69 裁判における尋問(弁護士 川﨑 翔)

書証で争点に関する決着がつけばよいのですが、いつもそうとは限りません。書証が十分でない場合、最終的には尋問を行うことになります。
尋問を行うためには、依頼者から争点について詳しく事情を聴きとることが必須です。
それだけではなく、必要に応じて尋問の予行練習をする必要もあります。
尋問は、証人席で原告代理人、被告代理人及び裁判官の質問に答えるという形式で進みます。当然、尋問を受ける方は緊張すると思います。
(私も新人弁護士の時はとても緊張したものです。今でも弁護士活動の中で最も緊張する場面のひとつと言えます。)
そのため、入念な準備が必要になるのです。
このように、尋問には手間がかかるため、裁判所も弁護士も尋問をすることに消極的になりがちです。
(特に裁判所は時間の確保や録音反訳の手間があり、尋問に消極的です。)
しかし、被害者側代理人としては、書証のみで十分に事故態様や損害が立証できない場合、尋問を躊躇すべきではないと思います。
特に事故態様の立証については、被害者側が不利な状況におかれることはめずらしくありません。
というのも、事故態様を立証する書証として実況見分調書が用いられることが一般的ですが、加害者の言い分によって作成されているものがほとんどで、被害者の言い分をもとにした実況見分調書が作成されていない場合もあるためです。
そのような場合、尋問できちんと事故態様を証明していく必要があります。
もちろん、事故から長期間が経過しており、記憶のみで証言をしていくことには困難が伴いますが、ひとつひとつ証言をつなぎ合わせ、加害者側の証言の矛盾や不自然な点を指摘していくことで困難な状況を打開できることもあります。
「尋問は万能でない」ということに注意を払う必要はありますが、被害者側弁護士として真実を明らかにするためには、積極的に尋問を行うことが重要だと思っています。
(文責:弁護士 川﨑 翔)