過失割合9対0(片側賠償)の意味
最終更新日:2026年09月01日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q過失割合9対0(片側賠償)とはどういう意味ですか?
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過失割合9対0(片側賠償)とは、被害者にも1割の過失がある事故で、加害者側が被害者への1割分の請求を放棄する解決方法です。賠償金を支払うのが加害者側だけになるので、片側賠償と呼びます。
被害者は相手方の支払いをせずに済み、自分の保険を使わない分、保険料の負担増を避けられる可能性があります。
ただし、被害者の過失が0になるわけではなく、受け取る賠償金は1割減額されたままです。仕組みを知らないまま合意すると、思わぬ形で損をするおそれがあります。

目次

過失割合とは
過失割合とは、交通事故が起きたことについて、当事者それぞれにどれくらいの責任があるかを割合で表したものです。
たとえば「加害者8割、被害者2割」のように、双方の不注意の程度を数字で示します。
被害者にも過失があるときは、その割合の分だけ、受け取れる賠償金が減ります。これを過失相殺といいます。
たとえば損害額が100万円で被害者の過失が2割なら、受け取れるのは80万円です。
過失割合は、事故の状況や道路の形状、信号の色、双方の速度などをもとに決まります。過去の裁判例を整理した基準を参考にしつつ、個別の事情で調整することが多いです。
保険会社が最初に提示する過失割合が、そのまま正しいとは限りません。納得できないときは、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの証拠をもとに交渉できる可能性があります。
過失割合9対0の意味
過失割合9対0は、通常の「9対1」とも「10対0」とも異なる、少し特殊な解決方法です。
「足しても10にならない過失割合があるの?」と、保険会社から提示されて戸惑う方もいるでしょう。しかし、「9対0」は、交通事故の示談交渉で使われる解決方法のひとつです。
過失割合9対0とは
通常、過失割合が9対1のときは、お互いに相手方の損害を賠償します。
加害者は被害者の損害の9割を支払います。同時に、被害者も加害者の損害の1割を支払うのが原則です。
たとえば被害者の損害が100万円、加害者の損害が50万円だったとします。
過失割合が9対1であれば、被害者は90万円(100万円×90%)を受け取り、加害者に5万円(50万円×10%)を支払う計算です。
これに対して過失割合9対0は、被害者が受け取る賠償金を1割減額する一方で、被害者から加害者への支払いをなくすという合意による解決方法です。つまり、被害者は90万円を受け取り、加害者には支払いはしません。
片側賠償とは
片側賠償とは、加害者だけが賠償金を支払い、被害者は支払いをしない解決方法です。
過失割合9対0は、片側賠償の代表的な例です。
被害者の損害については1割を減額する一方、加害者側は、被害者側に対する損害賠償請求をしないという当事者間の合意によって成立します。事故の状況によっては、「85対0」や「80対0」といった形で合意することもあります。
示談書では、「9対0」や「90対0」と記載するほか、「被害者は加害者に対して損害賠償義務を負わない」などの条項を設けることがあります。
被害者の損害100万円、加害者の損害50万円の例で、過失割合10対0、9対1、9対0の違いを表で整理すると、次のようになります。
| 過失割合 | 10対0 | 9対1 | 9対0 |
|---|---|---|---|
| 受取金額 | 100万円 | 90万円 | 90万円 |
| 支払金額 | 0円 | 5万円 | 0円 |
| 手元に残る金額 | 100万円 | 85万円 | 90万円 |
過失割合9対0が検討されるケース
過失割合9対0が検討されるのは、過失割合について双方の合意が取れないときが多いです。
被害者は「自分に過失はない(10対0)」と考え、加害者側は「被害者にも1割の過失がある(9対1)」と主張して対立したとします。どちらも譲らないまま交渉を続けると、解決までに時間がかかります。
そこで、お互いが少しずつ譲る折衷案として、9対0での解決が提案されることがあります。9対0は、被害者にとっては9対1より有利で、加害者側にとっては10対0より負担が軽いため、双方が受け入れられる解決案になることがあるのです。
過失割合9対0で解決するメリット
では、9対0で合意すると、被害者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
加害者に支払う賠償額が0になる
1つ目のメリットは、加害者への支払いがなくなることです。
過失割合9対1で解決すると、被害者は加害者の車の修理費などの1割を負担します。9対0の合意ができれば、この支払いが不要になります。
相手方の修理費が高額な場合はもちろん、支払う金額が少額であっても、自己負担をなくせる点はメリットです。
保険料が上がらない
2つ目のメリットは、翌年以降の保険料の負担増を避けられる可能性があることです。
過失割合9対1で解決すると、被害者は加害者の損害の1割を賠償しなければなりません。そのために対物賠償保険を使うと、多くの保険では等級が下がります。等級が下がると、翌年から数年間、保険料の負担が増えるのが一般的です。
過失割合9対0で解決し、相手方への賠償のために保険を使わずに済めば、等級は下がらず、保険料の負担増を避けられます。
ただし、自らの車両保険を利用すると保険料が原則として上がりますのでご注意ください。
早期解決
3つ目のメリットは、早期解決の可能性が上がるということです。
過失割合が10対0か9対1かで争い続けると、交渉が長引きます。場合によっては調停や裁判まで進み、解決までに1~2年以上かかることもあります。
過失割合9対0はお互いが歩み寄る解決方法なので、双方が納得すれば、交渉を早く終えられることが多いです。
事故対応の精神的な負担から早く解放されたい方にとって、有効な選択肢のひとつになります。
過失割合9対0で解決するデメリット
一方で、過失割合9対0にはデメリットもあります。合意する前に、次の2点を確認しておきましょう。
自身の1割分の損害の賠償を受け取れない
過失割合9対0で合意すると、被害者は自分の損害のうち1割分を受け取れません。
受け取れる金額が9割になる点は9対1のときと同じで、10対0と比べて1割少なくなることが、この解決方法の注意点です。
たとえば自分の車の修理費が50万円なら、受け取れるのは9割の45万円(50万円×90%)です。残りの5万円は自己負担になります。
物的損害を9対0で合意すると、人的損害も9割の賠償となる可能性が高い
車の修理費などの物的損害(物損)と、治療費や慰謝料などの人身損害(人損)は、示談を別々に進めることが多いです。そして、物損と人損の過失割合は、多くの事案で同じになります。
そのため、物損について9対0で合意すると、その後の人損の交渉でも、1割の過失を前提として賠償額が算定される可能性があります。人損は金額が大きくなりやすい分、1割の減額の影響も大きいです。
もっとも、物損で合意した過失割合が、人損の示談や裁判を法的に当然拘束するわけではありません。個別の事情によっては、人損について別の過失割合を主張できる余地もあります。
よくある質問
最後に、過失割合9対0(片側賠償)について、よくある質問にお答えします。
片側賠償を法的に強制できる?
片側賠償を相手方に強制することは難しいです。片側賠償は法律上の制度ではなく、当事者間の合意によって初めて成立するからです。
裁判所が判決を出すときは、認定した過失割合にもとづいて、双方の損害額を計算します。被害者側に1割の過失を認めながら、その賠償義務だけを免除する判決を裁判所がすることはありません。
そのため、相手方が同意しない限り、9対0での解決はできません。
なお、9対0で合意できたときは、口約束で終わらせず、示談書などの書面に残しておきましょう。書面がないと、あとから相手方に1割分を請求されてトラブルになるおそれがあります。
過失0を主張すると自分の保険会社は交渉に関与できない?
自分に過失がまったくない(10対0)と主張するときは、自分の任意保険会社に示談交渉を任せられません。保険会社が示談を代行できるのは、契約者が相手方に賠償金を支払う可能性がある場合に限られます。
これは、弁護士でない者が他人のために示談交渉をすることを、弁護士法という法律が原則として禁止しているためです。
一方、9対0を目指す交渉は、「被害者にも1割の過失がある」ことを前提に進めます。交渉の時点では、9対1で示談がまとまって被害者が相手方に賠償金を支払う可能性も残っています。そのため、自分の保険会社の示談交渉サービスを利用できることがあります。
ただし、利用できるかどうかは保険契約の内容や保険会社の対応によりますので、保険会社の担当者に確認してみましょう。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
過失割合9対0(片側賠償)は、被害者に1割の過失を認めつつ、被害者から加害者への支払いをなくす合意による解決方法です。
保険を使わずに済み、保険料の負担増や長期の争いを避けられるメリットがあります。一方で、自分の損害の1割を受け取れず、人損の賠償にも影響する可能性があるという点に注意が必要です。
保険会社から過失があると言われて納得できないとき、示談書へのサインを迷っているときは、その前に弁護士へ相談することをおすすめします。
よつば総合法律事務所では、交通事故の被害者の方からのご相談をお受けしています。過失割合でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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