過失割合が10対0になる場合

最終更新日:2026年07月14日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q過失割合が10対0になるのはどのような場合ですか?

交通事故において、相手方だけに不注意があり、被害者には事故を避けようがなかったときには、過失割合が10対0と判断されることがあります。

たとえば、停止中の車への追突、相手方の赤信号無視、センターラインオーバーによる事故などが代表例です。

ただし、同じ事故でも道路の状況や双方の動きによって過失割合は変わります。提示された割合に疑問があるときは、自己判断で受け入れる前に、弁護士に確認することをおすすめします。

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過失割合とは

過失割合とは、交通事故が起きた責任が、加害者と被害者にどのくらいあるかを割合で示したものです。

「10対0」は、加害者に100%の責任があり、被害者には責任がない状態を指します。

「8対2」なら、加害者に80%、被害者に20%の責任があるという意味です。

過失割合の重要性

過失割合は、被害者が受け取れる賠償金の額に直接影響します。

交通事故において、被害者にも過失があると判断されると、その割合の分だけ賠償金が減るからです。このしくみを「過失相殺」といいます。

たとえば、被害者の損害が1000万円と認められたとします。

被害者に2割の過失があると判断されると、受け取れる金額は800万円に減ります。もし過失が1割に下がれば、受け取れる金額は900万円になります。

このように、過失割合が1割変わるだけで、受け取れる金額は大きく変わります。

だからこそ、過失割合は交渉において重要な争点になります。

過失割合の決め方

過失割合は、過去の裁判例の積み重ねをもとに判断されます。

実務では、事故の類型ごとに基本となる過失割合を定めた認定基準が参考にされています。

代表的なものが「別冊判例タイムズ39号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂6版)」です。保険会社も裁判所も、この基準をベースにしながら、具体的な事故状況に応じて過失割合を判断していきます。

過失割合を決める流れは、おおまかに次のとおりです。

  1. 事故の状況を類似する事故類型に当てはめ、基本となる過失割合を確認する
  2. 速度違反、見通しの悪さ、合図の有無など、個別事情を踏まえて割合を増減する

このように、基本となる過失割合を調整する個別事情を「修正要素」といいます。

過失割合の判断では、一般に、自動車よりもバイクや自転車、さらに歩行者のほうが保護されやすい傾向があります。歩行者やバイク・自転車の運転者は、自動車の運転者に比べて事故時のダメージを受けやすいためです。

そのため、相手が歩行者やバイクである場合には、自動車側に、より慎重な運転や安全確認が求められます。

車同士の事故で過失割合が10対0になるケース

車対車の追突事故

では、どのような事故で過失割合が10対0になるのでしょうか。まずは、車同士の事故から見ていきましょう。

車同士の事故では、双方の車が動いていることも多く、被害者側にも一定の過失があると判断されるケースも少なくありません。

ただし、事故の原因が一方の運転にあり、もう一方には事故を避けることが難しかったといえる場合には、過失割合が10対0と評価されます。

10対0になる代表的なケースは、①追突事故、②赤信号無視、③センターラインオーバーの3つです。それぞれのケースについて見ていきましょう。

① 追突事故

信号待ちや渋滞などで停止している車に、後方から追突された事故では、過失割合が10対0になりやすいといえます。停止している車は、後方からの追突を避けようがないためです。

走行中に後方から追突された場合でも、前方の車に急ブレーキや不自然な進路変更などの落ち度がなければ、後続車側に100%の責任が認められます。

一方で、前方の車が理由もなく急ブレーキをかけた場合や、危険な進路変更をした直後に追突された場合などには、前方の車にも一定の過失が認められることがあります。

② 赤信号無視

相手が赤信号を無視して交差点に入り、青信号で進行していた車と衝突した事故でも、過失割合が10対0になりやすいです。

青信号に従って進行している側は、通常、相手が赤信号を無視して交差点に入ってくることまで予測して運転する義務はありません。

そのため、赤信号無視が事故の原因であり、青信号で進行していた側に特別な落ち度がなければ、相手方に全面的な責任が認められやすくなります。

③ センターラインオーバー

対向車がセンターラインを越えて自分の車線に入り、正面衝突などを起こした事故も、過失割合が10対0と判断されやすいです。

自分の車線を正しく走っていた側からすると、対向車が突然車線を越えてくることを避けるのは難しいためです。

そのため、センターラインを越えたことが事故の原因であれば、対向車側に全面的な責任が認められやすくなります。

ただし、自分にも速度の出しすぎや前方不注意などがある場合には、修正要素として一定の過失が認められることもあります。

車とバイク・自転車の事故で過失割合が10対0になるケース

車とバイクの追突事故

車とバイク、車と自転車の事故でも、状況によっては過失割合が10対0になります。

バイクや自転車は、自動車に比べて事故時に身体へ直接被害を受けやすい乗り物です。そのため、車側には、より慎重な運転や安全確認が求められます。

もっとも、バイクや自転車にも交通ルールを守る義務があります。信号無視や急な進路変更、無理なすり抜けなどがあれば、バイク・自転車側にも過失が認められることがあります。

追突・赤信号無視・センターラインオーバー

バイクや自転車が被害者になる事故でも、追突、赤信号無視、センターラインオーバーでは、車同士の事故と同じ考え方が当てはまります。

たとえば、信号待ちで停止しているバイクや自転車に車が追突した場合、停止していた側が事故を避けることは困難です。

また、車が赤信号を無視して交差点に進入した場合や、センターラインを越えてバイク・自転車側の走行部分に入ってきた場合も、被害者であるバイク・自転車側が事故を回避するのは難しいといえます。

こうしたケースでは、バイク・自転車側に特別な落ち度がなければ、過失割合が10対0となりやすいです。

追い越し後の左折

車がバイクや自転車を追い越した直後に左折し、巻き込むように衝突する事故でも、車側の過失が重くなることがあります。

車の運転者は、左折するときに、左後方から進行してくるバイクや自転車がないかを確認しなければなりません。

特に、左折する直前にバイクや自転車を追い越している場合は、左折時に巻き込む危険を予測し、十分に安全確認をする必要があります。交差点やその手前30メートル以内では、原則として追い越しが禁止されている点にも注意が必要です。

それにもかかわらず、車側が安全確認を怠って左折した場合には、車側に大きな責任が認められます。事故の状況によっては、バイク・自転車側の過失がゼロと判断されることもあります。

車と歩行者の事故で過失割合が10対0になるケース

横断歩道での人対車の事故

歩行者が交通ルールに従って通行していたにもかかわらず、車側の不注意で事故が起きた場合には、過失割合10対0を主張できる可能性があります。

歩行者は、車両に比べて事故時の被害が大きくなりやすく、車の運転者には歩行者の安全に配慮した運転が求められるためです。

特に、①横断歩道上の事故や、②歩車道の区別がない道路を右側通行していた歩行者との事故では、歩行者に過失がないと判断されやすいです。

① 横断歩道を歩行中の事故

歩行者が横断歩道を通行中に車にはねられた事故は、過失割合が10対0となりやすい典型例です。

車の運転者には、横断歩道に近づくとき、横断しようとする歩行者がいないかを確認し、必要に応じて停止できるように進行する義務があります。

そのため、歩行者が信号や横断歩道のルールに従って渡っていたにもかかわらず、車が安全確認を怠って衝突した場合には、過失割合10対0になりやすいです。

一方で、歩行者が赤信号で横断していた場合や、車の直前に飛び出した場合などには、歩行者側にも一定の過失が認められやすいです。

② 歩車道の区別がない道路の右側を歩く歩行者

歩道と車道の区別がない道路では、歩行者は道路の右側端に寄って通行するのが原則です。

歩行者がこのルールに従って右側端を歩いていたにもかかわらず、車が前方不注意などで衝突した場合には、過失割合10対0になりやすいです。

一方で、歩行者が道路の中央付近を歩いていた場合や、ふらつきながら歩いていた場合、夜間に車から見えにくい状態で歩いていた場合などには、歩行者側にも一定の過失が認められやすいです。

なお、実務上は、道路の「左側端」に寄って歩行者が通行していた場合も、左側通行と事故との因果関係がないということで歩行者の過失がゼロとなる事案が多いです。

過失割合の交渉方法

ここまで見てきたケースに当てはまりそうでも、自動的に過失割合10対0となるわけではありません。実際の過失割合は、相手の保険会社との交渉で決まることが多く、最初に提示された割合が被害者にとって不利な内容になっていることもあります。

提示された過失割合に納得できない場合は、そのまま受け入れる必要はありません。ここでは、過失割合10対0を主張したいときの交渉のポイントを解説します。

修正要素によって過失がゼロになる可能性あり

基本の過失割合が10対0でなくても、修正要素しだいで、被害者側の過失が認められない方向に修正できることがあります。

たとえば、相手に著しい速度違反や脇見運転などの大きな落ち度がある場合です。

また、相手の急な割り込みや危険な進路変更によって事故が起き、自分には避けようがなかったといえる場合にも、過失割合10対0を主張できる余地があります。

主張の裏づけとして、次のような証拠が役立ちます。

こうした証拠をもとに、事故状況や相手方の落ち度を具体的に示すことができれば、過失割合の交渉を有利に進められます。

過失ゼロを主張する場合、自らの保険会社は関与しない

被害者が過失割合10対0を主張するときに注意したいのが、自分が加入する保険会社の示談代行サービスを利用できないという点です。

被害者にも過失がある事故では、自分が加入する任意保険の担当者が、代わりに相手と示談交渉を進めてくれます。自動車保険の対人賠償保険には、このような示談代行サービスが付いていることが一般的だからです。

ところが、被害者に過失がまったくないときは、この代行を頼めません。

被害者側に過失がまったくない事故では、ご自身の保険会社が相手に保険金を支払う必要がありません 。このようにご自身の保険会社が金銭的な当事者にならない事故において、他人の代わりに示談交渉を行うことは、法律(弁護士法)で禁止されているためです。

つまり、過失割合10対0を主張するケースでは、相手方保険会社とのやり取りや、示談金額の交渉を、被害者自身で行わなければなりません。

とはいえ、相手の保険会社と直接交渉するのは、大きな負担です。相手方の保険会社は知識も経験も豊富なため、気づかないうちに不利な内容で示談してしまうおそれもあるでしょう。

そのようなときは、弁護士に交渉を任せるのがおすすめです。被害者の負担を軽減できるだけでなく、弁護士が介入することで、賠償金の増額も期待できます。弁護士費用については、ご自身やご家族の保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、多くの場合、自己負担を抑えて弁護士に依頼できます。

弁護士費用特約がない場合でも、ケースによっては、弁護士に依頼するメリットがある場合もあります。費用倒れ(獲得できる賠償金よりも弁護士費用のほうが高くなってしまうこと)にならないかを含めて、相談時に確認しておくと安心です。

よくあるご質問

過失割合10対0を主張していても、相手方や相手方の保険会社から「被害者にも過失がある」と言われることがあります。提示された過失割合に納得できない場合は、根拠を確認したうえで反論することが大切です。

ここでは、過失割合10対0を主張したい方からよくあるご質問にお答えします。

過失割合に納得できない場合はどう反論する?

相手方の保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、まず、提示された割合の根拠を確認しましょう。

そのうえで、事故状況に近い過去の裁判例や、ドライブレコーダー、警察が作成した資料、目撃者の証言などの客観的な証拠をもとに反論します。

また、速度違反や前方不注意、危険な進路変更など、基本の過失割合を修正すべき事情がないかを確認することも大切です。

過失割合に納得できない場合の手続きはどうなる?

相手方の保険会社と交渉しても過失割合について合意できない場合は、別の手続きを検討することになります。

たとえば、交通事故紛争処理センターなどの第三者機関を利用する方法や、裁判で過失割合を争う方法があります。

どの手続きが適しているかは、事故状況、証拠の有無、損害額、相手方の主張内容などによって異なります。

迷った場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

交通事故で過失割合が10対0になるのは、相手方だけに落ち度があり、被害者には事故を避けることが難しかったといえるケースです。

停止中の車への追突事故、相手方の赤信号無視、センターラインオーバーなどは、過失割合10対0を主張しやすい代表的な事故といえます。

もっとも、過失割合は事故の種類だけで決まるものではありません。

同じように見える事故でも、信号の色、車の速度、道路の見通し、双方の動きなどによって、実際の判断は変わります。相手方の保険会社から「被害者にも過失がある」と言われた場合でも、その割合が正しいとは限りません。

提示された過失割合に納得できないときは、事故状況や証拠を確認し、必要に応じて反論することが大切です。

また、過失割合10対0を主張する場合は、被害者側の保険会社に示談交渉を任せられないことがあります。相手方の保険会社と直接交渉することに不安がある場合や、提示された賠償金額に疑問がある場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

よつば総合法律事務所は、今までに交通事故の被害者の方を多数サポートしてきました。「自分には過失がないはずなのに、相手方から過失があると言われている」「提示された過失割合に納得できない」という方は、お気軽にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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