交通事故の慰謝料と税金

最終更新日:2025年11月21日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 小林 義和
Q交通事故の慰謝料や示談金について、税金はかかりますか?

交通事故の慰謝料や示談金には、原則として税金はかかりません。被害者が受けた精神的苦痛などに対する「損害の補償」であり、所得とはみなされないためです。

ただし、例外的に課税されるケースもあります。本記事では、非課税となる理由や税金がかかる可能性があるケースを弁護士がわかりやすく解説します。

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交通事故の慰謝料は非課税が原則

交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は、原則として非課税です。

所得税法にも、「心身に加えられた損害に基因して取得する損害賠償金」は課税されない旨が明記されています。慰謝料は、被害者が被った損害に対する補償であり、利益や所得を得る行為ではありません。したがって、慰謝料の受領によって純資産が増加したとしても、それは損害の回復にすぎず、課税の対象とはなりません。

ただし、受け取る慰謝料の金額が社会通念上「相当」と認められる範囲を著しく超える場合、その一部については例外的に課税対象となる可能性があります。たとえば、実質的に資産の移転や贈与とみなされるような場合には、税務上の問題が生じることもあるため、注意が必要です。

慰謝料以外の賠償金も非課税が原則

交通事故では、慰謝料以外にもさまざまな損害賠償が発生します。たとえば、次のようなものです。

これらはいずれも、「事故によって実際に失ったものを回復するための補償」であり、利益を得る行為ではありません。したがって、原則として所得税は課されないとされています。

たとえば休業損害は、本来であれば事故がなければ得られていたはずの収入を補うものであり、「収入の代替」であっても新たな所得とはみなされません。

同様に、治療費や車両修理費についても、被害者が被った具体的な損害を補填するものであり、実質的な所得増加には当たらないため、こちらも非課税です。

さらに、加害者や保険会社などから受け取る見舞金についても、心身又は資産に加えられた損害につき社会通念上それにふさわしい金額のものである場合は、慰謝料と同様に非課税となります。

交通事故の慰謝料や保険金で税金がかかる場合

交通事故による慰謝料・損害賠償金・保険金は、原則として非課税です。しかし、一定の条件下では課税対象となる例外もあります。

ここでは、特に注意が必要な代表的な4つのケースをご紹介します。

過剰な慰謝料や損害賠償(贈与税)

慰謝料や損害賠償金が、社会通念上相当とされる範囲を大きく超えて過大な場合には、その一部が贈与税の課税対象となることがあります。

たとえば、実際に発生した損害を大幅に上回る金額を受け取った場合、その超過部分が「利益」とみなされ、贈与として扱われる可能性があります。

収入に代わる性質をもつ見舞金(所得税)

交通事故により就労不能となり、被害者が収入を失った場合、加害者側からの休業損害の支払いによってその損失が補填されます。休業損害は原則として非課税です。

しかし、休業損害だけでは不十分と判断された場合、勤務先等から「見舞金」名目で金銭が支給されることがあります。このような勤務先からの見舞金が実質的に収入の補填と認められる場合には、所得税の課税と対象となるので注意が必要です。

一方で、慰労やお見舞いの気持ちとして支払われた少額の金銭や、収入補填とは無関係な性質のものは、非課税として取り扱われます。

破損した事業用の物品の補償(所得税)

交通事故で車両や物品などが破損した場合、その修理費や損害の補償は、損害を埋め合わせるための支払いです。したがって、原則として非課税です。

ただし、破損したものが事業用の資産である場合には注意が必要です。このようなケースでは、所得税の課税対象となることがあります。

たとえば、トラックで商品を運送中に事故が発生し、積み荷が破損したとします。積み荷の弁償を受けた場合、その商品は本来であれば販売して利益を得るはずのものであるため、弁償金の受領は「売却と同じ経済的効果」をもたらすことになります。

このように、事業用資産の補償は、単なる損害の補填ではなく、事業収入を得たのと同様の性質を持つと評価される場合があり、所得税の課税対象となることがある点に注意が必要です。

被害者の慰謝料請求権の相続(相続税)

交通事故で被害者が死亡した場合、遺族は被害者本人に代わって慰謝料を請求することになります。このとき、加害者(または保険会社)から支払われる慰謝料は、遺族の権利として取得するものであり、相続税の課税対象にはなりません。

また、この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として所得税もかかりません。

一方で、被害者が生前に損害賠償金を受け取ることが確定的に決まっていたものの、実際の受け取り前に死亡した場合には注意が必要です。この場合、被害者が持っていた損害賠償金を受け取る権利、すなわち債権がそのまま相続財産となり、遺族はその相続財産を承継することになります。

したがって、このように確定した損害賠償請求権を相続により取得した場合には、相続税の課税対象となります。

被害者側の保険から死亡保険金を受け取った場合

交通事故によって被害者が亡くなったとき、被害者本人が加入していた各種保険から死亡保険金が支払われることがあります。これらの保険金は、契約内容や支払いの目的によっては課税の対象になるため、注意が必要です。

支払いの対象となる主な保険は、次のようなものです。

  • 人身傷害保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 自損事故保険
  • 医療保険
  • 生命保険 など

被害者自身が加入していた保険から被保険者の死亡を保険事故として支払われる保険金については、契約者(保険料負担者)と受取人の関係によって、相続税、贈与税、または所得税の課税対象となる可能性があります。

ただし、その保険金のうち、賠償義務者が本来負担すべき金額については、損害賠償金の性格を有することから、受取人に対する相続税、贈与税、所得税は、非課税となっています。

よって、死亡事故により受け取る保険金のうち、賠償義務者が本来負担すべき金額を超える額は、その保険料の負担者に応じて、相続税、贈与税または所得税の課税の対象となります。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

交通事故の被害者が受け取る慰謝料や示談金、保険金は、損害を回復するための補償として支払われるものであり、原則として課税対象にはなりません。

もっとも、受け取る金額やその目的・内容によっては課税対象となることがあるため注意が必要です。

このように、慰謝料や保険金に関する課税関係は支払いの目的や契約内容によって大きく異なるものです。判断に迷う場合は、交通事故に詳しい専門家、税務に詳しい専門家に相談し、正確な情報をもとに対応しましょう。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 小林 義和

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