車の格落ち(評価損)請求の可否と金額
最終更新日:2026年02月24日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q交通事故で車の修理が必要になった場合、格落ち(評価損)を請求できますか?
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交通事故で車の修理が必要になった場合、格落ち(評価損)を請求できる場合があります。
しかし、事故に遭えば必ず請求が認められるわけではありません。
評価損が損害として認められるかどうかは、裁判などにおいて、車種、年式、損傷の程度といった様々な事情を考慮して、ケースごとに判断することになります。

目次

格落ち(評価損)とは
格落ち(評価損)とは、交通事故により車が損傷し、たとえ修理を尽くしたとしても、事故前の状態に完全には戻らないことによって生じる価値の低下(損害)のことです。
具体的には、次のような理由で、中古車市場における車の取引価格が事故前よりも下がってしまう状態をいいます。
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技術上の評価損
修理技術の限界から、機能や外観が完全には元に戻らず欠陥が残ってしまうことによる価値の低下です。
たとえば、修理後も塗装 of ムラが残ったり、パーツの接合部に微妙な段差が生じたりするケースが該当します。
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取引上の評価損
修理によって機能や外観に欠陥が残らなかったとしても、事故歴があるという事実だけで中古車市場での評価が下がり、価格が下落することによる価値の低下です。
修理がどれだけ完璧でも、「事故車」というレッテルが取引価格に影響を与えます。
実務上、近年の裁判例では、修理技術の進歩により「技術上の評価損」が問題となる場面は限定的であり、主として「取引上の評価損」が争点となるケースが多いです。
格落ち(評価損)の請求が認められやすい場合
評価損は、車を修理すれば当然に認められるものではありません。
実務上は、修理をしてもなお外観や機能に欠陥が残ったり、事故歴によって商品価値の下落が客観的に認められたりする場合に、損害として認定される傾向があります。
ここでは、評価損の請求が特に認められやすいケースについて解説します。
新車登録からの期間が短い
一般的に、新車登録からの期間が短く走行距離も少ない車ほど、評価損が認められやすい傾向にあります。
新しい車ほど本来は高値で売却できるはずであり、事故車両となったことによる売買価格の下落幅が大きいため、価値下落分の補償は評価損で考慮されるべきと考えられているからです。
具体的には、新車登録から3年以内であれば、評価損が認められやすい傾向です。一方で、3年を超えると、評価損が認められにくい傾向です。
ただし、あくまで目安であり、車種や損傷の程度による個別判断となります。
車両の骨格部分を損傷
損傷の部位や程度も重要な判断材料です。特に、車の骨格部分であるフレーム、サイドメンバー、ピラーなどを損傷した場合、評価損が認められやすくなります。
これは、骨格部分の損傷は「修復歴」として扱われ、中古車を販売する際に業者に表示義務が課されるため、市場価値の低下に直結すると考えられるからです。
修復歴車は一般的に、同じ年式・走行距離の無事故車と比べて査定額が大きく下がることも少なくありません。
最終的には個別具体的な事情で判断
最終的に評価損が認められるかどうかは、次のような様々な事情を総合的に考慮して、個別の事案ごとに判断されます。
- 車種(高級外車や人気車種かなど)
- 損傷の部位・程度
- 修理の内容や修理費の額
- 新車登録からの期間と走行距離
- 事故当時の車の時価
格落ち(評価損)の算定方法
評価損の金額を算定する方法はいくつか考えられますが、裁判実務では「修理費の一定割合で計算する方法」が用いられることが一般的です。
ここでは、実務でよく用いられる2つの算定方法について解説します。
修理費の一定割合で計算する方法
損傷の程度が大きければ修理費も高額になり、それに比例して車両価値の低下も大きくなるという考え方に基づく方法です。
裁判例では、修理費の10%~30%程度の範囲で評価損を認めるケースが多いです。
実際に評価損が認められた裁判例には、次のようなものがあります。
- メルセデスベンツ(登録2か月):修理費の30%を認定
- BMW(登録1か月、走行170km):修理費の約30%を認定
- スマートブラバス(登録2年、走行1万km未満):修理費の20%を認定
- スバル・インプレッサ(登録1年3か月、走行1万km余):修理費の約20%を認定
このように、比較的新しい車両で修理費が高額になった場合に、その一部が評価損として認められる傾向にあります。特に高級車や人気車種ほど、評価損の認定割合が高くなる傾向が見られます。
日本自動車査定協会の査定で計算する方法
評価損を証明する資料として、一般財団法人日本自動車査定協会が発行する「事故減価額証明書」があります。これは、日本自動車査定協会が事故による価値の減少額を査定し、証明する書類です。
しかし、この証明書を裁判所に提出したからといって、その金額がそのまま損害として認められるわけではありません。
裁判所の判断も次のとおり分かれています。
- 証明書を証拠として採用しない例
- 証明書の内容をそのまま採用する例
- 他の証拠と合わせて「資料の一つとして」考慮する例
実務上は、事故減価額証明書は「資料の一つとして」扱われることが多いです。
したがって、証明書は評価損を主張する上での有力な資料の一つにはなりますが、絶対的な証明力を持つものではない点に注意が必要です。
保険会社との交渉では、証明書だけでなく修理費の金額や車両の状態、裁判例なども併せて提示することで、より説得力のある請求ができます。
よくあるご質問
ここでは、車の格落ち(評価損)について、よくあるご質問にお答えします。
新車でないと評価損は認められませんか?
必ずしも新車である必要はありませんが、新車登録から日が浅いほど評価損が認められやすいのは事実です。
しかし、最終的には年式だけでなく、車種や損傷の程度など、他の要素と合わせて総合的に判断します。
新車登録から3年を超えています。評価損の請求は難しいですか?
評価損の請求が難しくなる傾向にありますが、絶対に認められないわけではありません。
一般的な国産車の場合、新車登録から3年を超えると、評価損が認められにくくなる傾向があります。
ただし、ご自身の車がこの目安を超えていても、損傷の程度がひどい場合など、事情によっては請求が認められる余地はあります。
保険会社が交渉で評価損を認めることは多いですか?
残念ながら、保険会社が交渉段階で評価損を認めることは多くありません。
保険会社は「原状回復に必要な修理費用」を支払う立場であり、評価損がその範囲に含まれるかについては消極的な見解を示すことが少なくありません。
ただし、弁護士が法的根拠を示して交渉すると、保険会社が評価損の支払いに応じるケースもあります。
事故減価額証明書を取れば、確実に評価損を支払ってもらえますか?
事故減価額証明書を取得しても、評価損の支払いは確実ではありません。
日本自動車査定協会の「事故減価額証明書」は、裁判において評価損を立証するための一つの資料に過ぎないと判断されることが多いです。
実際、証明書の査定額がそのまま認められるケースもあれば、証明書の根拠が不明確として全く考慮されないケース、他の証拠と併せて参考程度に扱われるケースなど、裁判所の対応は様々です。
したがって、証明書があることだけを理由に、相手方の保険会社が支払いに応じたり、裁判所が請求を認めたりするとは限りません。
証明書は有用ですが、万能ではないという点を理解した上で、修理費の金額、車両の状態、過去の裁判例なども併せて主張していくことが重要です。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
格落ち(評価損)の請求は、法律的な専門知識が求められる複雑な問題です。
どのような場合に損害として認められ、いくら請求できるのかという判断は、過去の裁判例や専門的な知見に基づいて行う必要があります。
相手方の保険会社との交渉は難航することも多く、被害者自身で対応するのは大きな負担となるでしょう。
もし、ご自身のケースで評価損を請求できるか知りたい、保険会社の対応に納得がいかないといったお悩みがあれば、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士のサポートを受けることで、適切な証拠の収集、法的根拠に基づいた主張、保険会社との効果的な交渉が可能となり、適正な補償を受けられる可能性が高まります。

- 監修者
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弁護士 粟津 正博













