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交通事故と過失相殺

交通事故と過失相殺

過失相殺をわかりやすく解説

過失相殺とは、損害賠償額を決める際に、被害者の過失を考慮する制度です。
過失とは、事故の発生や損害の拡大の原因となる不注意のことです。

被害者にも過失があったときは、発生した損害額の全部を加害者が賠償するのではなく、発生した損害額の一部を加害者が賠償することになります。過失相殺されなければ損害額全額を被害者が受け取ることができます。過失相殺されると、総損害額の一部を被害者が受け取ることになります。

たとえば、周囲の確認が不十分なまま運転していた加害者が悪いのはたしかだが、一方で横断歩道のない車道を横断した歩行者も悪いという事例が挙げられます。

減額幅は被害者の過失の大きさによって変わってきます。

過失割合をわかりやすく解説

過失割合とは、事故当事者のどちらがどの程度悪かったかの責任の割合のことです。「10対0」とか「7対3」などという形で示されます。
この割合に応じて、賠償額が減額されます。被害者の過失が3割あったとすると、被害者の損害の7割しか賠償されないことになります。

過失相殺の計算の具体例

被害者に発生した総損害額が1000万円だとすると、

  • 被害者の過失がゼロだった場合、賠償されるのは1000万円です。
  • 被害者の過失が1割だった場合、賠償されるのは900万円です。総損害額より1割減額になっています。
  • 被害者の過失が4割だった場合、賠償されるのは600万円です。総損害額より4割減額になっています。

過失割合の基本過失割合と修正要素の具体例

過失相殺の基準は公表されているものがいくつかあります。その中でも別冊判例タイムズ38号という書籍が多く用いられています。これは、交通事故をある程度類型化してそれぞれの事故態様について基本過失割合と修正要素を示しています。

基本過失割合は、過去の裁判例などを参考にして決められた基準です。
基本過失割合とは別途考慮すべき事情があるときに、基本過失割合から5%から20%、過失割合を変えることがあります。この別途考慮すべき事情を修正要素と呼んでいます。

たとえば、歩行者用信号黄信号になってから横断歩道を渡り始めた歩行者と、赤信号で直進する自動車が衝突した事故の場合、基本過失割合は自動車9割歩行者1割です。
一方、修正要素として「集団横断」というものがあります。集団横断とは歩行者が集団で道路を横断することでして、集団登下校が典型です。集団横断という事情があったとき、それは歩行者の過失割合を5%有利に修正する要素となります。その結果過失割合は自動車95%歩行者5%に修正されます。

過失割合決定までの流れ

まずは双方の加入する保険会社同士で協議することが多いです。保険会社同士の協議で決まった過失割合が被害者に提示されます。被害者は過失割合の提示内容を受け入れずに相手保険会社と示談交渉することもできます。示談交渉の結果合意に至ればその内容で過失割合は決定します。

合意に至らなければ調停や裁判などに移行し、そこで決定します。
警察が過失割合を決めることはありません。

過失割合の示談交渉のこつ

まず、保険会社により提示される過失割合が常に正しいとは限らないことを認識しておく必要があります。
1 事故の発生状況に関する見解が被害者と相手保険会社との間で一致しているか
事故発生状況が異なれば過失割合も変わってきます。
たとえば道路外の駐車場から車道に出ようとするときに発生した衝突事故と、駐車場から道路に出てしばらく直進した後に発生した衝突事故とでは過失割合は異なります。
相手保険会社が過失割合を提示してきたとき、相手保険会社はどのような事故発生状況だったと考えているのか確認しておきましょう。

2 過失割合の算出方法は適切か
過失割合を定めるに当たっては次の問題があります。

  • 別冊判例タイムズ38号の図のうちどれを採用するのかの選択が適切か
  • 考慮すべき修正要素の見落としはないか
  • 考慮すべきでない修正要素を過大に評価していないか

したがって、どの図を採用して修正要素があればどのようなことを考慮したのかを相手保険会社に尋ねたり、場合によっては図のコピーの提供を受けたりすると良いです。

自分の過失割合が一定程度ある場合に損をしないための対応

1 被害者の過失があるとき、総損害額が多くなるほど、自己負担分が多くなります。たとえば、被害者の過失が1割のとき、総損害額が500万円ですと自己負担分は50万円になり、総損害額が1000万円ですと自己負担分は100万円になります。
したがいまして、実際の支出を伴う損害(積極損害)について、拡大を抑えることが可能であれば拡大しないようにすると損が少なくなります。たとえば、

  • 物損については代車使用期間が必要以上に長くならないようにする。
  • 人損については健康保険や労災を利用して治療を行う。

といったことが考えられます。

2 示談交渉の場面では、

  • 事故発生状況に関する見解が異なっているときは、刑事記録を取得したりドライブレコーダー映像を保管したりするなどして見解の不一致を埋めることを試みることが考えられます。
  • 相手方が提示してきた過失割合が、図の選択や修正要素の考慮について適切かどうか弁護士に相談して確認することが考えられます。

過失相殺されてしまう分の補償を受ける方法

被害者にも過失があるとして過失相殺があると、総損害額より賠償額は減少します。
例えば総損害額が1000万円で被害者の過失が4割だった場合、賠償されるのは600万円です。400万円は被害者の自己負担になります。
この減額分の補償を受けることができる場合があります。

1 車両保険
車両保険に加入していれば、自動車の損害について、過失による減額分の補償を受けることができます。車両保険の契約における免責金額や限度額の内容によっては、減額分の全額の補償を受けられないことがあります。

2 人身傷害保険
人身傷害保険に加入していれば、人身損害について、過失による減額分の補償を受けることができることがあります。免責金額や限度額の問題があることは車両保険と同様です。さらに人身傷害保険については、賠償の支払と人身傷害保険金の支払のどちらを先に受けるかや、裁判所を利用するかしないかなどによって、減額分の補償の有無や金額が変わることがあります。

過失相殺・過失割合のよくある質問

Q過失相殺と過失割合は違う意味ですか。
A違う意味です。

【解説】

  1. 被害者にも過失があるとき、加害者の責任との割合を「1対9」「15対85」などと決めます。この割合を過失割合といいます。
  2. 被害者にも過失があるとき、過失割合にしたがって、総損害額の一部を賠償額とする処理を行います。この処理を過失相殺といいます。
  3. 被害者に過失がなければ過失割合の問題は生じませんし、過失相殺も行いません。
    被害者に過失があれば過失割合の問題が生じ、過失相殺が行われます。
  4. 以上のとおり、過失相殺の意味と過失割合の意味は異なっています。
Q過失相殺の割合の基準はありますか。
Aあります。

【解説】

これまで発生してきた交通事故事案は膨大な数にのぼります。
一方で、事故発生状況はある程度類型化することができるものです。
同じ類型の事故発生状況であるのに、A事故の過失割合とB事故の過失割合とで全く異なる過失割合であると判断されることは好ましくありません。
そこで、過失相殺の基準が公表されているものがいくつかあります。いずれも、類型化された交通事故の基本過失割合と、修正要素及び修正する割合を示しています。
その中でも別冊判例タイムズ38号という書籍が多く用いられています。

Q防ぎようがない事故でしたが過失相殺されてしまいますか。
A過失相殺されることもあります。

【解説】

過失相殺は過去の交通事故の裁判例を踏まえてある程度基準が決められています。「事故を防ぐことが不可能だった」としても過失がゼロとなるとは限りません。
また、事故発生について被害者の過失がなくても、損害の拡大について被害者の過失があると判断され過失相殺されることもあります。たとえば、被害者のシートベルト不装着が挙げられます。

Qどのような場合に過失ゼロになりますか。
A追突事故、信号無視、センターラインオーバー、横断歩道上の歩行者が典型です。

【解説】

基本過失割合において被害者の過失がゼロとされている典型的な累計の事故は次のとおりです。

1 追突事故
加害者運転の自動車が被害者の乗車する自動車の後方に追突した事故においては、被害者の過失はゼロとされます。
被害者運転の自動車が急ブレーキをかけたために追突事故が発生したときなど、被害者に過失があるとされることもあります。

2 信号無視
青信号で交差点に進入した被害者運転の自動車と赤信号で交差点に進入した自動車の衝突事故が発生したとき、被害者の過失はゼロとされます。
信号無視の自動車が先に交差点に進入して低速で進行しているときに被害者運転自動車が交差点に進入したときなど、信号無視の自動車を発見した後容易に事故を回避できたと判断される場合、被害者にも過失があるとされることもあります。

3 センターラインオーバー
センターラインオーバーの自動車と対向自動車の衝突事故においては、対向自動車の運転手の過失はゼロとされます。
センターラインオーバーで走行してきていることの発見が遅れたため衝突を回避することができなかった(きちんと注意していればもっと早く発見でき、もっと早く発見して左方に移動したり減速したりすれば衝突しなかった。)と判断される場合など、被害者にも過失があるとされることもあります。

4 横断歩道上の歩行者
横断歩道上を横断する歩行者と自動車が衝突する事故においては、歩行者の過失はゼロとされます。
信号機のある横断歩道においては、信号機の状況により、被害者に過失が認められることもあります。たとえば、赤信号で横断を開始して横断歩道上を歩行する歩行者と青信号にしたがった自動車との衝突事故の歩行者の過失は7割とされます。

5 基本過失割合では被害者に過失ありとされる累計の事故でも、修正要素を考慮するなどして被害者の過失がゼロと判断されることもあります。

Q過失割合は誰が決めるのですか。
A相手保険会社と被害者との協議で決めます。協議で決めることができなければ最終的には裁判所が判決で決めます。

【解説】

過失割合は、事故の加害者と被害者とが協議し合意して決定します。多くの場合は事故の加害者の代わりに加害者の加入する自動車保険会社の担当者が被害者と協議します。
協議を行っても合意に至らなければ調停や裁判の手続に委ねます。その手続の中で合意が成立すれば過失割合は決まります。合意に至らなければ最終的には裁判所が判決で決めます。

Q過失割合はどのように決めるのですか。
A発生した事故はどの類型に当たるのかを検討して基本過失割合を定め、修正要素の有無を考慮して加算したり減算したりします。

【解説】

別冊判例タイムズ38号の中から実際に発生した事故の状況に似た図を選択します。その図には基本過失割合が記載されているのでそれを確認します。
さらに、実際に発生した事故の個別具体的な事情を考慮して修正要素の有無を検討し、基本過失割合を加算したり減算したりして最終的な過失割合を決定します。
たとえば、自動車と歩行者の衝突事故においては、昼間か夜間か・歩行者の年齢・国道のような自動車交通量の多い車道か・横断禁止の標識の有無などが、修正要素として挙げられています。

Q警察が過失割合を決めてくれるのですか。
A警察が過失割合を決めることはありません。

【解説】

事故が発生したときは警察に報告する義務があります。警察に連絡をすると警察官が現場に来て調査・記録します。この記録が過失割合の検討に役立つことはあります。
警察が過失割合を決めることはありません。

Q交通事故証明書には過失割合がのっていますか。
A交通事故証明書に過失割合は書いてありません。

【解説】

交通事故証明書には事故発生日時・発生場所・自動車の登録番号が記載されています。
事故発生の責任が最も多いと警察が考えた人が一番先(甲欄)に書かれています。
しかし、交通事故証明書に過失割合は書いてありません。

Q保険会社が提示した過失割合に従わなくてはいけないのですか。
A従わなくてはいけないということはありません。

【解説】

過失割合を保険会社が提示してきたとき、これを受け入れずに相手保険会社と示談交渉することができます。

Q交渉すれば過失割合は有利になりますか。
A有利になることもあります。有利にならないこともあります。

【解説】

過失割合が提示された後、示談交渉をした結果、相手保険会社が譲ることもありますし、当初の提示から変えてこないこともあります。

Q過失割合が合意できません。どうすればよいですか。
A調停手続・裁判手続を利用します。

【解説】

過失割合について合意が成立しないとき、解決するためには、調停手続・裁判手続を利用します。
調停手続や裁判手続を利用したとして、

  • 示談交渉時の相手保険会社の提案より有利な過失割合で解決することもあります。
  • 示談交渉時の相手保険会社の提案と同様の過失割合で解決することもあります。
  • 示談交渉時の相手保険会社の提案より不利な過失割合で解決することもあります。
Q相手が提示する過失割合に納得できません。どうすればよいですか。
A示談交渉、調停手続・裁判手続に進みます。

【解説】

提示された過失割合に納得できないとき、相手保険会社と示談交渉を行って合意を目指します。合意成立に至らなければ調停手続・裁判手続を利用します。

Q100対0の事故でない場合、相手の損害を支払う必要がありますか。
A対等な者の間の事故では、相手の損害の一部を支払う必要があります。

【解説】

たとえば、四輪車同士の事故でA車とB車の過失割合が4対6であるというとき、A車はBの損害の4割を、B車はAの損害の6割を賠償することになります。

一方、対等とはいえない当事者間の事故ではこのとおりになるとは限りません。
たとえば、歩行者用信号赤信号になってから横断歩道を渡り始めた歩行者と、青信号で直進する自動車が衝突した事故の場合、基本過失割合は自動車3割歩行者7割です。ですが、自動車側が歩行者に対して損害賠償請求をする場面でも同様に歩行者が7割の賠償義務を負うかというとそうではありません。自動車が急ハンドルや急ブレーキしたために自動車の乗員が負傷したとき、歩行者が損害賠償義務を負うか、負うとしてその割合がどの程度であるかは別の問題です。

事故当事者が対等でないときの過失相殺について別冊判例タイムズ38号に記載されているのは、弱い側(自動車対歩行者の事故であれば歩行者)が賠償請求するときの割合でして、強い側(自動車対歩行者の事故であれば自動車)が賠償請求するときの割合は記載されていません。

Q物損の過失割合と人身の過失割合は同じになりますか。
A同じになるとは限りません。

【解説】

交通事故により物的損害と人身損害の双方が発生することがあります。
人身損害は、治療が終了し、後遺障害の有無や程度が確定しないと総額を確定させることができませんので、総損害額が確定するまでに時間を要します。

一方、物的損害の総額は、人身損害の総額より早く確定します。
このことから、人身損害の解決は後で行うこととし、先に物損の示談を進めることがあります。
物損で示談を成立させるためには、過失割合についても合意することが前提として必要です。
それでは、物損示談成立時に合意した過失割合は、人身損害の解決時にも動かすことはできないのかが問題となります。

人身損害の解決の際、物損の示談成立時に合意した過失割合によらなければならないわけではありません。別途異なる過失割合で合意することはできますし実際に異なる過失割合で合意することはあります。判決になったときは裁判所は過失割合を自ら判断します。物損示談成立時に合意された過失割合に拘束されません。

物損は人身損害に比べると少額にとどまり、割合の差異が賠償額に大きく影響しないことが多いです。また、修理工場への修理費の支払をいつまでも保留にするわけにはいかず、早く解決したいという事情もあります。このようなことから、物損示談成立時には過失割合について譲歩されやすい傾向にあります。

Q別冊判例タイムズ38号にない事故の場合どうすればよいですか。
A類似するものがないか検討します。

【解説】

別冊判例タイムズ38号にない事故の場合、類似するものがあるかどうか検討します。類似するものがあれば、それを参考に過失割合を検討します。
事故当事者の一方が類似すると主張する図と、他方が類似すると主張する図が一致するとは限りません。その場合は、双方の見解を主張し合って協議で合意することが可能かを検討することになります。

Q子供でも過失相殺されますか。
A過失相殺されることもあります。

【解説】

子供が交通事故の被害者になることもあります。子供は、危険性を判断する能力が大人と同じとは限りません。それでも、子供の飛び出しのように子供の行動も交通事故の発生に寄与したとき、大人と同様に過失相殺してよいかという問題があります。

法的には、自分の行動によって結果の発生を招いたり避けたりすることが可能であると理解できる能力を備えれば、過失相殺することが許されると考えられています。一般的には、小学校入学時前後と考えられています。

この能力を備えていない子供(一般的には三、四歳程度)が飛び出して起こった事故であっても、そばにいた親の監督責任に関し過失相殺されることもあります。

また、別冊判例タイムズ38号では、歩行者や自転車が被害に遭った交通事故において、被害者が児童(6歳以上13歳未満)や幼児(6歳未満)であったことは、被害者の過失割合を減算する修正要素となっています。

Q自賠責保険は過失相殺されますか。
A重大な過失があるときに限り減額されます。これまでお書きしたルールと異なっています。

【解説】

被害者に過失があったとき、原則として自賠責保険金額は減額されません。ただし、重大な過失がある場合には減額されます。具体的には次のとおりです。

  • 被害者の過失が7割未満 減額なし
  • 7割以上8割未満 2割減額
  • 8割以上9割未満 傷害部分は2割減額し、後遺障害死亡部分は3割減額する。
  • 9割以上10割未満 傷害部分は2割減額し、後遺障害死亡部分は5割減額する。

※自賠責基準の傷害部分の金額が少額であるときは例外もあります。

Q労災保険は過失相殺されますか。
A労災保険の金額が過失を理由として減額されることはありません。

【解説】

労災事故の責任の100%が負傷者にあったとしても、労災保険の支給額が減額されることはありません。
故意や重過失で負傷したときは支給されないこともあります。

Q人身傷害保険は過失相殺されますか。
A人身傷害保険の金額が過失を理由として減額されることはありません。

【解説】

交通事故の責任の100%が負傷者にあったとしても、人身傷害保険から支払われる金額が減額されることはありません。
故意や重過失で負傷したときは支払われないこともあります。

Q健康保険は過失相殺されますか。
A健康保険が給付する金額が、負傷者の過失を理由として減額されることはありません。

【解説】

負傷の責任が100%負傷者にあったとしても、健康保険による給付額が、負傷者の過失を理由として減額されることはありません。
故意に負傷したときは健康保険の給付がなされないこともあります。

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