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よつばの特長よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」

56 保険会社の助言(弁護士 佐藤 寿康)

転院

治療に専念して改善を図ったとしても、常に症状が消失して完治するとは限りません。
残念ながら症状が残ってしまったとき、その症状については後遺障害等級に該当するかどうか審査してもらわなければなりませんが、そのポイントの1つに、残った症状も含めて治療中に訴えていた症状が一貫しているかどうかという点が挙げられます。

このとき、同時に複数の医療機関にかかっていたり病院と整骨院とを併用していたりすると、それぞれにおいて記録されている症状が異なっていることがよくあります。
また、転院があったとき、その前後で記録されている症状が全く異なることもあります。被害者の方は全く同じように伝えているつもりでも、異なって伝わってしまったり、説明を受けた側のとらえ方が微妙に異なってしまったりすることがあるのだろうと考えます。

こうしたことがあると、書面のみで行われる後遺障害等級審査においては、認定が厳しくなるおそれがあります。

診療情報提供書

治療過程の一貫性が損なわれているような治療記録になってしまうのを防ぐ1つの方法が、前医に診療情報提供書を書いてもらうというものです。普通は紹介状と呼ばれることが多いです。

前医でどのような症状が訴えられ、どのような検査所見があり、どのような治療経過をたどったのかを記載してもらい、それを後医に見てもらうことによって、治療経過における症状の一貫性が途切れるような治療記録になることを防止することができます。

保険会社の助言

このような事案のご相談を受けました。
交通事故によって受傷し、骨折したのですが、その骨折した部位の痛みが治療中も続いていました。

一方、当初は規模の大きな病院に通っていたものの、遠方で通院が困難であることに悩み、被害者は加害者側の保険会社に相談しました。すると、保険会社担当者から被害者のお宅の近くにある病院を紹介され、そこに通院することになりました。

ところが、どういうわけか、後医(近所の病院)では骨折部の痛みは前医(大病院)では訴えていなかったものと誤解され、治療対象とされませんでした。
その結果、骨折部の痛みは後医に書かれた後遺障害診断書に触れられもせず、したがって後遺障害等級審査の対象にもなりませんでした。

保険会社が近所の病院を紹介したことには、特に問題はなかったかもしれません。
ただ、その際に前医に診療情報提供書を書いてもらうように助言しなかったことは悔やまれます。
加害者側の保険会社はあくまで対立当事者に過ぎないとはよくいわれることですが、そのことはさて措いても、医学知識、後遺障害認定実務、裁判実務などに関して決して精通しているとも限りませんから、治療経過に関する適切なフォローを期待できないとしても、無理はありません。

適切な治療経過と早期の御相談

決して後遺障害に認定されるために治療するのではありません。完治に至るのであれば、治療経過がどのようなものであろうと構わないはずです。
しかし、真摯に治療した結果、症状が残り、それが後遺障害に認定されるべきものであれば、適正に評価されるべきです。なぜなら、損害賠償実務において、後遺障害等級に認定されるかどうか、認定されるとしてその程度(等級)はどれだけなのかに応じて、損害賠償額は大きく変わってくる仕組みになっているからです。

そして、適正に評価されるかどうかは、残った症状の程度はもちろん、治療経過の記録内容にも左右されます。上記の事例で保険会社は診療情報提供書に関する助言をしませんでした。
その理由は分かりませんが、私が当時関わっていれば、上記のような残念な治療経過をたどることはなかったのにと思います。

治療期間中に、それも早期に相談されることを推奨している理由が、上記の事例からも示されます。

(文責:弁護士 佐藤 寿康

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