監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
交通事故紛争処理センターに和解あっせん申立をすると、受領できる保険金が増額することが多いです。解決までの期間は3~6カ月が目安です。
この記事では交通事故の被害者に向けて、紛争処理センターのメリットやデメリットを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお、紛争処理センター申立がよいかは専門的な判断が必要です。交通事故に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
交通事故紛争処理センターとは
交通事故紛争処理センターとは、交通事故被害者の中立・公正かつ迅速な救済を図るため、自動車事故による損害賠償に関する法律相談、和解あっせん及び審査業務を無償で行う公益財団法人です。
被害者が和解あっせん申立をすることにより、増額した適正な保険金を受領できることが多いです。
関連情報
紛争処理センターを使うとき
では、紛争処理センターを使うときはどのような場合でしょうか?
次のようなときは紛争処理センターを使うことがあります。
- ①示談交渉がうまく進まないとき
- ②裁判までは希望しないとき
- ③裁判では減額となる可能性があるとき
示談交渉がうまく進まないとき
交通事故の示談交渉は、被害者と保険会社が直接行うことからスタートします。電話や書面での協議を行います。
しかし、何らかの理由で示談交渉がうまく進まないことがあります。保険会社の提示金額が著しく低い場合、保険会社の主張が明らかにおかしい場合などです。
示談交渉がうまく進まないときは、紛争処理センターを使うことがあります。
裁判までは希望しないとき
示談交渉がうまく進まないときは、裁判を起こす方法があります。ただし、裁判は1~2年の期間がかかることが多く、裁判所への出頭が必要となることもあります。そのため、裁判までは希望しない被害者も多いです。
裁判までは希望しないときは、紛争処理センターを使うことがあります。
裁判では減額となる可能性があるとき
保険会社が自らの提案を撤回するかは保険会社の自由です。
裁判の場合、保険会社は今までの提案を全て白紙撤回することがほとんどです。しかし、紛争処理センターの場合、保険会社が今までの提案を全て白紙撤回する確率は比較的低いです。紛争処理センターのあっせん案も今までの交渉経緯を踏まえた案になることが経験上多いです。
そのため、裁判での減額リスクはあるものの示談交渉では解決しない場合、紛争処理センターを使うことがあります。
手続きのメリット
では、紛争処理センターでの手続きを行うメリットはどのような点でしょうか?
紛争処理センターは次のようなメリットがあります。
- ①賠償額が増額することが多い
- ②裁判と比べて早期に解決できる
- ③裁判と比べて準備する書類が少ない
- ④被害者は納得できなければ裁判ができる
- ⑤保険会社は結果に原則従わなければいけない
- ⑥センター利用の費用がかからない
①賠償額が増額することが多い
紛争処理センターは裁判基準に近い基準となることが多いです。そのため、示談交渉と比べて賠償額が増額することが多いです。
②裁判と比べて早期に解決できる
紛争処理センターは裁判と比べて早期に解決できることが多いです。
裁判は解決まで6カ月~2年が目安です。紛争処理センターのあっせんは解決まで3~6カ月が目安です。そのため、裁判と比べて紛争処理センターは早期に解決できる確率が高いです。
手続きの種類 | 期間の目安 |
---|---|
示談交渉 | 3カ月以内 |
紛争処理センター (あっせんの場合) |
3~6カ月 |
裁判 | 6カ月~2年 |
注 個別事案により大きく異なります。
③裁判と比べて準備する書類が少ない
紛争処理センターでは次のような書類が必要になります。
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 保険会社等の賠償金提示明細書
- 医療機関の診断書
- 医療機関の診療報酬明細書や施術証明書
- 後遺障害診断書
- 後遺障害等級の認定結果及び理由が書かれている書面
- 休業損害証明書
- その他賠償額に関わる書類
紛争処理センターは裁判と比べて準備する書類が少ないです。
④被害者は納得できなければ裁判ができる
紛争処理センターの結果である裁定に被害者は応じる必要はありません。被害者は裁判を別途起こせます。
⑤保険会社は結果に原則従わなければいけない
紛争処理センターの結果である裁定に保険会社は原則従わなければいけません。被害者は裁判を別途起こせます。
⑥センター利用の費用がかからない
紛争処理センターは費用がかかりません。
まとめ:紛争処理センターのメリット
紛争処理センターには次のようなメリットがあります。
- ①賠償額が増額することが多い
- ②裁判と比べて早期に解決できる
- ③裁判と比べて準備する書類が少ない
- ④被害者は納得できなければ裁判ができる
- ⑤保険会社は結果に原則従わなければいけない
- ⑥センター利用の費用がかからない
手続きのデメリット
では、紛争処理センターでの手続きを行うデメリットはどのような点でしょうか?
紛争処理センターは次のようなデメリットがあります。
- ①示談交渉と比べて時間がかかることが多い
- ②示談交渉と比べて準備する書類が多い
- ③裁判と比べて低額の解決となってしまうことがある
- ④保険会社が強硬に裁判を主張して手続きが進まないことがある
①示談交渉と比べて時間がかかることが多い
示談交渉は早ければ数日で解決します。また、大きな争いがない場合は3カ月程度で解決する確率が高いです。
紛争処理センターのあっせんは解決まで3~6カ月が多いです。そのため、示談交渉と比べて紛争処理センターは時間がかかることが多いです。
手続きの種類 | 期間の目安 |
---|---|
示談交渉 | 3カ月以内 |
紛争処理センター (あっせんの場合) |
3~6カ月 |
裁判 | 6カ月~2年 |
注 個別事案により大きく異なります。
②示談交渉と比べて準備する書類が多い
示談交渉の場合、保険会社から示談案の提示があります。そのため、準備する書類は少ないです。
紛争処理センターの場合、一定の書類を準備する必要があります。そのため、示談交渉と比べて紛争処理センターは準備する書類が多いです。
③裁判と比べて低額の解決となってしまうことがある
紛争処理センターは裁判基準と同じ金額での解決となることもあります。ただし、経験上、裁判基準より若干少ない金額での解決となることもあります。
そのため、裁判と比べて紛争処理センターは低額の解決となってしまうことがあります。
④保険会社が強硬に裁判を主張して手続きが進まないことがある
紛争処理センターに申立をしても、保険会社が強硬に裁判での解決を主張することがあります。このような場合、紛争処理センターの手続きになじまないという理由で手続きが進まなくなることがあります。
紛争処理センターの手続きが進まないと、結果的には裁判になることが多いです。
関連情報
まとめ:紛争処理センターのデメリット
紛争処理センターには次のようなデメリットがあります。
- ①示談交渉と比べて時間がかかることが多い
- ②示談交渉と比べて準備する書類が多い
- ③裁判と比べて低額の解決となってしまうことがある
- ④保険会社が強硬に裁判を主張して手続きが進まないことがある
手続きの流れ
紛争処理センターのあっせん手続きは3~6カ月での解決が多いです。あっせん手続きで解決しないときは審査手続きに進みます。審査手続きに進むときは6カ月以上解決までかかる確率が高いです。
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まとめ:交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターとは、交通事故被害者の中立・公正かつ迅速な救済を図るため、自動車事故による損害賠償に関する法律相談、和解あっせん及び審査業務を無償で行う公益財団法人です。
手続きのメリットは次のような点です。
- ①賠償額が増額することが多い
- ②裁判と比べて早期に解決できる
- ③裁判と比べて準備する書類が少ない
- ④被害者は納得できなければ裁判ができる
- ⑤保険会社は結果に原則従わなければいけない
- ⑥センター利用の費用がかからない
手続きのデメリットは次のような点です。
- ①示談交渉と比べて時間がかかることが多い
- ②示談交渉と比べて準備する書類が多い
- ③裁判と比べて低額の解決となってしまうことがある
- ④保険会社が強硬に裁判を主張して手続きが進まないことがある
あっせん手続きの場合、解決までの期間は3~6カ月が目安です。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)