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交通事故知識ガイド下肢及び足指

足趾の骨折

基節骨の骨折の解説

基節骨の骨折
足趾(足の指)の骨は、親趾では基節骨と末節骨の2本、他の趾では基節骨、中節骨及び末節骨の3本で構成されています。手の指も同様でして、親指は基節骨と末節骨のみ、他の指は基節骨、中節骨及び末節骨の3本から成っています。

基節骨骨折の症状としては、骨折部位の圧痛・腫脹・皮下出血があります。一見打撲のように見えることも多いです。XP検査をしてみて、骨折があることが確認できます。
足趾の強打・突き指による骨折の多くは、骨転位のないものが多く、テーピングとアルミ製のシーネで固定し、3週間の患部の安静を確保することができれば、通常は後遺障害を残すことなく治癒します。 骨が治癒しても腫れが引かないこともありますが、徐々に治っていきます。
固定

第5基節骨骨折に対し、アルミプレートを足に合わせて加工します。 また、第4趾を添え木代わりにして固定しています。

後遺障害が問題となるのは、粉砕骨折、挫滅骨折などで転位(ずれ)の大きいものです。
このような骨折が発生したときは、肉眼でも分かるほどにまで変形することが多いです。
中足骨骨折や中節骨・末節骨骨折を伴う多発骨折で、一部が開放性のもの、転位・変形の大きいものでは、矯正による整復固定後に再転位する可能性が高く、それを防止する観点から、長期間の固定が行われることになり、結果として足趾関節が拘縮を来すことも予想されます。

交通事故を原因とした足趾の骨折では、基節骨に多発していますが、中節骨や末節骨の骨折であっても、治療方法や後遺障害の考え方は同様です。

中足骨骨折の解説

足の裏から見ています。
足の裏

「踵」は踵骨(しょうこつ)
「距」は距骨(きょこつ)
「舟」は舟状骨(しゅうじょうこつ)
「1楔」は第1楔状骨(けつじょうこつ 「内側楔状骨」ともいいます。)
「2楔」は第2楔状骨(「中間楔状骨」ともいいます。)
「3楔」は第3楔状骨(「外側楔状骨」ともいいます。)
「立」は立方骨(りっぽうこつ)
「中足」は中足骨(ちゅうそくこつ)で、第1中足骨から第5中足骨まであります。
「基」は基節骨(きせつこつ)
「中」は中節骨(ちゅうせつこつ)
「末」は末節骨(まつせつこつ)

交通事故では、自動車の車輪の下敷きになったり、足に重量のある物が落下したりするなどの受傷機転で、中足骨骨折に至ることがあります。

このような受傷機転で中足骨骨折が発生したとき、複数の中足骨を骨折することが多いです。
複数の中足骨に転位のある骨折が生じたときや、1本の中足骨が3つ以上に分かれる粉砕骨折が生じたときは、観血的手術が必要になることもあります。

第5中足骨基底部骨折の解説

第5中足骨基底部骨折は通称「下駄骨折」とも言います。

足小指の根元にある中足骨

足小指の根元にある中足骨のイラストです。Bのほうが足先に近いです。
Aの部分が下駄骨折、Bがジョーンズ骨折です。
骨折部位は1センチメートルほどしか違いませんが、治療法や予後は異なってきます。

第5中足骨基部骨折とは、足の小指の根元の甲の部分にある中足骨の根元が骨折したものです。昔、下駄を履くのが一般的だったころ、鼻緒の部分が支点になったひねり方をすると多発していたことから、下駄骨折と呼ばれます。

現在でも、足をひねったときに発生します。第5中足部基底部骨折は、足部を内返しする捻挫で発症する外傷性骨折で、第5中足骨基底部に付着する短腓骨筋腱が引き伸ばされ、その腱の牽引力と第5中足骨に加わる捻転力により生じます。比較的高頻度で発生します。

ジョーンズ骨折の部位より足首に近いところを骨折します。

交通事故では、傾斜のある路面に転落し足を捻挫するなどの受傷機転で足関節の内反強制が加わると発生することがあります。
骨折しても歩けることが多く、受傷機転も足関節捻挫によく似ているので、ただの捻挫だと放置され、この骨折が見逃されることがあります。

治療は、ギプス固定をしたり、シーネ固定をしたり、足底版を用いたりして行います。骨癒合に至るまでは、6週間から8週間程度を要します。 転位が著しいときは、手術が必要となります。

第5中足骨骨幹端部骨折の解説

第5中足骨骨幹端部骨折は通称「ジョーンズ骨折」と言います。
第5中足骨骨幹端部骨折(ジョーンズ骨折)

ジョーンズ骨折は、つま先立ちの姿勢で足を捻挫したときに、第5中足骨の基部に発症する骨折です。

この骨折は、サッカー、ラグビー、バスケットボールなど走っている最中にカットプレーなどで方向転換をする際、前足部でブレーキをかけて捻る動作を繰り返すうちに、第5中足骨の後方端と骨幹部の境界辺りに物理的ストレスが蓄積し、徐々に疲労性の骨折を生じると考えられています。ただし、外力が加わることにより発生することもあり、交通事故でも発生しています。

ジョーンズ骨折では、短腓骨筋という筋肉がついている部分が骨片側にあり、それが骨を引っ張るため、骨折部の癒合が悪く、偽関節に至りやすい骨折です。「下駄骨折」より治りにくいです。

スクリュー

骨癒合が不良のときは、低周波や超音波による骨癒合促進刺激を実施し経過観察となりますが、多くは、癒合を促進するためにスクリューを埋め込みます。

種子骨の骨折の解説

足の親指

足の親指を足の裏からみたところを表したイラストです。 白い楕円形で示したのが種子骨です。

種子骨は、足の親指の付け根の裏の屈筋腱内にある2つの丸い形状の骨です。種子骨の周辺には筋肉や腱が集まり、これらの筋肉や腱が効率よく動くことを助けています。
交通事故では、母趾球を強く打撲したときに、種子骨の骨折が発生します。
症状が進行すると足を地面についただけでも痛みが出てきて、歩行困難にまでなることもあります。

種子骨骨折が起きたときの治療法ですが、足の裏にかかる負担を軽減するために柔らかい素材のパッドを靴の中に入れて使用します。パッドは母趾球部がくり抜かれており、種子骨部に圧力がかからないようにします。
ほとんどはこれで改善がみられます。場合によっては、手術で内側の種子骨を摘出します。

足趾の骨折の後遺障害認定のポイント

1 打撲や捻挫で後遺障害が認定されることは通常ありません。

脱臼や骨折、靱帯断裂など、器質的損傷をCT、MRIの画像で立証する必要があります。
受傷から2か月以内に撮影するのが望ましいです。そうでないと、事故との因果関係が疑われてしまいます。

2 足の指の機能障害の審査基準は、手の指の基準よりも厳しくなっています。

手指の場合ですと、第2関節(PIP関節)または第3関節(MP関節)が健側に比べて可動域が2分の1以下に制限されていることが、関節機能障害の認定要件です。
ただし、親指の場合は第1関節(IP関節)または第2関節(MP関節)の可動域が健側に比べて可動域が2分の1以下に制限されていることが要件です。

親指以外の第1関節(DIP関節)の機能障害が認定される要件は、強直または完全麻痺していることです。

たとえば、手指の場合、親指だけがこれに該当すると10級7号、人差し指、中指または薬指のうち1つがこれに該当すると12級10号、小指だけがこれに該当すると13級6号です。

一方、足趾については、第2関節または第3関節が健側に比べて可動域が2分の1以下に制限されていることが関節機能障害の認定要件です。(親趾は第1関節または第2関節です。)親趾以外の足趾の第1関節が強直または完全麻痺していたとしても、後遺障害認定基準には当たりません。

そして、足趾の場合、以下の後遺障害認定基準となります。

・親趾だけ該当する場合
「一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの」(12級12号)
・第2趾だけ該当する場合
「一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの」(13級10号)
・第3趾から第5趾までのいずれか1つが該当する場合
「一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの」(14級8号)

3 足趾においては、関節の機能障害ではなく痛みの神経症状で「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)または「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)に認定されることもあります。

特に、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)に認定されるためには、骨癒合の不良もしくは変形癒合があることを立証することが必要です。 この立証には、2方向から撮影したXP画像だけでなく、3D化したCT画像も効果的です。

参考リンク