骨盤骨折

最終更新日:2026年05月21日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

骨盤骨折とは、腰回りにある輪っか状の骨(骨盤)が強い衝撃によって損傷する大きなけがです。

この記事では、骨盤骨折について、原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

骨盤骨折は専門的な判断が必要です。気になることやお悩みがある場合は、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせください。

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骨盤骨折

骨盤は、上半身の重さを支えつつ、足からの衝撃を受け止める土台の役目を果たしています。

骨盤骨は一つの骨ではなく、複数の骨によって形成されており、その骨折の仕方によって症状は様々です。
骨折の部位によっては、治療が長引きやすく、後遺症が残ることがあります。

骨盤の構造

骨盤は、仙骨、尾骨及び左右の寛骨かんこつで構成されています。後方は仙骨と左右の寛骨をつなぐ仙腸関節で結合し、前方は恥骨が連結して、輪っか状の骨盤輪を形成しています。

寛骨は、腸骨、坐骨及び恥骨が癒合してできています。子供の頃は腸骨、坐骨、恥骨という別々の骨なのですが、大人になると癒合して一つの大きな寛骨という骨になります。

骨盤は、歩くたびに体重の数倍という重さがかかるため、これらの骨をぐるぐる縛るように強靭な靭帯等の軟部組織により連結されています。

骨盤・・・仙腸関節、仙骨、腸骨、股関節、大腿骨
大腿骨頭、寛骨臼、大腿骨

骨盤骨折の原因と診断

骨盤は強固な構造になっており、ある程度の衝撃には耐えられる作りになっています。

交通事故では、バイクや事故や自転車事故、歩行中の事故で尻もちをついたり、腰を強打して強い衝撃を受けると、骨盤骨折が生じるケースが多いです。

骨盤を骨折すると、骨折部に激しい痛みを生じ、歩行に困難を生じます。また、レントゲンやCTを撮影して、確定診断に至ります。血管損傷を疑う場合は、造影剤を使って出血場所を特定することもあります。

治療方法や予後は、骨折の仕方によって異なります。以下いくつか代表的な例について解説します。

腸骨翼骨折

腸骨翼ちょうこつよくは、寛骨の上半分、腰の両横にある、触ってわかる突き出た部分です。

腸骨翼は、面積が広いため、特に側方からの衝撃で骨折することがあります。骨盤輪の連続性を断たず出血を伴わないものは比較的予後が良いとされています。

以下の図の①が腸骨翼骨折です。

骨盤

急性期は入院下で安静が指示されます。もっとも、腸骨翼のみの骨折で、骨盤輪が破壊されていない場合は、比較的早期に歩行器等を使用したリハビリが始まり、後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

恥骨骨折や坐骨骨折

恥骨は、骨盤の一番前面にある骨です。坐骨は、恥骨の下に位置しています。恥骨骨折や坐骨骨折は、前方や下方からの外力で生じることが多いです。

以下の図の②が恥骨骨折、③が坐骨骨折です。

骨盤

片側の恥骨や坐骨の骨折であれば、骨盤輪の連続性が断たれない安定型骨折が多く、入院しても手術に至ることは少ないです。

比較的早期に歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが始まり、後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

ただし、恥骨骨折の場合、重傷だと膀胱損傷や尿道損傷を合併することがあります。坐骨骨折の場合、重傷だと骨折部は下方へ転位し、膝関節の屈曲や股関節の伸展が障害されることがあります。

尾骨骨折

尾骨とは、仙骨の下についている骨です。尾底骨とも言います。

交通事故では、自転車やバイク等でお尻から転倒したときに尾骨骨折となることがあります。

尾骨骨折

尾骨は3個から5個の尾椎が融合したものです。つなぎ目があることや事故前から屈曲変形していることもあり、レントゲンでは骨折と判断することが難しいという特徴があります。

治療は、通常は保存的に安静が指示されます。後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

ただし、尾骨骨折により尾骨が屈曲変形をすると、女性の産道が確保できなくなることがあります。産道が確保できない場合、分娩が帝王切開となってしまいます。

両側恥骨上下肢骨折やマルゲーニュ骨折

両側恥骨上下肢骨折とは、両側の恥骨と坐骨の骨折です。骨盤輪の連続性が損なわれています。straddle骨折とも言います。

両側恥骨上下肢骨折(straddle骨折)
両側恥骨上下肢骨折(straddle骨折)

マルゲーニュ骨折とは、前方骨盤輪骨折と後方骨盤輪骨折が合併した骨折で垂直方向にずれているものです。安定性が失われ、骨盤片は下肢とともに情報に転位するため、下肢が短縮しているようにみえます。坐骨神経麻痺等を伴いやすく特に重篤な骨折です。

骨盤複垂直骨折

これらの骨折は骨盤輪が破綻している状態であるため、疼痛や可動域制限等の後遺障害を残す可能性があります。

恥骨結合離開や仙腸関節の脱臼

左右の寛骨は、後方では仙腸関節及び仙骨、前方では恥骨結合を介して、骨盤輪を形成します。骨盤輪内部の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な組織となっています。両側の恥骨は、骨盤前面の正中線で複数の靭帯で連結されています。

恥骨結合離開とは、この部分が離開し骨盤輪の前方が離断されたものです。軟骨部のみに起こることもありますが、骨軟骨境界部に起こることが多いです。

仙骨と腸骨も周囲の靭帯により強固に連結されています。仙骨と腸骨の関節を仙腸関節と言います。外力が直接腸骨の後方にはたらくと、腸骨が後方に引っ張られるように転位し、仙腸関節が脱臼します。仙腸関節脱臼が単独に発生することはまれで、骨盤輪骨折と合併して発生することが多いです。

恥骨結合離開と仙腸間接脱臼

上の図の①が恥骨結合離開で②が仙腸関節脱臼です。このような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはプレートによる内固定または創外固定をします。

寛骨臼骨折

寛骨は大きなくぼみとなって、大腿骨頭をすっぽり覆っています。これを寛骨臼といいます。

運転席や助手席で膝を曲げた状態のまま、ダッシュボードに膝を打ちつけ、大腿骨が関節包を突き破り後方に押されて寛骨臼を骨折することがあります。

寛骨臼骨折

寛骨臼骨折は、これまで解説した骨盤輪の骨折とは異なり、大腿骨との繋ぎ目(ジョイント)の骨折です。股関節内の骨折であるため、可動域制限の後遺障害が認定される可能性があります。

寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性があります。

人工関節の置換術

大腿骨や関節を人工のものに置換している場合は後遺障害が認定されます。寛骨臼の骨折については以下の記事を併せてご覧ください。

骨盤骨折の後遺障害

骨盤骨折では、骨盤輪の連続性の有無や、癒合状況、周囲の神経や臓器への影響によって以下の後遺障害の可能性があります。特に複数の骨を骨折している、骨盤輪の連続性が断たれているケースでは後遺障害が認定される可能性が高いです。

骨盤骨折で認定される可能性がある主な後遺障害は、機能障害(下肢)、変形障害、短縮障害、分娩機能の障害、神経障害の5種類です。

関節の機能障害
8級7号 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
変形障害
12級5号 骨盤骨に著しい変形を残すもの
短縮障害
8級5号 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
分娩機能の障害
9級17号 生殖器に著しい障害を残すもの
11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
神経障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

機能障害(関節の動く範囲の制限)

機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。

骨盤骨折の場合、股関節の機能障害が考えられます。

8級7号 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

股関節の可動域制限の場合、原則として屈曲と伸展、または外転と内転による運動を参照します。

屈曲と伸展
屈曲と伸展

内転と外転
内転と外転

可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。

認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。最も可動域制限の等級が認定されやすいのは、ジョイントの部分である寛骨臼の骨折です。

「用を廃したもの」(8級)

「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節が全く動かない場合
  2. 関節の可動域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
  3. 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合

著しい機能障害(10級)

「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
  2. 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合

機能障害(12級)

「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは次の場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合

変形障害

変形障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

12級5号 骨盤骨に著しい変形を残すもの

「著しい変形を残すもの」とは、レントゲンで骨折の跡や変形がわかる程度では不十分で、裸体になったときに、変形が明らかにわかる程度のものをいいます。

短縮障害

短縮障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

8級5号 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

短縮障害の認定においては、上前腸骨棘じょうぜんちょうこつきょく下腿内果下端間かたいないかかたんかんの長さを健側の下肢と比較して測定します。

上前腸骨棘とは、骨盤骨の横の一番突出している部分です。下腿内果下端とはくるぶしの一番下の部分です。

骨盤骨折の場合、骨盤の輪っかの部分が歪み、ずれたまま固定してしまうとその分だけ脚の全長が短くなることがあります。変形障害と一緒に生じることが多いです。

体が左右に揺れる跛行が生じている時には、脚長差による可能性があるため、必ず長さを測定してもらいましょう。立証のためには原則として、両足の長さを一枚のレントゲンで撮影した「下肢全長撮影(長尺撮影)」の結果を提出する必要があります。

分娩機能の障害

骨盤は、真ん中が大きな空洞になって輪っかの構造をしており、出産時赤ちゃんの頭はこの輪っかの中を通ります。この輪っかが骨折により変形したり内側に突き出た状態になると正常分娩が困難になり、帝王切開が必要になります。

9級17号 生殖器に著しい障害を残すもの
11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

尾骨骨折で産道への影響があるときは、骨折部の3DCT画像を婦人科に持ち込み、正常産道が保たれているかを判断してもらいましょう。

神経障害

神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級は、画像や検査結果から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。

たとえば、画像上変形して癒合していることが確認でき、痛みの原因となっていることが明らかな場合です。

また、骨盤のすぐ近くを坐骨神経という大きな神経が通っています。特に骨盤の後ろ側が壊れるような態様では、折れた骨の破片が神経を損傷したり、ずれた骨が神経を圧迫して、坐骨神経麻痺を合併することがあります。

12級獲得のためには、筋電図、神経伝達速度検査によって証明するケースが多いですが、画像による骨の状態から神経損傷を認定するケースもあります。

また、坐骨神経は足の運動と感覚をつかさどっているため、神経損傷の態様が重篤である場合は足の神経麻痺や足先がダラリと垂れ下がる下垂足の状態を生じることがあります。これらの場合はより上位の等級が認定されることがあります。

坐骨神経麻痺については以下の記事を併せてご覧ください。

14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。

つまり、客観的な所見から痛みが生じる原因が明らかとはいえないものの、受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。

まとめ:骨盤骨折の後遺障害

骨盤骨折とは、上肢と下肢を支えている骨盤という丈夫な骨が折れる骨折です。輪っか状の骨盤輪がどこまで破壊されているかによって、治療経過や後遺障害の可能性は異なります。

認定され得る後遺障害は、機能障害(下肢)、変形障害、短縮障害、分娩機能の障害、神経障害と多岐にわたり、8級から14級まで等級があります。

骨盤骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。お困りの際は、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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