自損自弁
最終更新日:2026年07月27日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q自損自弁とは何ですか?
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自損自弁とは、交通事故の当事者双方が、自分に生じた損害をそれぞれ自己負担し、相手方には損害賠償請求をしない形で解決する方法です。
主に物損事故で提案されることが多く、過失割合をめぐる争いを避けて早期に解決できるというメリットがあります。
一方で、自損自弁に合意すると、原則として相手方から修理費などの賠償を受けられなくなります。自分の過失割合が小さい場合や、修理代の損害額が大きい場合には不利になることもあるため、合意前に慎重に確認することが大切です。

目次

自損自弁とは
自損自弁とは、交通事故の当事者双方が、自分に生じた損害をそれぞれ自己負担し、相手方には損害賠償請求をしない解決方法です。主に、車両の修理費などが問題となる物損事故で用いられます。
自損自弁の意味
自損自弁とは、文字どおり「自分の損害は自分で弁償する」という意味です。言い換えれば、お互いが相手への損害賠償を請求せず、自分に生じた損害をそれぞれ自己負担すると合意することをいいます。
通常、交通事故では、まず双方に生じた修理代などの損害額を確認します。そのうえで、事故状況に応じた過失割合を踏まえ、自分の損害のうち相手方に請求できる金額を算定し、相手方に請求します。
これに対し、自損自弁では、双方が相手方に対する請求を行いません。自分に生じた損害は自分で負担し、相手方に生じた損害についても賠償しない形で解決します。
ここで注意すべきなのは、自損自弁が単なる事実上の処理ではないという点です。
法律上、示談(和解契約)は口頭の合意だけでも成立し得ます。ただし、保険会社の担当者との電話などで、単に「お互い様だから自損自弁ですかね」といった打診や意見交換をした程度であれば、まだ正式な示談が成立したとはみなされないケースも多いです。
とはいえ、不用意に「それでいいです」と明確に同意してしまうと、後から撤回するのが難しくなるリスクがあるため、口頭であっても安易な同意は避けるべきです。自損自弁を提案された場合は、その意味や効果をしっかり理解した上で返答するようにしましょう。
自損自弁の具体例
それでは、自損自弁がどのような場面で検討されるのか、具体例でみてみましょう。
たとえば、車同士の物損事故で、AさんとBさんに次のような損害が発生したとします。
| Aさん(被害者) | Bさん(加害者) | |
|---|---|---|
| 車両修理代 | 5万円 | 20万円 |
| 過失割合 | 20% | 80% |
この場合、Aさんは、自分の損害5万円のうち、Bさんの過失割合80%にあたる4万円をBさんに請求できます。
【計算式】5万円×80%=4万円
一方、Bさんも、自分の損害20万円のうち、Aさんの過失割合20%にあたる4万円をAさんに請求できます。
【計算式】20万円×20%=4万円
つまり、このケースでは、双方が相手方に請求できる金額がいずれも4万円となります。互いに請求し合っても金額は同額で、実質的には相殺し合う関係にあるため、あえて金銭をやりとりする実益は大きくありません。
こうした「双方の請求可能額がほぼ同じになる」場面では、細かく計算して支払い合うよりも、自損自弁でそれぞれが自分の損害を負担した方が、早く・簡単に解決できることがあります。
自損自弁を提案されるケース
保険会社から自損自弁を提案されるのは、主に物損事故で、損害額が比較的小さい場合や、双方の最終的な請求額に大きな差がない場合です。
また、過失割合をめぐって双方の主張が対立し、示談交渉が進まない場合に、早期解決のための妥協案として提案されることもあります。
ここでは、自損自弁を提案されやすい代表的なケースを解説します。
双方の損害が同程度で任意保険を使わないケース
双方の損害額がほぼ同程度で、かつ損害額が大きくない場合には、任意保険を使うのではなく、自損自弁での解決を提案されることがあります。
任意保険を使用すると、契約内容によっては等級が下がり、翌年以降の保険料が上がることがあります。そのため、修理代などが少額であれば、保険を使ってわずかな賠償を受け取るよりも、自損自弁としてそれぞれ自己負担で解決した方が、結果的に出費を抑えられることがあるのです。
ただし、実際にどの程度保険料が上がるかは一概にはいえません。自損自弁に応じる前に、まずはご自身の保険会社へ「保険を使った場合に翌年以降いくら上がるのか」を確認しておくと安心です。
双方の過失が5割程度で損害が軽微なケース
双方の過失割合が5割程度で、損害額が軽微な場合にも、早期解決のために自損自弁を提案されることがあります。
このようなケースでは、過失割合を細かく争っても、最終的な請求額に大きな差が出ないことがあります。たとえば、修理代が5万円だった場合、相手方の過失割合が50%であれば請求できる金額は2万5000円です。仮に相手方の過失割合が60%と認められても、請求できる金額は3万円であり、差額は5000円にとどまります。
そのため、過失割合や損害額について交渉を続けるよりも、自損自弁で早期に解決した方が合理的なケースがあります。
しかし、損害額が軽微であっても、自分の過失割合が明らかに小さいと考えられる場合には、安易に自損自弁へ応じるべきではありません。保険会社から提示された過失割合に納得できない場合には、その根拠を確認することが大切です。
過失割合など双方の主張に隔たりがあり交渉が進展しないケース
事故状況について双方の主張が食い違い、過失割合に大きな隔たりがある場合には、示談交渉が進まないことがあります。
特に、ドライブレコーダーの映像、事故現場の写真、目撃者の証言といった客観的な証拠が乏しい場合は、どちらの主張が正しいのか判断しづらく、過失割合をめぐる交渉が長引きがちです。ここから裁判をすると、さらに長い時間を要したり、手間暇がかかったりしまいます。
このような場合に、過失割合を争い続けるよりも、双方が相手方に請求せず、それぞれ自分の損害を負担する形で早期に解決するための妥協案として、自損自弁が提案されることがあります。
もっとも、自損自弁に合意すると、合意内容によっては、相手方に損害賠償を請求できなくなる可能性があります。自分の過失割合が小さいと考えられる場合や、自分の主張を裏付ける証拠がある場合には、提案を鵜呑みにせず、慎重に対応すべきでしょう。
保険会社から自損自弁を提案された場合でも、ドライブレコーダー映像や事故現場の写真、修理見積書などを確認し、提案内容が妥当かどうかを慎重に判断することが大切です。
自損自弁のメリット
自損自弁の主なメリットは、相手への賠償をしなくて済むことと、事故を早期に解決できることの2つです。それぞれ具体的にみていきましょう。
相手車の損害を賠償しなくて済む
自損自弁に合意すると、原則として、相手方の車両修理代などを賠償する必要がなくなります。
通常、交通事故で自分にも過失がある場合には、相手方に生じた損害のうち、自分の過失割合に応じた金額を賠償する必要があります。
たとえば、自分の過失割合が30%で、相手方の車両修理代が20万円だった場合、通常であれば6万円を相手方に賠償することになります。
これに対し、自損自弁では双方が互いに請求しないため、相手方の修理代などを負担せずに解決できます。自分にも一定の過失がある事故では、この点が自損自弁の大きなメリットといえるでしょう。
簡易迅速に解決できる
自損自弁は、双方が合意すれば、比較的早期に解決できる方法です。
交通事故の示談交渉では、過失割合や損害額をめぐって意見が対立し、解決までに時間がかかることがあります。特に物損事故で損害額が少額な場合は、過失割合や損害額を細かく争っても、得られる金額に対して交渉の手間が見合わないことも多いものです。
自損自弁では、双方が相手方に請求しない形で解決するため、相手方に請求できる金額を細かく確定する必要がありません。その結果、過失割合や損害額をめぐる争点を減らすことができ、示談交渉をスムーズに進めやすくなります。
過失割合をめぐる交渉が長引いている場合や、双方の請求額に大きな差がない場合には、自損自弁によって早期解決を図れることがあります。
自損自弁のデメリット
自損自弁には、注意すべきデメリットもあります。
主なデメリットは、自分の損害を自己負担しなければならないことと、いったん合意すると原則として後日の請求はできないことです。
自車の損害は自己負担
自損自弁の最大のデメリットは、自分の車両修理代などを自己負担しなければならない点です。
自損自弁に合意すると、原則として相手方に対して修理代などを請求できなくなります。そのため、本来であれば相手方から賠償を受けられた可能性がある金額についても、自分で負担することになります。
たとえば、自分の過失割合が20%、相手方の過失割合が80%と考えられる事故では、通常であれば、自分の修理代の多くを相手方に請求できる可能性があります。
このようなケースで安易に自損自弁へ応じると、本来受け取れたはずの賠償を取りこぼしてしまうおそれがあるのです。
また、事故によってけがをしている場合には、治療費、休業損害、慰謝料などの人身損害も問題になります。
自損自弁は主に物損事故で用いられますが、示談書に「今後、お互いに一切の請求をしない」という文言(清算条項)があったり、このような意味で口頭で合意してしまうと、人身損害(治療費や慰謝料など)の請求権まで失ってしまう重大なリスクがあります。
トラブルを防ぐためにも、書面に「本合意は物損に関するものに限り、人身損害は含まない」という趣旨を明記する、担当者に伝えることが重要です。
不透明感が残る
自損自弁では、双方が相手方に請求しない形で解決するため、損害額や過失割合を細かく確定しないまま示談することがあります。
そのため、あとから振り返ったときに、「本来なら相手方にいくら請求できたのか」「提示された内容は妥当だったのか」がわかりにくくなりがちです。
なお、示談はいったん成立すると、原則としてあとから一方的に撤回することはできません。あとから「修理費が思ったより高かった」「過失割合について別の事情が分かった」といった場合でも、すでに自損自弁で合意していれば、相手方に追加で請求することは原則としてできません。
もっとも、事故当時には予想できなかった後遺障害が後日判明した場合など、例外的に後日の請求が問題となるケースもあります。実際に請求できるかどうかは、示談書の記載内容、合意の対象、事故後の経過、症状の内容など、個別事情によって異なります。
よくある質問
最後に、自損自弁や過失割合についてよく寄せられる質問にお答えします。
過失割合に納得できない場合はどう反論する?
過失割合に納得できない場合は、まず保険会社に対し、提示された過失割合の根拠を確認しましょう。
そのうえで、ドライブレコーダーの映像、事故現場の写真、警察官などが作成した刑事記録、目撃者の証言など、事故状況を裏付ける資料を整理します。
過失割合は、過去の類似事例や事故状況をもとに判断されます。保険会社の提示に納得できない場合は、証拠や類似事例をもとに反論することが大切です。
判断に迷う場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談してみてください。
過失割合に納得できない場合の手続きはどうなる?
過失割合に納得できない場合は、まず保険会社に対し、証拠や類似事例をもとに反論します。
それでも合意できない場合は、事案によっては交通事故紛争処理センターなどの第三者機関を利用し、話し合いによる解決を目指す方法があります。さらに解決が難しい場合には、民事裁判で過失割合や損害額について判断を求めることになります。
どの手続きを選ぶべきかは、事故状況、損害額、証拠の有無によって異なります。自損自弁に応じるべきか、過失割合を争うべきか迷ったときは、弁護士に相談して方針を確認するとよいでしょう。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
自損自弁は、双方が相手方に請求せず、それぞれ自分の損害を負担する形で交通事故を解決する方法です。過失割合や損害額をめぐる争いを避け、早期解決につながることがあります。
一方で、自損自弁に合意すると、原則として相手方に損害賠償を請求できなくなります。自分の過失割合が小さい場合や、自車の修理費が大きい場合には、不利な内容となる可能性があるため注意が必要です。
また、保険会社が示談交渉を代行する場合でも、提示された内容がご自身にとって良い内容とは限りません。提示された条件が妥当かどうか分からない場合は、合意する前に弁護士へ相談することをおすすめします。
よつば総合法律事務所では、交通事故に関するご相談を受け付けています。今後について迷っている方は、お気軽にご相談ください。

- 監修者
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弁護士 粟津 正博













