外傷性骨化性筋炎
最終更新日:2026年04月13日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
外傷性骨化性筋炎とは、筋肉への強い打撲がきっかけで、筋肉の中に骨ができてしまう症状です。
この記事では、外傷性骨化性筋炎について、原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
外傷性骨化性筋炎は専門的な判断が必要です。気になることやお悩みがある場合は、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせください。

目次
外傷性骨化性筋炎
外傷性骨化筋炎とは、打撲や捻挫などのけがをした後、筋肉が炎症を起こし、本来であれば修復されるはずの筋肉組織の中に骨組織(仮骨:かこつ)が形成されてしまう状態です。
通常、打撲などのけがは数日から数週間で治りますが、この症状が起きると痛みが長引き、患部が異常に硬くなります。
特に大きな筋肉である、太ももの大腿四頭筋や腕の上腕筋などの損傷で多くみられます。
外傷性骨化性筋炎の原因
骨周辺の筋肉、腱、靭帯、臓器、関節包などの軟部組織に、骨ができてしまう現象を、骨化といいます。
本来骨ができない部位に骨ができてしまうことから、異所性骨化とも呼ばれます。
その中で打撲やねん挫などの外傷に起因するものが、外傷性骨化性筋炎です。
筋肉の炎症に引き続いてカルシウムが沈着し、石灰化現象が起こって筋組織の中に骨ができてしまうのです。
筋肉内に大きな血腫が形成され、その修復過程で骨を作る細胞が誤作動を起こすことが引き金となるとされています。
外傷性骨化性筋炎の診断
外傷性骨化性筋炎は、患部が異常に硬くなることが特徴ですが、血液検査による血中ALPの数値、XP画像、超音波検査、骨シンチグラム検査などで確定的に診断することができます。
異所性骨化症である骨化性筋炎は、次のような経過をたどって進行します。
- 受傷により筋組織が損傷し、血腫が形成される。
- 血腫の吸収と同時に石灰化が生じる。
- その後約2週間で石灰化した部分が拡大していく。
- さらに3~4週間を経過すると、石灰化した部分が明瞭となり、骨化がXP画像にも鮮明に映るようになる。
- 患部を無理のない範囲で動かしていくことにより、約4~5か月で、骨化した部分が徐々に小さくなっていく。
外傷性骨化性筋炎の治療
受傷直後は、なによりRICE(ライス)処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を徹底し、血腫を最小限に抑えることが最大の予防です。これにより、血腫の拡大を防ぐことができます。

患部の修復が始まるまでの2~3週間は、固定し、患部への刺激は極力避けるのが望ましいです。血腫が徐々に減少し、石灰化した部分がXP画像でも確認できる段階に至れば、もう固定は必要ありません。
固定を外しても、無理やり動かすリハビリを実施するのは逆効果です。痛みを伴わない角度の範囲内でストレッチや関節運動を開始します。
これにより骨化した部分は徐々に血液中に吸収されて消失していき、それに伴って、制限されていた可動域も回復します。仮骨が自然に消失しない場合は、手術で摘出することもあります。
外傷性骨化性筋炎は、打撲に対する不適切なケアがもたらす長期的な合併症だといえます。とにかくRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を徹底し、血腫を最小限に抑えることが最大の予防です。無理に刺激を加えると、状態が悪化してしまいます。
合併症
外傷性骨化筋炎は激しい打撲によって生じるため、周囲の骨の骨折と合併して生じることもあります。
以下の画像は、頭部外傷、遷延性意識障害、左股関節後方脱臼骨折で入院した被害者(20代前半の男性)のものです。受傷から3か月を経過した段階で、左股関節部に、重篤な外傷性骨化性筋炎が認められました。股関節はカチカチに固まってしまい強直状態でした。深刻な状態です。

脊髄損傷や頭部外傷により中枢神経にダメージが加わると、中枢部からの指令が乱れ、異所性骨化が見られることもあります。したがって、本件の骨化筋炎は中枢神経の損傷が原因かもしれませんし、打撲後に血腫が形成されたことが原因かもしれませんし、これらが複合しているかもしれません。
なお、頭部外傷、脊髄損傷後や股関節形成手術後の異所性骨化には、早期に骨代謝改善剤を用いることで、股関節の機能も含めて、効果を上げているとの報告があります。
外傷性骨化性筋炎の後遺障害
血液検査による血中ALPの数値、XP画像、超音波検査、骨シンチグラム検査などにより、診断することが可能です。これに対する治療法も確立されています。
大きな血腫が形成されたときは、血栓溶解剤を血腫内に注射し、固まった血腫を溶かして吸い出す治療も実施されており、この方法であれば、より早く治癒するようです。
大きな血腫ではなく、筋肉内に広範囲に拡がる点状出血が生じたケースでは、上記の治療はできず、自然治癒を待つしかありません。時間がかかることもありますが、いずれも、後遺障害を残すことなく、改善する可能性が高いといえます。
外傷性骨化筋炎が発生しやすい箇所の一つが、大腿四頭筋等の大きな筋肉が集まり、荷重がかかりやすい股関節です。股関節の外傷性骨化性筋炎で認定される可能性がある主な後遺障害は、機能障害(下肢)、神経障害の2種類です。
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害(関節の動く範囲の制限)
機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。
外傷性骨化性筋炎の場合、股関節の機能障害が考えられます。
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
股関節の可動域制限の場合、原則として屈曲と伸展、または外転と内転による運動を参照します。

屈曲と伸展

内転と外転
可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。
認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。
「用を廃したもの」(8級)
「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。
- 関節が全く動かない場合
- 関節の可動域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
- 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
著しい機能障害(10級)
「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。
- 関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
- 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合
機能障害(12級)
「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは次の場合です。
- 関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合
神経障害
神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級は、画像や検査結果から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。
たとえば、画像上、骨化した部分が確認でき、これが神経を圧迫して痛みが生じる場合などは12級が認定される可能性があります。
14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。
つまり、客観的な所見から痛みが生じる原因が明らかとはいえないものの、受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。
まとめ:外傷性骨化性筋炎の後遺障害
外傷性骨化性筋炎とは、筋肉が炎症を起こすことによってカルシウムが沈着し、筋組織の中に骨が形成される症状です。
外傷性骨化性筋炎となった場合、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を徹底し、血腫を最小限に抑えることが重要です。適切な処置や治療により、症状が改善するケースも多くみられます。
後遺障害は、主に機能障害・神経障害があり、8級から14級まで等級があります。
外傷性骨化性筋炎の後遺障害は専門的な判断が必要です。お困りの際は、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

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弁護士 粟津 正博













