チャイルドシート不装着と過失相殺

最終更新日:2026年05月28日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Qチャイルドシート不装着の事故です。過失割合はどうなりますか?

チャイルドシートを使っていなかったことが子どものけがにつながったと判断されるときは、5~10%程度賠償金が減額されることが多いです。これを「過失相殺」といいます。

ただし、相手の不注意がとても大きいときや、チャイルドシートをしていなかったこととけがにつながりがないときは、賠償金が減らされないこともあります。

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チャイルドシートのルール

まずは、チャイルドシートに関する法律のルールと、装着しないことの危険性を見ていきましょう。

装着義務

6歳未満の幼児を車に乗せて運転するとき、運転者にはチャイルドシートを使用する義務があります(道路交通法71条の3第3項)。

違反したときは、運転者に違反点数1点が加算されます。違反点数とは、交通違反や交通事故を起こしたときに加算される点数です。過去3年間の違反点数が累積され、一定の点数に達すると免許停止や免許取消の処分を受けます。

ただし、病気や治療のため、チャイルドシートの使用が幼児の体に負担となるときや、座席数が足りずシートを設置できないときなど、やむを得ない事情があるときは、例外として義務が免除されます(道路交通法施行令26条の3の2第3項)。

【参考】チャイルドシートの使用率

警察庁とJAFが2025年に実施した全国調査によると、6歳未満全体のチャイルドシート使用率は82.4%でした(調査対象13,104人)。

年齢 使用率(2025年)
1歳未満 93.2%
1〜4歳 84.8%
5歳 66.7%
6歳未満全体 82.4%
警察庁・JAF「チャイルドシート使用状況全国調査」2025年

5歳になると使用率は66.7%まで低下します。装着義務があるにもかかわらず、5歳児の約3人に1人がチャイルドシートを使用していません。

同じ調査では取り付け方の誤りも調べられており、対象となったシートの25.2%で何らかの誤りが確認されました。最も多い誤りは「腰ベルトの締め付け不足」で、乳児用・幼児用ともに約半数を占めています。チャイルドシートを設置していても、正しく固定できていなければ十分な安全効果は得られません。

装着しない場合の危険性

チャイルドシートを使用しないと、衝突の衝撃で子どもが車内の設備に激突したり、窓から車外へ投げ出されたりする危険性が大きく高まります。

警察庁のデータによれば、6歳未満の幼児が事故にあったとき、チャイルドシート不装着の場合に死亡する割合は、正しく使用していた場合の約5.3倍にのぼります。

警察庁チャイルドシート関連統計(令和7年中)

実際の裁判例でも、チャイルドシート不装着の幼児が衝突の勢いで車外へ投げ出され、命を落としたケースがあります。深刻な被害を防ぐために、チャイルドシートは欠かせない安全装置です。

過失割合

ここでは、過失割合の基本的な仕組みと、子どもの事故で問題となる「被害者側の過失」という考え方をご説明します。

過失割合とは

過失割合とは、交通事故が起こった原因について、加害者と被害者にそれぞれどれだけの不注意があったかを割合で示したものです。

民法722条2項は被害者にも過失があったときは、裁判所がそれを考慮して賠償額を決めることができると定めています。これが「過失相殺」と呼ばれる仕組みです。事故による損害を、双方の過失に応じて公平に分担するためのものです。

過失割合について詳しくは、「過失割合の決め方はどのようなものですか?」もご参照ください。

被害者側の過失

幼い子どもには、物事の良し悪しを判断する力がまだ十分に備わっていません。そのため、子ども本人の不注意を責めることはできません。

しかし、交通事故の損害賠償では、被害者本人に過失がない場合であっても、被害者と生活関係上一体といえる者の不注意があれば、それを「被害者側の過失」として考慮するという考え方が採られています。

そこで裁判実務では、子どもの父母など、子どもと生活上一体といえる関係にある人の不注意を「被害者側の過失」として扱い、子どもが受け取る賠償額を減額します。

つまり、子どもと同乗している親権者がチャイルドシートを装着させなかったことは、親権者の不注意に当たるため、被害者側の過失として、過失相殺の対象となるのです。

チャイルドシート不装着の過失割合

チャイルドシートを装着していなかったことが、どの程度賠償額を減らす要因になるのか、実務の目安をご説明します。

基本的な考え方

裁判例の目安では、チャイルドシート不装着が子どものけがの発生や悪化につながった場合、被害者側の過失として5〜10%程度が加算されるのが一般的です。

たとえば、相手方の過失が100%の事故であっても、チャイルドシートを装着していなかったことで子どものけがが重くなったと判断されれば、最終的に受け取れる賠償額は90%や95%にとどまる可能性があります。

裁判所は、チャイルドシートを装着していれば子どものけがを軽くできたかどうか(因果関係)を重視し、加害者の過失の大きさも踏まえて、最終的な割合を判断します。

不装着が過失割合に影響しない場合

チャイルドシートを装着していなかったとしても、次のような場合には過失相殺が行われないことがあります。

① 不装着と損害の間に因果関係がない場合

「チャイルドシートを装着していたとしても同じ程度のけがを負っていた」と判断されるときは、過失相殺は否定されることが多いです。過失相殺が認められる根拠は、チャイルドシートを装着していればけがを防げた、または軽くおさえられたという点にあるからです。

因果関係の有無は、衝突箇所や衝撃の強さ、けがの内容、同乗者のけがとの比較などをもとに、個別に判断されます。

② 加害者の過失が著しく大きい場合

加害者側の過失が極めて重大な場合は、被害者側にチャイルドシート不装着という落ち度があったとしても、損害の一部を被害者側に負担させるのは公平でないと判断されることがあります。

たとえば、赤信号を無視して交差点に進入した車両との衝突事故で、チャイルドシート不装着の幼児が死亡した事案があります。裁判所はいったん不装着による過失を10%と認めたものの、加害者の前方不注視(前方をよく見ていなかったこと)が「著しい過失」にあたると判断し、その10%を差し引いて、最終的に過失相殺を否定しました。

このほか、加害者による極めて危険な速度での走行や、ひどい無謀運転による事故でも、同じように過失相殺が否定されることがあります。

③ 装着義務が免除される事情がある場合

法律上、チャイルドシートの装着義務が免除されている状況での不装着は、過失相殺の対象になりません。

道路交通法は、病気のためにチャイルドシートの使用が幼児の体に負担となる場合など、やむを得ない理由があるときは装着義務を免除しています(道路交通法71条の3第3項ただし書道路交通法施行令26条の3の2第3項)。

たとえば、病気やけがの治療中で、チャイルドシートに固定すると体に悪影響があるときなどがこれにあたります。

④ 父母などの監督者が関与していない場合

父母など、子どもの監督者がチャイルドシートの装着に関与していない場合は、過失相殺の対象にならないことがあります。

チャイルドシート不装着の過失は、子ども本人ではなく、父母など子どもを監督する立場の人の落ち度として扱われます。父母が同乗していれば、チャイルドシートを装着させることができたはずです。そのため、父母が被害車両を運転していたときや同乗していたときは、過失相殺の対象となります。

一方、父母が同乗していなければ、そもそも父母にはチャイルドシートを装着させる機会がなかったといえます。そのため、父母などが関与していないケースでは、過失相殺が否定される可能性があります。

父母の同乗の有無によって過失相殺がどう変わるかは、個別の事情を踏まえた専門的な判断が必要です。まずは交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

よくあるご質問

ここでは、チャイルドシート不装着の過失割合に関して、よくいただくご質問にお答えします。

チャイルドシートを正しく装着していなくても過失相殺される?

チャイルドシートをまったく使用していないケースだけでなく、「正しく装着していなかった」場合も、過失相殺の対象となる可能性があります。

たとえば、ベルトが緩んでいたり、子どもの体格に合わないものを使用していたりして、事故のときに十分な効果を発揮せず、けがが大きくなった場合です。このときは、不装着の場合と同じように5〜10%程度の過失相殺が行われる可能性が高いです。

ベビーシート・ジュニアシート・チャイルドシートで判断は異なる?

結論として、法律上の扱いに違いはありません。これらはすべて「幼児用補助装置」としてまとめて扱われます。それぞれの違いは次のとおりです。

種類 対象の目安 装着義務
ベビーシート(乳児用) 新生児〜1歳半頃 あり(6歳未満)
チャイルドシート(幼児用) 新生児〜4歳頃 あり(6歳未満)
ジュニアシート(学童用) 1歳〜11歳頃 6歳以上は義務なし

※メーカー・製品によって対象年齢・適応身長の設定が前後します。

重要なのは、子どもの身長や体重に合った形状のものを選び、座席にしっかりと固定することです。体格に合っていないシートを使用していたために十分な効果が得られなかった場合は、不装着の場合と同じように過失相殺の対象となる可能性があります。

チャイルドシート不装着と関係ない場所をけがしても過失相殺される?

原則として、不装着と損害の発生や拡大との間に因果関係がなければ、過失相殺は行われません。不装着とは関係なく生じた損害について被害者側に責任を負わせるのは、公平の観点から適切でないと考えられているからです。

抱っこで同乗していた場合の過失割合は?

6歳未満の子どもを抱っこしたまま乗車させることは、原則として道路交通法上のチャイルドシート装着義務に違反する状態です。

衝突の衝撃で保護者が子どもを支えきれず、車内で激突したり車外に投げ出されたりする危険が高いため、チャイルドシート不装着と同じか、それ以上に損害との因果関係が認められやすい状況といえます。過失相殺として5〜10%程度の減額がなされる可能性が高いです。

赤ちゃんがけがをしたときの注意点は?

乳幼児は、自分の症状を言葉で伝えることができません。

将来、後遺障害として認定を受けたり、適正な賠償を受けたりするためには、事故直後から通院を続け、正確な診断書をもらっておくことが大切です。

小児科と整形外科のどちらを受診すべき?

交通事故による外傷(骨折や打撲など)は整形外科が専門です。ただし、小さなお子さんの場合は、体の内側の異常や精神面の変化も確認するため、小児科の受診もあわせておすすめします。

実務上は、整形外科でくわしい検査を受けながら、必要に応じて小児科と連携してもらうのが望ましいでしょう。複数の部位にけがが疑われる場合は、総合病院の受診も選択肢になります。

子どもの交通事故について詳しくは、「子どもが交通事故の被害にあった場合の注意点」もあわせてご確認ください。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

チャイルドシートを装着していなかったとしても、それだけで過失相殺がされるわけではありません。相手方のスピード違反や信号無視といった事情、不装着とけがとの因果関係の有無など、個別の事情を丁寧に検討することで、過失割合を有利に修正できる可能性があります。

子どもの事故は、将来の成長や生活への影響も踏まえた慎重な対応が必要です。相手方の保険会社から大きすぎる過失相殺を提示されているときや、提示された示談金の金額に疑問があるときは、ぜひ一度、交通事故を専門とする弁護士にご相談ください。

よつば総合法律事務所では、交通事故の案件を多く取り扱っております。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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