専業主婦でも休業損害を請求できますか?
専業主婦/専業主夫とは

専業主婦とは、職に就かないで家事に専念する主婦のことを言います。主婦とは、一家の家事の切り盛りをする女性のことをいいます。
交通事故においては、専業主婦のことを家事従事者(かじじゅうじしゃ)と呼びます。また、主夫とは、家事を切り盛りする夫のことをいい、家事従事者には主夫も含まれます。
家事労働の対価を請求できます

家事労働は、実際に誰かから給料をもらって行われるものではないため、その金銭的評価の可否について争いがありました。
以前(だいぶ昔ですが)は、「家事労働が給料のように財産上の利益を発生させるものではない」として、休業損害が認められていない時代もありました。びっくりですね。
しかし、昭和50年7月8日の最高裁判決において「妻の家事労働が財産上の利益を生ずるものであり、これを金銭的に評価することが不可能とはいえない」として、主婦であっても、交通事故によって家事労働ができなくなった場合には、休業損害が認められるようになり、現在ではこれを否定する立場はありません。
この最高裁判決のケースでは、妻が主婦として家事に従事していた場合でしたが、夫が家事に従事している主夫のケースでも、もちろん休業損害が認められます。
家政婦・シッターなどを雇った場合

主婦が、交通事故によって負った傷害のため家事ができなくなり、家政婦やシッターなどの第三者を雇うなどして家事の代替手段を使用したり、親族や友人等に一時的に家事育児の代替を依頼して謝礼を支払ったりする場合があります。その代替手段にかかった費用は、通常、休業損害として認められることがあります。
参考:専業主婦です。事故の後遺症で、1か月間まったく家事ができず、その間家政婦を雇いました。この場合の補償はどうなりますか?
ただしこの場合、代替手段の活用により主婦自身が家事を行う必要はなくなっていますので、主婦自身が家事を出来なくなったことによる休業損害を更に請求することは二重取りになるためできません。
財産上の利益を生じているかどうかがポイント

上記のとおり、主婦の家事労働は、他人のために行う労働であり、財産上の利益を生ずるものであるからこそ、休業損害が認められます。
このことから、1人暮らしで自分自身のために家事を行っていた場合は、財産上の利益を上げる労働力の提供が無いと言えますので、休業損害が否定される場合が多いです(ただし、認める裁判例もあり、見解が分かれている部分もあります)。
自賠責の場合
自賠責保険の基準では、主婦の場合、1日あたり6,100円という額で算定されます。
専業主婦の休業損害Q&A
- Q専業主婦の休業損害はどのような場合に認められますか?
- A受傷のため家事労働に従事できなかった場合、その期間について認められます。
- Q専業主婦の休業損害の1日の金額はいくらですか?
- A自賠責保険の基準では休業1日あたり6100円となります。
裁判(弁護士)の基準では休業1日あたり10000円超となります。
裁判(弁護士)の基準に基づく金額を主張しましょう。 - Q専業主婦の休業損害はどのくらいの日数認められるのですが?
- A個別の事案によりますが、骨折などがない事案の場合、30日前後位が経験上は多いです。
- Q保険会社からの提示に休業損害がありませんでした。どうすればよいですか?
- A専業主婦であることを主張して休業損害の請求をしましょう。特に、家事が具体的にできなかったことを主張・立証することが大切です。
- Q専業主婦の休業損害がゼロのまま示談してしまいました。示談のやり直しはできますか?
- A残念ながら、示談のやり直しは難しいでしょう。示談前に慎重に確認しましょう。
- Q兼業主婦でも休業損害は認められますか?
- A認められます。詳細は「主婦ですがパートの仕事をしています。休業損害はどのように計算されますか」をご参照下さい。
- Q家事に従事する男性でも休業損害は認められますか。
- A認められます。詳細は、「我が家では、夫が家族のために家事などを行っています。この場合にも休業損害は認められますか?」をご参照下さい。
- Q1人暮らしの家事も休業損害は認められますか?
- A原則として難しいでしょう。詳細は、「1人暮らしで自分のためだけに家事を行っている場合も休業損害は認められますか」をご参照下さい。
まとめ
- 専業主婦でも休業損害は認められます。
- 認められる金額は個別の事案によります。
- 保険会社からの提案には専業主婦の休業損害が漏れていることがあります。示談の際には慎重に示談しましょう。