股関節後方脱臼・骨折

最終更新日:2026年02月09日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

股関節後方脱臼・骨折とは、大腿骨が骨盤骨の受け皿から後ろ側へ飛び出し、股関節が外れてしまう大きなけがです。

この記事では、股関節後方脱臼・骨折について、原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

股関節後方脱臼・骨折は専門的な判断が必要です。気になることやお悩みがある場合は、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせください。

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股関節後方脱臼・骨折

股関節は、大腿骨側の大腿骨頭(ボール)が、骨盤側の寛骨臼(受け皿)にはまり込むように接して形成されています。

大腿骨頭(ボール)は、寛骨臼(受け皿)にすっぽりと包み込まれる構造になっており、さらにその周りを関節唇(かんせつしん)という軟骨の土手や、非常に強靭な靭帯・筋肉が補強しています。これにより、体重を支えつつ、歩く・走る・蹴るといった複雑で大きな動きを可能にしています。

交通事故や高所からの転落事故のように非常に大きな力が加わると、この大腿骨頭(ボール)が、寛骨臼(受け皿)から外れ、寛骨臼の骨折を伴う、股関節脱臼・骨折となります。

股関節脱臼のうち、もっともよく見られるのが大腿骨が後方へ脱臼するケースです。

大腿骨が後方へ脱臼する股関節脱臼

股関節後方脱臼・骨折の原因と診断

乗車中の交通事故で、膝がダッシュボードに打ちつけられることにより発症することが多く、この類型の股関節脱臼骨折はdashboard injury(ダッシュボードインジュアリー)と呼ばれます。

運転席や助手席で膝を曲げた状態のまま、ダッシュボードに膝を打ちつけられる

運転席や助手席で膝を曲げた状態のまま、ダッシュボードに膝を打ちつけ、大腿骨が関節包を突き破り後方に押されて発症します。

診断は、レントゲン撮影で、大腿骨頭が寛骨臼から外れているのを確認することができます。骨盤の骨折を合併していることが多いため、詳しく調べるためにCT検査も行われることが多いです。

股関節脱臼の種類

股関節脱臼は、大腿骨頭が寛骨臼から外れた方向により、後方脱臼、前方脱臼、下方脱臼、上方脱臼、内方脱臼に分かれますが、外傷性股関節脱臼の過半数を占めるのは、後方脱臼です。

後方脱臼が起こると、脱臼部位に激痛と腫れが生じ、関節の可動域は著しく制限されて内転、内旋し、後方に大腿骨が押し上げられることにより大腿は常に短縮します。

股関節後方脱臼・骨折の治療

股関節が脱臼したときは、徒手整復によりできるだけ早く関節を元の位置に戻します。通常、全身麻酔又は脊椎麻酔を施したうえで、外れてしまった大腿骨頭を寛骨臼にはめ込んで整復します。

大腿骨頭は、内・外側大腿回旋動脈により栄養が供給されています。股関節脱臼が生じてこの血管を損傷すると、大腿骨頭に栄養や酸素が行き渡らなくなり、大腿骨頭が壊死します。

股関節脱臼は12時間以内に整復することが望ましく、遅れるとこの大腿骨頭壊死が発生する確率が高くなります。

寛骨臼骨折を合併しているときは、整復後、スクリューにより、骨折している寛骨臼を観血的に固定します。

骨折により骨片が遊離しているときは、骨折片が坐骨神経を圧迫し、坐骨神経麻痺を引き起こすことがあります。

骨折により骨片が遊離しているとき

なお、大腿骨頭が壊死してしまうと、大腿骨頭部を切断して、人工骨頭に交換する必要があります。これを人工骨頭置換術といいます。

寛骨臼蓋の損傷が大きいときは、股関節自体が人工の関節に交換されることもあります。
これらを防止するには、いかに早く整復固定をするかにかかっています。

股関節後方脱臼・骨折の後遺障害

股関節後方脱臼・骨折は、関節内で起きる傷害です。そして、股関節に非常に大きな外力が加わった怪我であり、後遺障害が認定されるケースことが多いです。

股関節後方脱臼・骨折で認定される可能性がある主な後遺障害は、機能障害(下肢)、変形障害、短縮障害、神経障害の4種類です。

交通事故が原因で人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合には、原則として後遺障害が認定されます。

関節の機能障害
8級7号 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
変形障害
12級5号 骨盤骨に著しい変形を残すもの
短縮障害
8級5号 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
神経障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

機能障害(関節の動く範囲の制限)

機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。

股関節後方脱臼・骨折の場合、股関節の機能障害が考えられます。

8級7号 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

股関節の可動域制限の場合、原則として屈曲と伸展、または外転と内転による運動を参照します。

屈曲と伸展屈曲と伸展

内転と外転
内転と外転

可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。

認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。

「用を廃したもの」(8級)

「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節が全く動かない場合
  2. 関節の可動域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
  3. 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合

著しい機能障害(10級)

「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
  2. 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合

機能障害(12級)

「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは次の場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合

変形障害

変形障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

12級5号 骨盤骨に著しい変形を残すもの

「著しい変形を残すもの」とは、レントゲンで骨折の跡や変形がわかる程度では不十分で、裸体になったときに、変形が明らかにわかる程度のものをいいます。

短縮障害

短縮障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

8級5号 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

短縮障害の認定においては、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較して測定します。

上前腸骨棘とは、骨盤骨の横の一番突出している部分です。下腿内果下端とはくるぶしの一番下の部分です。

脱臼によって大腿骨頭が本来の位置よりズレたまま固まったり、寛骨臼(受け皿)が砕けて骨盤の高さが変わったりすると、左右の足の長さに差が出ます。

跛行(歩くときに体が左右に揺れる現象)が生じているときには、脚長差による可能性があるため、上記の方法で長さを測定してもらいましょう。

神経障害

神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級は、画像や検査結果から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。

たとえば、次のような場合は12級になることがあります。

  1. 骨が変形してあるいは不正に癒合して、これが原因で痛みが生じる場合
  2. 関節面に不正を残して骨癒合して、これが原因で痛みが生じる場合

14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。

つまり、客観的な所見から痛みが生じる原因が明らかとはいえないものの、受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。

まとめ:股関節後方脱臼・骨折の後遺障害

股関節後方脱臼・骨折とは、大腿骨が、骨盤骨の受け皿から後ろ側へ外れ、受け皿となっていた寛骨臼の骨折を伴う大きなけがです。

股関節が脱臼した場合、大腿骨骨頭の壊死を防ぐため、徒手整復により可能な限り早くに関節を元の位置に戻さなければなりません。

後遺障害は、主に機能障害・変形障害・短縮障害、神経障害があり、8級から14級まで等級があります。

股関節後方脱臼・骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。お困りの際は、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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