無灯火の事故の過失割合

最終更新日:2026年06月08日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q無灯火(ライトなし)の事故の過失割合はどうなりますか?

無灯火の車両は、周囲の自動車や歩行者からの発見が大幅に遅れるため、事故発生の大きな要因となります。

そのため、無灯火であったという事実は、過失割合を判断するときに無灯火側に不利な事情として働きます。実務上は、無灯火が「著しい過失」として扱われ、無灯火側の過失割合が10%程度重くなることがあります。

ただし、過失割合への影響は、現場の明るさや相手方の行動など、個別の事情によって変わることがあります。

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灯火(ライト)に関するルール

夜間のライトに関するルールは、大きく次の2つの面から定められています。

  • 点灯義務:夜間にライトをつけなければならない義務(道路交通法による)
  • 灯火の性能基準:ライトに必要な明るさや色などの基準(道路運送車両法または公安委員会規則による)
ライトの役割は前方を照らすことだけではありません。周囲の人や車から、自分の存在に気づいてもらうという役割もあります。無灯火や性能不足のライトで走行することは、この両方の役割を損なう行為です。

四輪車

無灯火での走行

四輪車は、夜間に道路を通行する場合、道路交通法52条1項により、前照灯や車幅灯、尾灯などを点灯しなければなりません。

これに違反して無灯火で走行した場合、道路交通法120条1項5号により5万円以下の罰金が科される可能性があります。

ただし、実務上は交通反則通告制度、いわゆる青切符によって処理されるのが一般的です。青切符とは、軽微な交通違反について、刑事罰ではなく反則金の納付で処理する仕組みのことです。

無灯火違反の反則金は、車両の種別によって異なります。普通車は6,000円、大型車は7,000円です。

なお、交通事故を伴う場合などは、反則通告制度では処理されず、刑事手続に移行することがあります。

性能や整備不良での走行

ライトが故障している場合には、無灯火違反とは別に、整備不良車両の運転として問題になることがあります。

車の使用者は、ライトなどの装置が保安基準に適合するように点検・整備する義務を負います(道路運送車両法47条)。

ライトの性能基準も、道路運送車両の保安基準などに定められています(道路運送車両の保安基準32条道路運送車両の保安基準の細目を定める告示198条5項1号)。

具体的には、走行用前照灯、いわゆるハイビームには、夜間に前方100メートル先の障害物を確認できる性能が求められます。また、すれ違い用前照灯、いわゆるロービームには、夜間に前方40メートルの障害物を確認できる性能が必要です。

ライトが故障していたり、必要な性能を満たしていなかったりする状態で走行すれば、道路交通法62条の「整備不良車両の運転」に該当する可能性があります。整備不良車両の運転とは、ライトやブレーキなど、安全に関わる装置に不備がある車を運転することです。

違反した場合には、道路交通法119条により3月以下の懲役または5万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

なお、実務上は、整備不良についても青切符の対象になることが多いです。反則金は普通車が7,000円、大型車が9,000円です。

バイク

無灯火での走行

バイクにも四輪車と同様に、点灯義務があります。

夜間に無灯火で走行した場合には、道路交通法52条1項違反として、5万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

実務上は、四輪車と同様、交通反則通告制度(いわゆる青切符)によって処理されるのが一般的です。無灯火違反の反則金は、二輪車が6,000円、原付車が5,000円です。

性能や整備不良での走行

ライトが故障している場合には、四輪車と同様に、整備不良車両の運転として問題になることがあります。

ライトが故障したまま走行すれば、道路交通法62条の「整備不良車両の運転」に該当し、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金の対象となります(道路交通法119条)。

実務上は、整備不良についても交通反則通告制度の対象となることがあります。灯火装置の不備については「自動車等整備不良(尾灯等)違反」として扱われ、反則金は二輪車が6,000円、原付車が5,000円です。

また、バイクの前照灯についても、道路運送車両の保安基準などで性能基準が定められています。

排気量の大きい二輪車については、四輪車と同様に、いわゆるハイビームには前方100メートル、ロービームには前方40メートルの障害物を確認できる性能が求められます(道路運送車両の保安基準32条)。

原付については、前照灯が夜間前方40メートルの障害物を確認できる性能を満たす必要があります(道路運送車両の保安基準62条道路運送車両の保安基準の細目を定める告示260条)。

自転車

無灯火での走行

自転車は道路交通法上「軽車両」に分類されます。軽車両とは、自転車や荷車など、道路交通法上の車両の一種です。

自転車も車両であるため、夜間に道路を通行する場合には、各都道府県の公安委員会が定めるライト(灯火)を点灯させなければなりません(道路交通法52条1項同施行令18条1項5号)。

違反した場合、道路交通法120条1項5号により5万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、自転車も交通反則通告制度、いわゆる青切符の対象です。無灯火違反の反則金は5,000円程度です。ただし、自転車の青切符の対象となるのは16歳以上の運転者です。16歳未満の場合は、これまでどおり指導警告が中心です。

性能や整備不良での走行

自転車には、自動車やバイクのような道路運送車両法の保安基準は適用されません。その代わり、各都道府県の道路交通規則などで、必要な灯火の性能が定められています。

たとえば、千葉県道路交通法施行細則6条では、夜間に道路を通行する場合、自転車に次のような性能を備えたライトなどを取り付ける必要があります。

  • 前照灯:灯光の色が白色または淡黄色で、夜間に前方10メートルの障害物を確認できる性能を有するもの
  • 尾灯:灯光の色が橙色または赤色で夜間後方100メートルから点灯を確認できる性能を有するもの
  • 尾灯の代わりに、基準に適合する反射器材(リフレクター)をつけることも可能

これらの基準を満たさないライトを使用している場合、たとえ点灯していても、灯火が不十分だったと評価される可能性があります。

過失割合とは

過失割合とは、交通事故の発生について、当事者それぞれがどの程度の責任を負うかを割合で表したものです。

たとえば、被害者と加害者の過失割合が「被害者20対加害者80」とされた場合、被害者に2割、加害者には8割の責任があることを意味します。

この割合に応じて損害賠償額が増減するため、過失割合は、被害者が受け取れる金額に直結する重要な問題です。

無灯火の事故の過失割合

無灯火の状態では、相手方が車両の存在を発見しにくくなります。そのため、無灯火で走行していた側の過失割合は重く評価されやすいです。ただし、その程度は現場の明るさや事故の状況によって異なります。

基本的な考え方

過失割合の実務では、「別冊判例タイムズ39(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」が広く参照されています。

過失割合は、一般的に次のような流れで判断されます。

  1. 事故の類型(出会い頭、追突など)に応じた基本の過失割合を確認する
  2. 無灯火・速度超過・一時停止違反などの個別の事情(修正要素)を加味する
  3. 最終的な過失割合を判断する

ここでいう「修正要素」とは、基本の過失割合を増やしたり減らしたりするときに考える事情のことです。無灯火は、相手方からの発見を難しくする事情であるため、無灯火側に不利な修正要素として考慮されることがあります。

四輪車が無灯火の場合

四輪車が夜間に無灯火で走行していた場合、事故状況によっては「著しい過失」と評価され、基本の過失割合に10%程度の不利な修正が加えられることがあります。

「著しい過失」とは、通常求められる注意を大きく欠いた不注意のことです。

たとえば、交差点での出会い頭事故で、基本の過失割合が加害者70%・被害者30%だったとします。

被害者側の四輪車が無灯火であった場合、被害者に著しい過失があるとして10%程度の不利な修正が加えられ、最終的な過失割合は加害者60%・被害者40%となることがあります。

なお、駐停車中の無灯火については、走行中の無灯火とは別に考える必要があります。

一般道での追突事故では、原則として追突した側の過失が100%となります。しかし、停車していた車が尾灯やハザードランプを点灯していなかった場合には、後続車から発見しにくくなるため、停車していた車にも10?20%の過失が認められることがあります。

バイクが無灯火の場合

バイクが無灯火だった場合も、四輪車と同様に、事故状況によっては、著しい過失として基本の過失割合に10%程度の不利な修正が加えられることがあります。

バイクは四輪車に比べて車体が小さく、夜間は特に発見されにくい傾向があります。そのため、無灯火で走行していたことは、事故の発生に大きく影響した事情として評価されやすいといえます。

自転車が無灯火の場合

自転車が無灯火だった事故については、事故の状況や当事者の属性によって、過失割合に幅があります。

  1. 自転車同士の衝突

    歩道上で対向する自転車同士の接触事故について、無灯火かつ前方不注視だった自転車に60%の過失を認めた裁判例などがあります。

    自転車同士の事故でも、夜間にライトを点灯していなかったことは、相手方からの発見を困難にする事情として重く評価されることがあります。

  2. 四輪車との出会い頭

    12歳の少年が運転する無灯火の自転車と、ライトを点灯した四輪車が衝突した事故で、過失割合は50対50とされた事例などがあります。

    この事案では、自転車が無灯火だったことが不利に評価される一方で、少年の判断能力が未熟であることなども考慮されました。

  3. 高齢者のケース

    92歳の高齢者が運転する無灯火の自転車が四輪車と衝突した事故について、自転車側の過失を35%にとどめた事例などもあります。

    この事案では、無灯火であったことは問題とされつつも、年齢や道路の明るさ、事故状況などが考慮され、過失割合が調整されたものと考えられます。

このように、無灯火は過失割合に影響する重要な事情です。

ただし、最終的な過失割合は、無灯火の有無だけで決まるわけではありません。事故類型、現場の明るさ、道路状況、当事者の年齢や判断能力、双方の速度や注意状況などを総合的に考慮して判断されます。

よくあるご質問

ここでは、無灯火の事故について、よくいただくご質問にお答えします。

双方が無灯火の場合どうなる?

双方が無灯火であった場合は、双方とも相手方からの発見を困難にした事情があるとして、過失割合の判断で考慮されます。そのため、無灯火による不利な修正が双方に及び、結果として大きな修正がされないこともあります。

ただし、一方が四輪車で他方が自転車や歩行者といった場合には、「優者危険の原則」が働きます。優者危険の原則とは、車両と歩行者・自転車では衝突したときに生じる被害の程度が異なるため、弱い立場にある歩行者や自転車を保護するという考え方です。

この原則のもとでは、単純な相殺にはならず、車両側に重い責任が課される調整がなされることがあります。

停止中の無灯火の車両にぶつかると、過失割合はどうなる?

停車していた車が無灯火だった場合は、ぶつかった側の過失が一部軽くなる可能性があります。

通常、夜間に停車中の車に追突した場合、ぶつかった側の過失が原則として100%とされます。しかし、停車していた車が無灯火で、かつハザードランプもつけずに道路上にはみ出していたような場合は、停車中の車が事故を誘発したとして、一定の過失が認められます。

具体的には、停車側に10~20%程度の過失が認められ、その分、ぶつかった側の過失が軽くなる可能性があります。

無灯火を証明するには?

無灯火の立証において最も重要なのが、「ドライブレコーダー」と「実況見分調書」です。
実況見分調書とは、警察官が事故現場を調べた結果を記録した書面のことです。

実況見分調書には、事故当時の道路の明るさ・見通し、車両の灯火状況などが記録されていることがあります。

近年では、電動自転車の走行データからライトのスイッチが入っていたかどうかを確認する方法や、ドライブレコーダーの映像解析によって無灯火の事実を立証するケースも増えています。

事故後はできる限り現場の状況を記録しておき、証拠の収集・保全をすることが重要です。

過失割合に納得できないときはどうする?

過失割合に納得ができないときは、次の点を検討しましょう。

  1. 過去の類似事例の調査
  2. 客観的な証拠の確認
  3. 基本的な過失割合を修正する事情の検討

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

夜間の無灯火は、道路交通法違反であるとともに、交通事故における過失割合を大きく左右する要素です。

相手方からの発見を困難にするという性質上、無灯火側の責任は重く評価されます。ただし、現場の明るさや相手方の過失との兼ね合いによっては、過失割合の判断が想定と異なるケースも少なくありません。

「無灯火の相手にぶつけられたのに、なぜこちらの過失が認められるのか」「提示された過失割合が高すぎる」といった疑問や不満は、専門知識なしに解決するのが難しい問題です。

よつば総合法律事務所では、交通事故の過失割合に関するご相談をお受けしています。事故の状況を丁寧に聞き取り、適正な過失割合の実現に向けてサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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