坐骨神経麻痺
最終更新日:2026年06月29日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
坐骨神経麻痺とは、腰から足先に伸びる神経が圧迫・損傷し、しびれが出るけがです。
この記事では、坐骨神経麻痺について、原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
坐骨神経麻痺は専門的な判断が必要です。気になることやお悩みがある場合は、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせください。

目次
坐骨神経麻痺
坐骨神経麻痺とは、坐骨神経が圧迫されるなどして、お尻や太ももの後ろ、足先にしびれが出る状態です。
坐骨神経麻痺の構造
坐骨神経は、末梢神経のなかでは最も太くて長い神経です。背骨から出発し、お尻を貫いて大腿部の後面を下がり、膝の裏まで通っています。
坐骨神経は、仙骨神経叢(脊髄から分岐する神経の束のことです)を構成する末梢神経のうち、第4腰神経(L4)から第3仙骨神経(S3)で構成されています。

坐骨神経の走行は、仙骨神経叢を出た後、梨状筋深部を通過して骨盤外へ出て、大腿後面を下行し、膝窩(膝の裏)で、総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。
坐骨神経と呼ばれるのは通常膝の裏までで、その先は脛骨神経と総腓骨神経の二手に分かれ、これらの神経が足の運動と感覚を支配しています。
坐骨神経麻痺の症状
坐骨神経は、大腿の裏側と下腿の一部及び足の裏の感覚・運動を支配しています。したがって、坐骨神経麻痺が起こると、ふくらはぎの裏側や足の裏のしびれや感覚の鈍麻、うずき、灼熱感、痛み(疼痛)が生じます。
重度の場合は、膝や足の脱力感を訴え、歩行困難となります。特に坐骨神経の断裂による重症例では、足関節と足の指(足趾)を自分の意思で動かすこと(自動運動)ができなくなり、下垂足(かすいそく)を呈します。また、膝を自分の力で曲げる運動ができなくなります。
下垂足とは、足首や足先を持ち上げる筋力が低下し、つま先が垂れ下がってしまう状態です。
坐骨神経麻痺の原因
腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどに伴って坐骨神経由来の症状が発生することがあります。
このようなケースでは、坐骨神経の断裂はなく、神経が圧迫されたことによる「絞扼性(こうやくせい)神経障害(神経が締め付けられることによる障害)」または「坐骨神経痛」が生じます。

股関節の後方脱臼や仙腸関節部又は骨盤後壁の骨折等に合併して坐骨神経麻痺が生じることがあります。
坐骨神経は、大腿骨骨頭のすぐ後方を走行しています。したがって、股関節に非常に強い破壊的な力が加わり、後方脱臼骨折・仙骨の縦断骨折等を生じると、神経も断裂するケースがあるのです。
このようなケースでは、足首や足指の顕著な運動障害が生じます。

坐骨神経麻痺の後遺障害
坐骨神経麻痺の傷病名と診断されても、ほとんどは、坐骨神経の圧迫や絞扼(神経の締め付け)が原因です。この原因を取り除けば、時間はかかりますが、改善することが多いです。
股関節の後方脱臼骨折、仙骨の縦断骨折等に伴い坐骨神経が断裂するケースでは、後遺障害が認定される可能性が高いです。
坐骨神経麻痺で認定される可能性がある主な後遺障害は、神経障害、機能障害(下肢)の2種類です。
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
| 6級7号 | 1下肢の三大関節中の2関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
神経障害
坐骨神経麻痺で最も多い後遺障害が神経障害です。
神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級は、画像や検査結果から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。
12級獲得のためには、以下のような検査で立証することが考えられます。
- 筋電図、神経伝達速度検査、針筋電図検査:神経麻痺の検査所見
- ラセーグテスト:お尻から太ももの裏、すねにかけて激しい痛み(放散痛)が走るかを確認
- アキレス腱反射:減弱もしくは消失
- MRI検査:神経麻痺の画像所見
骨折と合併する場合、画像による骨の状態から神経損傷を認定するケースもあります。
14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。
つまり、客観的な所見から痛みが生じる原因が明らかとはいえないものの、受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。
機能障害(関節の動く範囲の制限)
機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。
坐骨神経麻痺の場合、膝関節及び足関節の機能障害が考えられます。
| 6級7号 | 1下肢の三大関節中の2関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
「用を廃したもの」(6級、8級)
「用を廃したもの」(6級、8級)とは、関節が全く動かないか可動域が1/10以下に制限された場合のほか、坐骨神経麻痺のように末梢神経の損傷によって「他人が動かせば動くものの、自分の力では関節を全く動かせない状態(自動運動が不可能な状態)」になった場合も含みます。
機能障害の認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な証明が必要です。特に用廃のような高度の可動域制限を残す等級の場合、十分な立証を求められます。
膝関節と足関節の二関節が用廃となると6級7号、どちらか一関節が用廃となると8級7号に該当します。
たとえば、股関節の後方脱臼に伴い、坐骨神経だけでなく周辺の神経も広く損傷し、膝関節と足関節の双方が、自分の力では全く動かせない状態(自動運動が完全に不可能な状態)になった場合、2関節の用を廃したものとして6級7号に該当する可能性があります。
足指の運動も不能となった場合
坐骨神経は、足指の動きも支配していますので、足指の運動も不能となったとき、「足趾(足指)の全ての用廃が起こったもの」として9級15号にも該当します。
この場合、通常の計算ルール(後遺障害の併合)をそのまま当てはめると「併合5級」になりそうです。もっとも、後遺障害には「足を切断して失った場合の等級(5級5号)より、足自体は残っている状態での麻痺の等級が重くなってはならない」という全体のバランスを取るルール(序列の調整)があります。そのため、足を失った場合を超えないよう、最終的には6級相当として扱われます。
可動域の測定方法
可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。
坐骨神経麻痺のように、末梢神経損傷を原因として関節を動かす筋肉がだらりと麻痺し(弛緩性麻痺)、他人が動かせば関節は動くものの、自分の力では動かせない(自動運動ができない)場合は、自動運動による数値を参照します。
著しい機能障害(10級)
「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは、関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合です。
足指の機能障害がある場合は、上記と併合して等級が認定される可能性があります。
機能障害(12級)
「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは、関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合です。
まとめ:坐骨神経麻痺の後遺障害
坐骨神経麻痺とは、腰から足先に伸びる神経が圧迫・損傷し、しびれが出るけがです。重い場合は、膝や足首が自分で動かせなくなります。
神経の圧迫か、骨折等に伴う断裂かで治療経過や後遺障害の可能性が大きく異なります。
認定され得る後遺障害は、神経障害、機能障害(下肢)で、6級から14級まで等級がありますが、ほとんどのケースは神経障害の認定となります。
坐骨神経麻痺の後遺障害は専門的な判断が必要です。お困りの際は、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

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弁護士 粟津 正博













