
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大友 竜亮
- Q交通事故の慰謝料はいつ時効になりますか?
- A交通事故の慰謝料の時効は、原則として5年間となります。
―――― 目次 ――――

慰謝料の時効は5年間
交通事故の慰謝料の時効は、原則として5年間となります。
交通事故の慰謝料の請求は、いつまでも行えるものではありません。民法には、消滅時効が定められており、一定期間が過ぎてしまうと、請求権が時効で消滅してしまいます。
現在の民法では、慰謝料の請求の時効は、原則として5年間となっています。(もっとも、当て逃げ事故やひき逃げ事故など、加害者が不明の交通事故の場合には、慰謝料の請求の時効は20年間となります。)
なお、同じ交通事故で生じた損害であっても、自動車、衣服、所持品などの物的損害の時効は、原則として3年間となりますので、ご注意ください。
時効はいつからスタートする?
時効期間は、どのタイミングからスタートするのでしょうか。時効のスタート時点について説明いたします。
時効の起算点
時効期間がスタートする時点のことを、時効の起算点といいます。
時効の起算点は、「損害及び加害者を知った時」の翌日とされています。一般的な交通事故の場合には、交通事故に遭ったその日に加害者を知ることになりますので、事故に遭った翌日から時効期間がスタートすることになります。
他方、当て逃げ事故やひき逃げ事故など、事故に遭ったその日に加害者が分からないような場合があります。そのような場合には、その後の警察の捜査などによって加害者が判明した時の翌日から時効期間がスタートすることになります。
なお、警察の捜査などによっても加害者が判明しなかったような場合には、いつまでも時効が成立しないわけではなく、加害者が判明しなくても、事故の翌日から20年で時効となってしまいます。
事故の種類や損害の内容によって時効の起算点は異なります
時効の起算点は、「損害及び加害者を知った時」の翌日となりますが、事故の種類や損害の内容によって、時効の起算点が異なってきます。交通事故による損害賠償請求権の時効は、原則としては次のとおりとなります。
事故の種類 | 時効の起算点 | 時効期間 |
---|---|---|
物損事故 | 事故の翌日 | 3年間 |
人身事故 (傷害のみ) |
事故の翌日 | 5年間 |
人身事故 (後遺障害が残った) |
症状固定日の翌日 | 5年間 |
死亡事故 | 死亡日の翌日 | 5年間 |
加害者が判明しない事故 | 事故の翌日 | 20年間 |
後日加害者が判明した場合 ※いずれか早い方 |
加害者を知った日の翌日 | 5年間 |
事故の翌日 | 20年間 |
なお、加害者本人に対して、交通事故の損害を請求する場合の時効は、上記のとおりなのですが、加害者の加入する自賠責保険に対して請求をする場合の時効は、原則として、事故の翌日から3年間となりますので、ご注意ください。
時効が成立しないようにする方法
それでは、事故から期間が経過してしまった場合に、時効を成立させないためにはどのようなことをする必要があるでしょうか。
民法には、時効が成立しないようにする方法として、時効の「更新」、「完成猶予」の制度が設けられています。
時効の更新
時効の更新とは、時効の期間をリセットすることを言います。時効の更新事由が認められると、更新事由が認められた時点から、再度0から時効期間のカウントがスタートすることになります。
時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、時効期間の進行がストップすることを言います。時効の完成猶予事由が認められると一時的に時効の完成を阻止することができます。
時効の更新または完成を猶予させる具体的な方法は、主に①裁判上の請求、②催告、③加害者の承認、④協議する旨の合意があります。
①裁判上の請求
訴訟を提起することにより、裁判が終わるまでは時効の完成が猶予されます。
また、訴訟の結果、勝訴判決が出た場合には、時効の更新が認められます。
②催告
催告とは、加害者に対して損害賠償金を支払うよう請求することを言います。
催告があったときは、そのときから六カ月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。
請求された、請求されていないと、トラブルになってしまうことを防ぐために、実務上、催告をするときには、内容証明郵便を配達証明付きで送ることが一般的です。
③加害者の承認
加害者が、被害者に対する損害賠償債務があることを認める場合には、時効が更新されます。
④協議する旨の合意
被害者と加害者の間で、損害賠償請求権について協議するとの書面による合意があった場合には、次のいずれか早い時期までは時効の完成が猶予されます。
①合意があった時から一年を経過した時
②合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)
③当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六カ月を経過した時
まとめ
交通事故の慰謝料の時効期間(加害者への請求分)は原則として次の通りとなります。
①後遺障害のない事故 事故の翌日から5年間
②後遺障害のある事故 後遺障害認定日の翌日から5年間
③死亡事故 事故日の翌日から5年間
なお、例外があったり、法律の解釈によって異なる見解となったりすることもあります。いずれにしても早めに行動・解決しましょう。
(監修者 弁護士 大友 竜亮)