専業主婦ですが、休業損害はどのように計算されますか?
―――― 目次 ――――
賃金センサスとは?

毎年、厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたものを賃金センサス(略して「賃セ」)といいます。これにより、年齢別・学歴別・性別・職業別等の各属性ごとの賃金の平均的な値を知ることができます。交通事故の損害計算においてこの賃金センサスは広く用いられ、休業損害や逸失利益の計算をする時に度々登場します。具体的には、自営業者等で収入の変動が大きい人や主婦、学生、若年者などの休業損害や逸失利益の損害計算に用います。
主婦の場合、賃金センサスのどの値を使うのか?

事故が発生した年の賃金センサスの女子の学歴計・全年齢平均賃金を用いる場合が多いです。
ただし、被害者が高齢の主婦であった場合には、全年齢の賃金センサスの値よりも、被害者の属する年齢の賃金センサスの値の方が低いため、この場合には、年齢別の賃金センサスの値が用いられることもあります。
なお、主夫の場合であっても、家事労働の対価が男女で異なるわけではないため、女子の全学歴・全年齢平均の賃金センサスを用いることが一般的です。
なお、令和2年の賃金センサスによると、女子の全学歴全年齢平均の賃金センサスは、381万9200円となっており、1日当たりの休業損害額は、381万9200円÷365日=10,464円(小数点以下切り上げの額)になります。
休業期間はどのくらいになるか?
事故日から症状固定までの日数を基準とします。
ただし、事故日から症状固定までの期間が比較的長期に及ぶ場合、その間100パーセント全く家事労働が出来なかったという事態はまれです。
そのため、裁判例においては、
①事故から1カ月間は家事労働が100パーセントできなかった、3カ月までは70パーセントできなかった、6カ月までは50パーセントできなかった、というように、家事労働ができなかった程度をパーセンテージによる数値化をして、実際に家事労働に制限を受けた範囲で請求するという逓減方式や、
②実通院日数分は100パーセント家事労働が出来なかったという前提で、
交通事故が発生した年の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢平均賃金÷365日×実通院日数分
の休業損害を認める例が多いように思われます。
自賠責の場合
自賠責保険の基準では、主婦の場合、1日あたり6,100円という額で算定されます。
専業主婦の休業損害の計算方法Q&A
- Q休業損害の期間はどのくらいが多いですか?
- A骨折などがない事案の場合、休業損害の期間は30日前後程度の事案が多いです。
- Q休業損害の金額について保険会社は自賠責保険の基準である1日6100円で請求してきています。どうすればよいですか?
- A賃金センサスを元にした1日10000円以上の金額を請求しましょう。
- Q100%家事ができなかった、70%家事ができなかった、50%家事ができなったなどというのはどのように証明すればよいのでしょうか?
- A実際の怪我の状況を踏まえて、怪我によりできなくなった家事、怪我によりできにくくなった家事などをまとめて主張しましょう。
まとめ
- 自賠責保険の基準の場合、1日6100円×受傷のため家事労働に従事できなかった期間の補償のことが多いです。
- 弁護士(裁判)の基準の場合、1日1万464円×受傷のため家事労働に従事できなかった期間の補償のことが多いです。
- 弁護士費用特約がある場合、弁護士に相談・依頼をしましょう。