弁護士費用特約
最終更新日:2025年05月27日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

交通事故に遭って、「弁護士に相談したい、依頼したい……。でも費用が心配」と感じている方は少なくありません。そんなときに頼りになるのが、弁護士費用特約です。
この特約に加入していれば、弁護士への相談料や依頼費用を、保険会社が代わりに負担してくれます。費用の負担を気にせずに、法的なアドバイスや交渉の代理を依頼できるため、精神的にも大きな支えとなります。
とはいえ、「この特約はどんなときに使えるの?」「誰が対象になるの?」「そもそも本当に必要なの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、弁護士費用特約の基本的な仕組みから、利用できるケース、対象者、メリット・デメリット、手続きの流れや注意点まで、わかりやすく解説します。
ご自身やご家族の万が一に備えて、ぜひ最後までご覧ください。

目次
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、交通事故などのトラブルで弁護士に相談や依頼する際の費用を保険会社が代わりに払ってくれる保険のしくみです。
「弁護士特約」や「弁護士費用保険」とも呼ばれ、自動車保険や火災保険などに、少しの保険料をプラスするだけでつけられます。
この特約には2つのタイプがあります。
ひとつは、交通事故にだけ使えるタイプです。もうひとつは、日常生活で起きた法律トラブル(たとえば近所の人とのもめごとなど)にも使えるタイプです。
普段は使う機会が少ないかもしれませんが、いざというときにあると安心できる補償です。保険に入るときは、弁護士費用特約の有無や内容もチェックしておくとよいでしょう。
弁護士費用特約を使える事故の種類
では、どういった事故で弁護士費用特約が利用できるのでしょうか。
弁護士費用特約が使える事故の種類は以外と多いです。ここでは、弁護士費用特約が使える事故のパターンを、わかりやすくご紹介します。
-
人がけがをしている事故(人身事故)
まずは、けがをしたケースです。次のような事故では、弁護士費用特約を使えることが多いです。
【自動車やバイクにぶつけられた場合の例】- 車に乗っていたときに、後ろから追突された
- 道を歩いていたら、車やバイクにぶつけられた
- 自転車に乗っているときに車とぶつかった
このように、自分が悪くない状況でけがをした場合、ほとんどのケースで特約が使えます。
【他人の車に乗っていてけがをした場合の例】- タクシーやバスに乗っていて事故にあった
- 友人が運転する車に乗っていて、事故でけがをした
自分が運転していない場合でも、多くの保険では特約が使えます。ただし、保険の内容によっては対象外になることもあるので、心配なときは保険会社に確認しましょう。
-
物が壊れた事故(物損事故)
けがはなかったけど、大切なものが壊れてしまった。そんな事故でも特約が使えることがあります。
例を見てみましょう。
- 自転車に乗っていて車と接触し、自転車が壊れた
- 車が自宅の塀にぶつかって壊された
- 自動車同士が接触し、ドアにキズがついた
特約があれば、けがはなく物だけが壊れた場合でも、相手と話がまとまらないときなどに、弁護士に相談や依頼ができます。
弁護士費用特約を使える人の範囲
弁護士費用特約は、保険に入っている本人だけでなく、家族や車に乗っていた人なども使えることがあります。自分が契約していなくても、条件を満たしていれば補償の対象になる可能性があるのです。
一般的には、次のような人が対象です。
- 配偶者(夫や妻)
- 同じ家に住んでいる家族(たとえば両親や兄弟姉妹)
- 別の家に住んでいても未婚の子ども
- 保険の契約車に同乗していた人(友人など)
実際の例を見ながら確認してみましょう。
-
ケース①
夫婦でそれぞれ車を持っていて、夫の保険に弁護士費用特約がついている。
妻は自分の車を運転中に事故にあった。この場合でも、夫の弁護士費用特約が使える可能性があります。
夫の車に乗っていなくても、配偶者であれば対象になることが多いからです。 -
ケース②
親が保険に加入していて、その保険に弁護士費用特約がある。
子どもが歩いているときに車にはねられた。歩行中の事故でも、子どもが対象になることがあります。また、未婚の親の子どもでも、特約の補償を受けられる可能性があります。
-
ケース③
自分が車を運転していて、友人を乗せていたときに事故にあった。
この場合、車に同乗していた友人も特約の対象になることがあります。
友人がけがをした場合、その人の弁護士費用も保険でカバーできるかもしれません。
弁護士費用特約は、さまざまなケースで活用できる制度です。事故にあったら、「自分が契約していないから無理だ」と決めつけず、まずは保険の内容を確認してみましょう。
弁護士費用特約で補償される金額
弁護士費用特約では、弁護士費用の上限が決まっています。
多くの保険では、1つの事故につき1人あたり、次のような金額が補償されます。
項目 | 補償される金額 (1人・1事故あたり) |
---|---|
弁護士費用 | 最大300万円まで (着手金・成功報酬・実費などを含む) |
法律相談費用 | 最大10万円まで |
補償の対象には、弁護士への着手金・成功報酬・訴訟費用・調停や示談交渉の費用・実費などが含まれます。たとえ相談だけで終わったとしても、10万円までは保険で補償されるため安心です。
なお、交通事故で弁護士費用が300万円を超えることはめったにありません。そのため、ほとんどのケースで特約の範囲内に収まるのが一般的です。
ただし、保険会社によって条件や上限額が異なることもあるので、自分の加入している保険証券を確認することが大切です。
特約を使うメリット・デメリット
では、弁護士費用特約を利用することによって、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。
特約を使うメリット
弁護士費用特約を使うメリットは、大きく分けて3つあります。
① 弁護士費用を気にせず相談や依頼ができる
まず1つ目は、弁護士にかかる費用を気にせずに相談や依頼ができることです。
通常、弁護士に相談したり依頼したりすると数十万円~百万円以上の費用がかかることもあります。
しかし、弁護士費用特約があれば、その費用を保険会社が負担してくれるため、自己負担はほぼゼロになります。
多くの保険では上限が300万円ですが、交通事故の示談でそこまで費用がかかるケースはほとんどありません。
② 増額した賠償金をそのまま受け取れる
2つ目のメリットは、増額された賠償金をそのまま受け取れることです。
弁護士に交渉を任せると、慰謝料などの賠償金が増える可能性があります。通常なら、そこから弁護士費用を差し引いて受け取ることになりますが、特約を使えば費用は保険会社が払ってくれるので、増えた分をそのまま自分のものにできます。
③ 自分に合った弁護士を選べる
そして3つ目は、自分に合った弁護士を選べることです。
弁護士費用特約の多くは、法律相談費用も10万円まで補償されるため、いくつかの事務所で相談してから、信頼できる弁護士を選ぶことができます。交通事故の経験がある弁護士を選べば、より安心して任せられるでしょう。
弁護士に依頼すること自体のメリット
弁護士費用特約を使えば費用の負担はなくなりますが、弁護士に依頼すること自体にもたくさんのメリットがあります。
まず、示談金が増額される可能性が高いことです。
保険会社が提示する金額は、独自の基準で計算されており、低めになることが多いです。
弁護士は「裁判所の基準」を使って交渉するため、より高い金額での示談が期待できます。
次に、面倒なやり取りを弁護士に任せられることです。
加害者側の保険会社との連絡や、資料の作成、書類のやり取りなどもすべて代行してもらえます。その分、被害者は治療や日常生活に集中できます。
また、後遺障害の等級認定の手続きもサポートしてもらえるのは大きな安心材料です。
後遺障害の等級が決まると受け取れる金額に大きく差が出るため、弁護士に資料作成や申請をサポートしてもらうことで、正当な評価が受けられる可能性が高くなります。
さらに、過失割合の交渉も有利に進めやすくなります。
事故の内容によっては、「自分にも落ち度があった」とされて賠償額が減ることがありますが、弁護士は証拠や過去の判例をもとに適切な過失割合を主張してくれます。
そして、疑問や不安をすぐに相談できる存在がいることも見逃せません。
「この治療費は請求できる?」「主婦でも休業損害をもらえる?」といった疑問にも、その都度丁寧に答えてくれるため、不安な気持ちを軽くしてくれます。
このように、弁護士費用特約を使えば、費用の負担なく弁護士に依頼でき、さらに、弁護士に任せることで示談金の増額や精神的な安心など多くのメリットを得ることができます。交通事故にあったとき、強い味方となる制度といえるでしょう。
特約を使うデメリット
弁護士費用特約には、これといったデメリットはありません。
よくある心配として、「使ったら保険の等級が下がって、次の保険料が高くなるのでは?」というものがあります。
しかし、安心してください。一般的な弁護士費用特約は、使っても等級が下がることはなく、保険料にも影響しないのが普通です。
ただし、すべてのケースで絶対に保険料が変わらないとは言い切れません。たとえば、車をたくさん所有している法人で契約している特約の場合には、使ったあとに保険料が上がることもあります。
保険料がどうなるかは、契約している内容によって異なります。不安なときは、保険会社に確認しておくと安心です。
特約を使う場合の流れ
弁護士費用特約を使いたいときは、手順を踏んで進める必要があります。
やることは大きく分けて4つです。
- 保険会社に特約が使えるか確認する
- 弁護士を探す
- 弁護士に相談して正式に依頼する
- 保険会社にもう一度連絡する
それぞれのステップを順番に見ていきましょう。
-
保険会社に特約が使えるか確認する
まず、自分が入っている保険会社に連絡し、「弁護士費用特約が使えるかどうか」を確認します。自動車保険だけでなく、火災保険などに弁護士費用特約がついていることもあるので、思い当たる保険をすべてチェックしましょう。
また、自分以外の家族が入っている保険に特約がついていれば、それを使える場合もあります。たとえば、同居している家族の保険を使えることがあります。
-
弁護士を探す
次に、相談する弁護士を探します。
多くの弁護士費用特約では、「法律相談の費用」もカバーされているため、まずは特約を使って相談だけでもしてみるとよいでしょう。
また、事務所によっては無料で相談を受け付けているところもあります。弁護士にも得意分野があるので、交通事故に詳しい弁護士を選ぶのがおすすめです。
-
弁護士に相談して正式に依頼する
弁護士に相談し、「この人に任せよう」と思ったら、正式に依頼します。そのとき、「弁護士費用特約を使いたい」と必ず伝えてください。その後のやり取りは、弁護士と保険会社の間で行われます。
-
保険会社にもう一度連絡する
最後に、保険会社にもう一度連絡します。どの弁護士に依頼するのか、費用特約を使いたいことをあらためて伝えてください。
ここで連絡を忘れてしまうと、後で保険金の支払いがスムーズにいかなくなることもあるので注意しましょう。
特約が役に立つ具体例
弁護士費用特約にはさまざまなメリットがありますが、特に次のような場面でその効果を発揮します。
-
けがが比較的軽い事故の場合
打撲やむちうちといった軽いけがでは、賠償金の金額がそれほど大きくならないことが多いです。
そのため、弁護士に依頼すると費用の方が高くなってしまい、「頼んでも損をするかも」と考えてしまう人もいます。
しかし、弁護士費用特約を使えば、費用を気にせず弁護士に相談できます。結果として、交渉がスムーズに進み、賠償金が増える可能性も出てきます。
-
自分にまったく非がない「もらい事故」の場合
信号待ち中に後ろから追突されたような「100%相手が悪い事故」では、自分の保険会社は示談交渉を代わってくれません。これは、被害者側の保険会社が交渉すると「弁護士法違反」になってしまうからです。
つまり、自分に過失がない事故では、相手の保険会社や加害者本人と、自分で話し合わなければならなくなります。しかし、法律や交渉に慣れていない人が相手と直接話すのは不利になりがちです。
そんなときこそ弁護士費用特約の出番です。費用を気にせず、弁護士にすべて任せられます。その結果、正当な金額の賠償金を受け取れる可能性がぐっと高くなります。
-
保険会社が提示する金額や過失割合に納得できないとき
相手の保険会社から提示された示談金や「あなたにも〇%の過失がありますよ」といった内容に不満があるとき、弁護士に相談すれば有利に交渉できる可能性があります。
弁護士は、事故状況を調べ直して過失割合の見直しを提案したり、裁判でも使われる「裁判所の基準」での賠償金を主張します。その結果、提示された金額よりも多くの賠償金が認められることがあります。
-
加害者が任意保険に入っていないとき
もし加害者が保険に入っていなかった場合、損害賠償の請求はすべて加害者本人に直接行わなければなりません。しかし、加害者との話し合いがうまくいかなかったりすると、交渉が進まないどころか、支払い自体がされない可能性もあります。
そんなときに弁護士費用特約を使えば、弁護士が間に入り、手続きや話し合いを進めてくれます。自分だけで抱え込まずに済む、心強いサポートです。
よくある質問
ここでは、弁護士費用特約に関するよくあるご質問にお答えしています。何かのヒントになれば幸いです。
弁護士特約は家族でも使えますか?
はい。弁護士費用特約は契約者本人だけでなく、家族や同乗者も使えることが多いです。
一般的には、次のような人が対象になります。
- 保険に入っている本人の配偶者(夫や妻)
- 同じ家に住んでいる親や子どもなどの家族
- 別々に暮らしている未婚の子ども
たとえば、夫の保険に特約がついていて、妻が自分の車で事故にあった場合でも、夫の特約が使えるケースがあります。また、子どもが実家を出て一人暮らしをしている場合でも、未婚であれば親の保険が使える可能性があります。
ただし、保険会社によって細かな条件が異なることがあります。実際に使えるかどうかは、保険証券や契約内容をよく確認するか、保険会社に問い合わせて確認しておきましょう。
弁護士特約が使えない事故はどのような事故ですか?
弁護士特約が使えない可能性があるのは、次のような事故の場合です。
- 自転車同士、歩行者同士などの事故(車・バイクが関係ない場合)
- 仕事中に起きた事故
- 飲酒運転・無免許運転など重大な違反がある
- 自分が100%悪い事故(過失割合が10割)
- 親や同居の家族など「身内」への損害賠償請求
- 業務用の車(営業車など)に乗っていたときの事故
- 地震や台風など自然災害による事故
このようなケースでは、弁護士費用特約に加入していたとしても保険は使えないことが多いです。実際に使えるかどうかは、保険会社に問い合わせて確認しておきましょう。
保険会社から特約を使えないと言われましたが本当でしょうか?
保険会社に「弁護士費用特約は使えません」と言われた場合でも、実際には使えるケースが少なくありません。
たとえば、「軽いけがだから必要ない」「物損事故では使えない」と説明されても、相手との示談でもめている状況であれば、弁護士費用特約を使える可能性があります。
また、「弁護士をつけても意味がない」といった説明を受けた場合も、保険会社側が費用負担を避けたいという意図で言っているだけということもあり、うのみにするのは危険です。
ただし、いくつかの明確な例外もあります。
たとえば、事故発生後に特約を付けた場合や、そもそも特約の対象外となる事故では、利用することはできません。
それ以外のケースでは、契約内容や事故の状況によって判断が分かれることも多く、「本当に使えないのかどうか」を慎重に確認することが大切です。
保険会社に詳細な理由を尋ねたうえで、保険証券や約款を読み直し、不安が残る場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
自らに過失があっても特約を使えますか?
自分に過失がある事故でも、弁護士特約は基本的に使えます。
たとえば、信号を見落としたり、交差点でぶつかってしまったような事故でも、相手に損害賠償を求める立場であれば、弁護士特約を使える可能性があります。
ただし、次のような重大な過失があるケースには使えないことがあるので注意が必要です。
- 自分が100%悪いとされる事故(相手に請求できない場合)
- 飲酒運転や無免許運転をしていた
- 薬を使っていて正常な運転ができない状態だった
- あきらかに危ない行動をした(「わざとに近い運転」)
こういった行動は、「故意」や「重大な過失」と判断され、特約の対象外となることがあります。
歩行中の事故でも特約を使えますか?
歩行中の事故でも、条件によっては弁護士費用特約を使えます。
たとえば、歩いているときに車やバイクにぶつかられた場合は、多くの自動車保険の特約が使える対象です。このように、「相手が車やバイクなどの運転中で、自分が歩行者」というパターンであれば、特約が適用されることが多いのです。
ただし、歩行者同士の事故の場合は注意が必要です。このようなケースは、一般的な自動車保険の弁護士特約では補償の対象外になることがあります。
とはいえ、特約の中には「日常生活のトラブル」にも対応しているタイプもあります。
このような広い範囲をカバーする特約に入っていれば、歩行者同士や自転車との事故でも使える場合があります。
自転車運転中の事故でも特約を使えますか?
相手が車やバイクの場合なら、自転車に乗っていても特約を使えることがあります。
たとえば、自転車で走っていたときに車にぶつけられたという事故では、自動車保険に付いている弁護士費用特約が使えることが多いです。
ただし、自転車同士の衝突や、自転車が歩行者にぶつかったといった事故では、一般的な自動車保険の特約では補償されない可能性が高いです。
もっとも、日常生活でのトラブルも対象にしているタイプの弁護士特約に入っていれば、自転車が関係する事故でも使えることがあります。
どの範囲まで補償されるかは、保険会社ごとに違います。事故後に使えるかどうか迷ったときは、自分の保険証券を確認したり、保険会社に直接問い合わせたりしてみましょう。
保険会社が紹介する弁護士でなくても特約を使えますか?
はい。自分で選んだ弁護士でも、弁護士費用特約は使えます。
保険会社が「この弁護士にお願いしてください」と紹介してくれることはありますが、それに従う必要はありません。弁護士費用特約は、どの弁護士に依頼するかを自分で決めることができる制度です。
交通事故の解決に詳しい弁護士を自分で探して、相談してから「この人なら信頼できる」と思ったら、そのまま依頼して大丈夫です。
また、弁護士費用特約には、弁護士に相談するための費用(多くは10万円まで)も含まれているので、何人かに相談してから決めることもできます。
大切なのは、「信頼できる弁護士を自分で選ぶこと」です。保険会社が紹介したからといって、必ずしもその人が自分にとってベストとは限りません。自分に合った弁護士を見つけて、納得したうえで特約を活用しましょう。
どの保険会社の弁護士特約でも使えますか?
はい。よつば総合法律事務所では、どの保険会社の弁護士費用特約も使えます。
ただし、弁護士特約を使うときは、事前に保険会社に「この弁護士に依頼したい」と連絡しておくとスムーズです。あとから連絡すると、支払いの手続きでトラブルになることもあるので注意しましょう。
弁護士費用の自己負担が発生することはありますか?
基本的には、弁護士費用の自己負担が発生することはありません。弁護士費用特約を使えば、相談料や着手金、成功報酬などの費用は保険でまかなわれます。
ただし、弁護士費用の一部が特約の対象外だった場合や、上限を超えた場合は、自分で支払う必要があります。契約内容によっても違うので、依頼前に見積もりを取って確認しておくと安心です。
特約の上限300万円を超えて自己負担が発生することはありますか?
はい。弁護士費用が300万円を超えた場合、その分は自己負担になります。
ただし、交通事故で300万円を超える費用がかかることはめったにありません。
多くの示談交渉や後遺障害の申請などは、300万円以内で対応できるケースがほとんどです。
とはいえ、訴訟が長引いたり、複雑な事件になったりすれば、上限を超える可能性もゼロではありません。不安な方は、弁護士に相談時に費用の見込みを聞いておくとよいでしょう。
弁護士特約を使うと翌年以降の保険料は上がりますか?
一般的には、弁護士費用特約を使っても、翌年以降の保険料が上がることはありません。
よくある誤解として、「使うと等級が下がって保険料が上がるのでは?」という不安がありますが、弁護士費用特約は、事故の等級制度とは無関係です。
そのため、使用しても自動車保険の等級や割引率に影響することはなく、安心して利用できる制度となっています。
ただし、すべてのケースで保険料に影響がないとは限りません。
たとえば、法人契約の車両に付いている特約の場合は、利用後に保険料が上がることがあるため注意が必要です。
契約の内容や保険会社によって取り扱いが異なることもありますので、不安がある場合は、事前に保険会社へ確認しておくと安心です。
弁護士特約は必要ですか?
はい。弁護士費用特約は、交通事故に備えて加入しておくことを強くおすすめします。
この特約があれば、万が一事故に巻き込まれても、費用の負担を気にせず弁護士に相談・依頼できるため、大きな安心につながります。
特に、もらい事故や軽いけがの場合は、損害額が小さいぶん「弁護士費用を払うのは割に合わない」と感じて泣き寝入りしてしまう人も少なくありません。
そうしたケースでも、特約を使えば費用負担ゼロで弁護士に依頼でき、適切な補償を受けるための交渉が可能になります。
保険料に月数百円~数千円を上乗せするだけで、最大300万円までの弁護士費用が補償される仕組みは、費用対効果の面でも非常に優れています。
不慮の事故に備えた「安心の保険」として、弁護士費用特約は付けておく価値の高い制度といえるでしょう。
弁護士特約はどのような保険に付帯していますか?
弁護士費用特約は、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険、クレジットカードに付いていることもあります。
中には、日常生活でのトラブルにも対応するタイプの特約もあります。自動車を運転していない人でも、家族の保険に付いていれば使えることもあります。
どの保険に特約がついているかは、保険証券や契約書類で確認できます。身の回りの保険を見直してみると、すでに特約が付いていることに気づく場合もあります。
弁護士特約を重複して契約しているとどうなりますか?
同じ人が複数の保険で弁護士特約を契約していても、1回の事故で使えるのは基本的に1つの特約だけです。
ただし、補償額が足りないときは、複数使える場合もあります。
重複して契約しても問題にはなりませんが、必要以上に保険料を払ってしまうことになることもあります。保険内容を見直して、どれか1つだけ残すのも選択肢です。
どの保険が優先的に使われるかは、保険会社に確認しておくと安心です。
事故後に弁護士特約に加入しましたが使えますか?
いいえ。事故が起きたあとに加入した弁護士特約は、その事故には使えません。
特約は「事故のときにすでに加入していた場合」にしか使えないルールです。たとえ事故の翌日に特約を付けても、その事故には遡って適用されないのです。
あとから特約に入って「使えるかも」と期待してしまう方も多いので注意しましょう。
今後のために備えておくのは良いことですが、事故前からの加入が絶対条件です。
まとめ:弁護士費用特約
弁護士費用特約は、交通事故の被害にあったときに、弁護士にかかる費用を保険でまかなえる非常に心強い制度です。保険料の負担はごくわずかである一方、万が一のときには数百万円単位の費用が補償される可能性があります。
しかも、ほとんどのケースで等級ダウンなどのペナルティはなく、実質的なデメリットもほぼありません。
相手との交渉に不安がある方や、費用面で弁護士の依頼をためらっていた方にとって、大きな助けとなるでしょう。
もしものときの安心のために、今すぐご自身やご家族の保険内容をチェックしてみてください。すでに加入している特約を活用できるかもしれませんし、これから保険に加入する方にとっても、検討する価値は十分にあります。
弁護士費用特約を上手に活用して、交通事故の不安を少しでも軽くしましょう。

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博