メニュー
交通事故知識ガイド下肢及び足指

股関節その6

股関節その6 外傷性骨化性筋炎

骨周辺の軟部組織に骨ができてしまう現象を骨化といいます。本来骨ができない部位に骨ができてしまうことから、異所性骨化とも呼ばれます。
筋肉、腱、靭帯、臓器、関節包などの軟部組織に、石灰が沈着して骨が形成されてしまいます。
その中で外傷に起因するものが、外傷性骨化性筋炎です。筋肉の炎症に引き続いてカルシウムが沈着し、石灰化現象が起こって筋組織の中に骨ができてしまうのです。
筋肉内に血腫が形成されることが引き金となっているようです。
血液検査による血中ALPの数値、XP画像、超音波検査、骨シンチグラム検査などで診断することができます。

異所性骨化症である骨化性筋炎は、以下の経過をたどって進行していきます。

  1. ①受傷により筋組織が損傷し、血腫が形成される。
  2. ②血腫の吸収と同時に石灰化が生じる。
  3. ③その後約2週間で石灰化した部分が拡大していく。
  4. ④さらに三、四週間を経過すると、石灰化した部分が明瞭となり、骨化がXP画像にも鮮明に映るようになる。
  5. ⑤患部を愛護的に動かしていくことにより、約四、五か月で、骨化した部分が徐々に小さくなっていく。

RICE処置

受傷直後は、なによりRICE処置が重要です。これにより、血腫の拡大を防ぐことができます。
患部の修復が始まるまでの2~3週間は、固定し、患部への刺激は極力避けるのが望ましいです。
血腫が徐々に減少し、石灰化した部分がXP画像でも確認できる段階に至れば、もう固定は必要ありません。
固定を外しても、無理やり動かすリハビリを実施するのは逆効果です。痛みを伴わない角度の範囲内でストレッチや関節運動を開始します。
これにより骨化した部分は徐々に消失していき、それに伴って、制限されていた可動域も回復します。

外傷性骨化性筋炎は、打撲に対する不適切なケアがもたらす長期的な合併症だといえます。

外傷性骨化性筋炎における後遺障害のポイント

1)血液検査による血中ALPの数値、XP画像、超音波検査、骨シンチグラム検査などにより、診断することが可能です。これに対する治療法も確立されています。
大きな血腫が形成されたときは、血栓溶解剤を血腫内に注射し、固まった血腫を溶かして吸い出す治療も実施されており、この方法であれば、より早く治癒するようです。
大きな血腫ではなく、筋肉内に広範囲に拡がる点状出血が生じたケースでは、上記の治療はできず、自然治癒を待つしかありません。
時間がかかることもありますが、いずれも、後遺障害を残すことなく、改善していきます。

2)ところで、次の3DCTの画像を御覧ください。

頭部外傷、遷延性意識障害、左股関節後方脱臼骨折で入院した被害者(20台前半の男性)は、受傷から3か月を経過した段階で、左股関節部に、上記の外傷性骨化性筋炎が認められました。股関節は強直状態でした。深刻な状態です。
入院治療先は、頭部外傷、遷延意識障害の治療に集中しており、左股関節後方脱臼骨折は、放置されたままになっていました。

脊髄損傷や頭部外傷後に異所性骨化が見られることもありますので、これが原因かもしれませんし、打撲後に血腫が形成されたことが原因かもしれませんし、これらが複合しているかもしれません。

3DCTの画像

現在、頭部外傷、脊髄損傷後や股関節形成手術後の異所性骨化には、骨代謝改善剤が用いられており、股関節の機能も含めて、効果を上げているとのことです。

これは特殊なケースですが、外傷性骨化性筋炎による後遺障害が残ることはなさそうです。ただ、頭部外傷による影響は深刻です。