任意保険基準とは、加害者の任意保険会社が保険金を計算するときの基準です。
任意保険基準は各保険会社の内部基準であり非公開です。保険会社によっても異なります。ただ、だいたいの相場はあります。
任意保険基準は自賠責基準と裁判基準の中間となることが多いです。

裁判基準

裁判基準とは、裁判所が判決のときに使う基準です。弁護士が示談交渉をするときも裁判基準で請求します。
裁判基準は3つの基準の中で一番高額となることが多いです。
赤本基準、赤い本基準、弁護士基準ということもあります。

入通院慰謝料

では自賠責基準、任意保険基準、裁判基準で入通院慰謝料はどのように計算するのでしょうか?

自賠責基準

自賠責基準で入通院慰謝料を計算する場合、4,300円×日数で計算します。
日数は①入通院期間、②実通院日数×2のうち少ない日数で計算します。

たとえば、むちうちで2ヶ月間(60日)通院を継続し、2ヶ月の中で45日病院に行ったとします。
①入通院期間は60日、
②実通院日数(45日)×2は90日
となり60日の方が少ないです。そこで、日数は60日で計算します。
【計算式】 4,300円×60日=172,000円
自賠責基準の慰謝料は172,000円となります。

任意保険基準

任意保険基準の入通院慰謝料の計算方法は非公開です。各保険会社によっても異なります。
一般的には入院期間や通院期間が長いと入通院慰謝料が増えます。
たとえば、ある保険会社の基準だと次の通りです。

  • 通院1ヶ月 126,000円
  • 通院2カ月 252,000円
  • 通院3カ月 378,000円
  • 通院6ヶ月 642,000円

入院した場合は慰謝料が増えます。
たとえば、入院1カ月と通院1カ月の合計2カ月だと慰謝料は378,000円です。

自賠責基準と比べると、任意保険基準の入通院慰謝料は高額となることが多いです。

裁判基準

裁判基準で入通院慰謝料を計算する場合、入院期間や通院期間が長いと入通院慰謝料が増えます。

裁判基準の入通院慰謝料には2つの基準があります。

  • 骨折など重症の基準
  • むちうち、軽い打撲、軽い挫傷などの基準

具体的な慰謝料は次の表の通りです。

(単位:万円)
骨折など重症の基準(別表Ⅰ)
入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9ヶ月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10ヶ月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
(単位:万円)
むちうち、軽い打撲、軽い挫傷などの基準(別表Ⅱ)
入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1ヶ月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4ヶ月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7ヶ月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8ヶ月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9ヶ月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10ヶ月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209

たとえば、骨折で2カ月通院した場合の慰謝料は52万円です。むちうちで2カ月間通院した場合の慰謝料は36万円です。
骨折で1カ月入院し5カ月通院した場合の慰謝料は141万円です。

自賠責基準や任意保険基準と比べると、裁判基準は高額となることが多いです。

【動画で見る交通事故】慰謝料は「通院日額4300円」は嘘!?正しい慰謝料の計算方法

(解説 : 弁護士 坂口 香澄)

後遺障害慰謝料

では、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準で後遺障害慰謝料はどのように計算するのでしょうか?
後遺障害慰謝料は後遺障害等級により決まります。具体的には次の表の通りです。

等級 自賠責基準※1 任意保険基準(推定)※2 裁判基準
1級 1,150万円 1,300万円 2,800万円
2級 998万円 1,120万円 2,370万円
3級 861万円 950万円 1,990万円
4級 737万円 800万円 1,670万円
5級 618万円 700万円 1,400万円
6級 512万円 600万円 1,180万円
7級 419万円 500万円 1,000万円
8級 331万円 400万円 830万円
9級 249万円 300万円 690万円
10級 190万円 200万円 550万円
11級 136万円 150万円 420万円
12級 94万円 100万円 290万円
13級 57万円 60万円 180万円
14級 32万円 40万円 110万円

※1 令和2年4月1日以降発生の事故を対象とした基準です。
※2 任意保険基準は保険会社によって異なります。

死亡慰謝料

では、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準で死亡慰謝料はどのように計算するのでしょうか?

自賠責基準

自賠責保険の死亡慰謝料は家族の有無や人数で決まります。

被害者本人分 400万円
家族分
(家族とは被害者の父母、配偶者、子です。)
請求者1名の場合 550万円
請求者2名の場合 650万円
請求者3名以上の場合 750万円
・被害者に被扶養者がいる場合には200万円を加算

具体的には次の通りです。

  • 家族が全くいない場合 400万円
  • 子供が事故で死亡し両親がいる場合 1,050万円
    本人分400万と家族の請求者2名分650万の合計です。
  • 夫が事故で死亡し妻と子供2人がいる場合 1,350万円
    本人分400万、家族の請求者3名分750万、被害者に被扶養者がいる場合の加算200万の合計です。

任意保険基準(推定)

任意保険基準の死亡慰謝料の計算方法は非公開です。各保険会社によっても異なります。
だいたいの基準は次の通りです。

被害者の属性 任意保険基準(推定)
一家の大黒柱 1,500万円~2,000万円程度
配偶者や母親 1,300万円~1,600万円程度
独身者 1,200万円~1,500万円程度
高齢者 1,100万円~1,400万円程度
子ども 1,200万円~1,500万円程度

自賠責基準と比べると、任意保険基準の死亡慰謝料は高額です。

裁判基準

裁判基準の死亡慰謝料は次の通りです。

被害者の属性 裁判基準
一家の大黒柱 2,800万円
母親、配偶者 2,500万円
独身の男女、子供、幼児等 2,000万円~2,500万円

自賠責基準、任意保険基準と比べると、裁判基準の死亡慰謝料は高額です。

慰謝料が増額される場合

被害者や加害者の個別事情により、慰謝料が増額されることがあります。
たとえば、次のような場合です。

加害者の事情

  • 無免許運転
  • ひき逃げ
  • 酒酔い運転
  • 著しいスピード違反
  • ことさらに信号無視
  • 薬物の影響により正常な運転ができない状態での運転
  • 証拠隠滅
  • 被害者に対する不当な責任転嫁

被害者の事情

  • 流産した
  • 離婚した
  • 学校に入学できなくなった
  • 留学できなくなった
  • 留年してしまった
  • 昇進が遅れた
  • 退職になった
  • 自営業を廃業した

慰謝料が振り込まれる時期

慰謝料が振り込まれる時期はいつでしょうか?
誰が支払をするかにより支払時期が異なります。

自賠責保険の場合

自賠責保険への請求から1カ月~3カ月で支払されることが多いです。

加害者の任意保険の場合

合意後1週間~1カ月で支払されることが多いです。ただし、裁判の判決だと裁判の確定後1カ月程度支払まで時間がかかることがあります。

加害者本人の場合

約束をした支払日までに支払されることが多いです。ただし、約束通り支払されないこともあります。

慰謝料の時効

時効とは、一定期間が経過すると請求ができなくなってしまう制度です。交通事故の慰謝料の時効は原則として5年間です。

交通事故の時効期間一覧
事故の種類 時効の起算点 時効期間
物損事故 事故の翌日 3年
人身事故
(傷害のみ)
事故の翌日 5年
人身事故
(後遺障害有)
症状固定日の
翌日
5年
死亡事故 死亡日の翌日 5年
加害者が判明
しない事故
事故の翌日 20年
後日加害者が
判明した場合
※いずれか早い方
加害者を知った
日の翌日
5年
事故の翌日 20年

注 上記の期間は加害者に請求する場合です。自賠責保険等に請求する場合には期間が異なることがあります。

慰謝料増額のポイント

慰謝料を増額させるため次の点を検討しましょう。

  1. 適切な期間の通院を行いましょう。
  2. 適切な計算方法(裁判基準)で慰謝料を計算しましょう。
  3. 後遺障害認定の可能性がある場合には後遺障害申請を行いましょう。
  4. 弁護士へ相談・依頼しましょう。

適正な慰謝料をもらうため「してはいけないこと」

適正な慰謝料をもらうため、次のようなことはやめておきましょう。

  1. 症状があり治療継続を医師に指示されたにもかかわらず通院治療をやめてしまう。
  2. 弁護士に相談せずに保険会社の提示額で合意してしまう。
  3. 後遺障害が認定されそうなのに後遺障害申請をしない。
  4. 長期間交渉を放置して時効にしてしまう。

よつば総合法律事務所の慰謝料増額事例

当事務所の解決事例のうち慰謝料などが増額となった事例をご紹介します。

まとめ

  • 交通事故の慰謝料は入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類です。
  • 交通事故の慰謝料には3つの基準があります。自賠責基準、任意保険基準、裁判基準です。
  • 自賠責基準が一番低く裁判基準が一番高いことが多いです。
  • 適切な期間の通院を行い、裁判基準など適切な計算方法で慰謝料を請求しましょう。

(監修者 弁護士 佐藤 寿康

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