高次脳機能障害の事故で過失割合に納得がいかないのですがどうすればよいですか?
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事故直後の動きが大切
頭部の外傷で入院する交通事故の被害にあったような場合、加害者側の保険会社から「過失割合は8対2です」などと言われることがあります。
交通事故の被害にあったにもかかわらず過失が被害者にあるなどというのは信じられない気持ちになるかと思いますが、事故直後から慎重に行動をする必要があります。
過失相殺についての一般的見解
過失相殺については、典型的な事故状況をまとめた「別冊判例タイムズ・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(判例タイムズ社)という書籍があります。専門化の間では「判タ(はんた)」と略されることもある書籍です。過去の裁判例を元に過失割合がまとめられています。
目撃者の有無を確認する

交通事故の場合、第三者である目撃者の証言が非常に重要です。
加害者は自分に有利なように嘘をつく可能性がありますが、第三者の目撃者があえて嘘をつくとは考えがたいからです。
そのため、目撃者がいるかどうかを警察等に聞いて確認してみてください。その目撃者がどのようなことを言っているかということが過失割合に重要な影響を及ぼしてきます。
また、目撃者がいなくても監視カメラなどに事故状況が写っていることもあります。3
目撃者がいない場合
高次脳機能障害の事故で過失割合を決めるにあたり、特に問題があるのが目撃者がいない場合です。目撃者がいない場合、加害者の供述のみによって事故状況が決められてしまう可能性があります。3
事故状況の調査
事故状況を早期に把握するためには、事故状況の鑑定を専門家に依頼するという方法があります。
車両についた傷の状況、現場の客観的な状況等からある程度事故状況を推測することが可能となります。車両の傷の状況については写真撮影をしておくことが必要不可欠です。
また、事故から時間が経過すると車両自体が処分されてしまったり、車両の傷の状況が変わってくることもありますので、鑑定をする場合には事故直後から準備をしていくことが重要です。3
警察に正しく事実を伝えましょう
高次脳機能障害の場合、事故直後は治療優先で、警察の事情聴取はないかもしれません。ある程度回復してきた場合には、警察の事情聴取や現地での立会(実況見分)を求められることがあります。
警察が一度作成した書類の内容を覆すことは極めて困難ですので、被害者の皆様は警察に正しく事実関係を伝えるようにしましょう。
人身傷害保険について

過失割合について納得がいかない場合であったとしても、被害者が加入している自動車保険に人身傷害保険がある場合、過失分全額が被害者の人身傷害保険から出ることがあります。(ただし、人身傷害保険で過失分全額が支払あるかどうかは慎重な検討を要する問題ですので専門家に相談した方がよいでしょう。)
例)総損害額1億円の場合
- 過失がない場合 加害者の保険会社から1億円支払
- 過失20%の場合 加害者の保険会社から8,000万円支払。被害者が加入する人身傷害保険から2,000万円支払(必ず2,000万円が支払されるわけではありませんので加入保険会社に確認しましょう)
高次脳機能障害の事故の過失割合のよくある質問
- Q事故時に記憶を失ってしまって事故状況がわかりません。どうすればよいですか?
- A警察が監視カメラや目撃者を探し、客観的な事故状況をある程度把握している可能性があります。刑事記録の取り寄せをするなどして客観的な事故状況を把握しましょう。
【解説】
- 刑事事件の判決が確定した場合、刑事記録一式が取り寄せ可能です。
- 刑事事件で処分がされなかった場合でも、実況見分調書などの図面の取り寄せが可能です。
- Q自分にも過失がある場合、過失分の補償を受けるためにはどうすればよいですか?
- A人身傷害保険を利用する方法、労災保険を利用する方法などがあります。
【解説】
- 人身傷害保険は自分が入っている保険の特約です。一定額の補償がある可能性があります。
- 労災保険は勤務中又は通勤中の事故の場合に利用できます。
参考:交通事故と労災保険の解説
まとめ
- 高次脳機能障害の事故の場合、被害者が事故状況を覚えていないことがあります。監視カメラや目撃者の供述を踏まえて客観的な事故状況を確定させましょう。
- 人身傷害保険に加入している場合、過失があったとしても全額の補償が得られる可能性があります。
- 自分に過失がある事故の場合、労災保険の利用も検討しましょう。
【動画で見る交通事故】過失割合
(解説 : 弁護士 坂口 香澄)