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交通事故知識ガイド下肢及び足指

前十字靱帯損傷

前十字靱帯損傷の解説

膝関節-前十字靱帯損傷

膝関節において、大腿骨と脛骨は、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)、後十字靭帯の4つの靭帯によって安定化が図られています。

大腿骨と脛骨が左右にずれるのを防止しているのが内側側副靭帯及び外側側副靭帯です。前後にずれるのを防止しているのが前十字靭帯及び後十字靭帯です。
前十字靭帯(「ACL」としばしば略称されます。)は、大腿骨の外側と脛骨の内側を結び、脛骨が前にずれるのを防いでいます。
膝を伸ばしているとき、この靭帯は、張っている状態です。

交通事故では、膝を伸ばして踏ん張っているときに、膝を捻って、結果、前十字靭帯損傷が起きるというのが1つの典型です。バイクや自転車と自動車の事故に多く発生し、ほとんどは、靭帯断裂に至ります。なにかが切れたような、ブツッという音(断裂音)を体感することが多いです。
関節内は大量に出血し、数時間以内に著しく腫れ上がります。

前十字靭帯損傷は、lachmanテスト(ラックマンテスト)で診断を行います。
靭帯が断裂していることによる動揺の有無や程度を、このテストで確認します。

ラックマンテスト

膝を20度から30度に屈曲させ、前方に引き出します。
前十字靭帯断裂のときは、脛骨が前方に引き出され、停止する感覚が得られません。
lachmanテストで大まかな診断がつきますが、損傷の程度を知るために単純XP撮影、CT、関節造影、MRI等が実施されます。MRIがとても有効です。ストレスXP撮影も行われます。

ストレスXP撮影

ストレスXP撮影

補助具を用いて脛骨を前方に引き出し、ストレスをかけてXP撮影を行います。
前十字靭帯断裂があるときは、脛骨が前方に引き出されて写ります。
後遺障害診断書には、「ストレスXP撮影で何mmの前方引き出しを認める。」といった明確な記載をするよう依頼しなければなりません。

一度断裂した前十字靭帯は自然につながることはありません。
軽症例に対しては、大腿四頭筋やハムストリング筋などを強化する、保存的治療をおこないます。
前十字靱帯損傷

前方引き出しテストで、脛骨が太腿より前に異常に引き出される状態のままですと、膝崩れを頻発し、半月板損傷を引き起こします。激しい活動を行うことをしない中高年者では、装具装着や筋力増強を中心とした保存療法で経過を見ることもありますが、保存療法で完全に治癒する確率は低いです。最も確実な治療方法は、自家腱移植による靭帯再建手術を行うことです。

靭帯の再腱術は、受傷直後に前十字靱帯断裂があることが判明したときは、3週間程度保存療法を行った後に行われます。半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱といった自家腱を移植材料とすることが多く、前十字靭帯を繋ぎ再建します。
手術後は、可動域訓練、荷重、全荷重と段階的にリハビリテーションを行います。

前十字靱帯損傷の後遺障害認定のポイント

1)治療の甲斐なく、膝関節に動揺が残ってしまったときは、日常生活や仕事に大きな支障が生じてしまいます。したがいまして、適切な後遺障害等級が認定されなければなりません。

2)通常歩行を行う際、膝関節に常時硬性装具を必要とする場合は、「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級7号)に準ずる関節の機能障害として取り扱われます。

3)常時ではなく、ときどき硬性装具を装着する必要がある場合は、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級11号)に準ずる関節の機能障害として取り扱われます。

4)重激な労働を行う際に限って、固定装具を装着する必要がある場合は、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に準ずる関節の機能障害として取り扱われます。

5)関節に動揺があることの立証には、ストレスXP撮影が必要となります。
ストレス撮影で、①5~8mmの動揺性が認められれば「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)、②8~10mmですと「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級11号)、③12mm以上ですと「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級7号)というのが1つの目安とされています。

参考リンク