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交通事故知識ガイド下肢及び足指

変形性膝関節症

変形性膝関節症の解説

交通事故で、膝関節の傷害を受けました。
その傷害が、脛骨顆部骨折、膝関節脱臼、前十字靭帯損傷、後十字靱帯損傷や半月板損傷だったとき、後遺障害を残した場合は、いったん解決をみた後、それらの疾患に続発する二次性の変形性膝関節症が生ずる可能性があります。
二次性の変形性膝関節症は、靭帯損傷、半月板損傷、関節内骨折などに続いて発症します。

正常なもの

正常なもの

初期

初期

進行期

進行期

※初期  半月板や軟骨がすり減って薄くなり、大腿骨と脛骨との間隔が狭くなる。
※進行期 関節面に骨棘が形成されていき、骨同士が直接にぶつかる。

正常な膝関節の表面は、軟骨で覆われています。
軟骨の働きにより、衝撃を和らげ、関節の動きを滑らかにしています。

変形の初期段階においては、関節軟骨の磨耗は軽度なものにとどまっていることから、自覚症状が出ることはほとんどありません。
軟骨の磨耗が進み、ある程度薄くなるまで進行しますと、膝の曲げ伸ばし、立ち上がり、歩行中の膝にかかる負担が増加し、関節炎を発症します。
膝蓋骨周辺に水がたまり、膝が腫れ、膝の曲げ伸ばし動作、階段昇降に伴う動作での疼痛や可動域制限が生じます。

進行期になると、軟骨の磨耗がさらに進み、関節の土台の骨である軟骨下骨が露出し、骨そのものの変形である骨棘形成が見られます。
この段階に至ると、強い動作痛と大きな可動域制限により、日常生活は、大きく障害されます。

変形性膝関節症になると、膝の痛みのため、あまり歩かなくなり、脚の筋肉が衰えていきます。(廃用性筋委縮。)とりわけ大腿四頭筋(大腿の前面)の衰えが顕著に現れます 。
脚の筋肉が衰えると、さらに膝に負担がかかり、変形性膝関節症が進行していきます。
したがいまして、変形性膝関節症は、放置するとこの悪循環にはまり、悪化の一途をたどりかねません。

進行した変形性膝関節症の治療は、痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸びきらない状態を改善して、膝の機能を高めることを目指して行われます。
治療方法は、保存的には、薬物療法、減量指導・栄養指導療法、運動療法、装具療法の4つの療法があります。

  • 薬物療法:消炎鎮痛剤の服用や、湿布、軟膏などの使用により鎮痛を図ります。
  • 減量指導・栄養指導療法:体重増加も発症要因となるため、その減少を図ります。
  • 運動療法:筋力増強により膝関節の動的安定性の向上を図ります。
  • 装具療法:膝関節の負担軽減を図ります。

これらは根治療法ではなく、対症療法です。 これらの治療でも痛みが改善されないときには、手術療法が考慮されます。

①関節鏡視下デブリードマン

比較的初期の変形性関節症に対して実施されるもので、膝関節に小さなカメラ(関節鏡)を入れ、関節内を見ながら関節内を洗浄したり、変形軟骨を切除したり、半月板を縫合・切 除したりします。膝に小さな穴を数か所開けるだけなので、負担が少なく入院期間も短いのですが、交通事故による2次性疾患では、関節症が進行していることが多く、条件に適合 する被害者は少ないです。

②高位脛骨骨切り術

内側型変形性関節症(いわゆるO脚)に対して広く用いられている手術ですが、膝蓋大腿関節に著しい関節症性変化がないことが必要です。ほぼ完治しますが、長期入院が必要であったり、手術の効果が現れるまで相当期間を要したりしますので、アメリカでは敬遠される傾向があるそうです。

O脚
O脚治療後

③人工膝関節置換術

変形性膝関節症が進行し、関節破壊や不安定性、拘縮を伴う場合に適応となります。痛みを取り除く効果及び関節機能の改善効果に優れています。ただし、緩みや摩耗による耐用年数の問題があるので、年齢的には60歳以上が適応とされます。
人工膝関節置換術

変形性膝関節症の後遺障害認定のポイント

1)交通事故で後遺障害が残り、その後変形性膝関節症が生じたとき、その変形性膝関節症の手術が行われる時期が、交通事故に関する損害賠償の件がいったん解決した数年後、長いときは10年近く経過してからということもあります。

2)この疾患は、交通事故を原因とする二次性疾患ですから、変形性膝関節症により後遺障害が大きくなったときは、それは等級認定される可能性はあります。
例えば、人工膝関節置換術が実施されたときは、可動域制限の程度によって、「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級7号)または「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」10級11号が認定される可能性があります。それが以前に認定された等級より高ければ、かつて受けた損害賠償との差額が発生する可能性があります。

3)最高裁判所の判例では、示談に精算条項を盛り込み、その後に後遺障害が発生したとき、その後遺障害が示談当時予想できなかった場合は、その新たに発生した後遺障害に基づく損害については改めて賠償請求できるということになっています。
しかし、膝関節の脛骨顆間骨折、脱臼、複合靱帯損傷などによる後遺障害が残り、将来、変形性膝関節症が懸念されるときは、変形性膝関節症による後遺障害が「示談当時予想できなかった」と常にいえるとは限りません。
したがって、示談書には、今後被害者に本件事故による新たな後遺障害が発生したときは、その損害賠償について別途協議することとするといった内容の条項を備えておくことが望ましい事案があります。

参考:示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力に関する最高裁判所判例(昭和43年3月15日判決)

4)通勤災害、業務災害で労災保険の適用を受けているときは、示談後に変形性膝関節症で手術を受けることになっても、再発申請書を提出することにより、治療費、治療期間中の休業給付を受けることができる可能性があります。

参考リンク