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交通事故知識ガイド神経系統の機能又は精神の障害

外傷性頸部症候群と交通事故

外傷性頸部症
いわゆる「むち打ち症」と呼ばれているものです。
よく「首には7つの骨がある。」といわれています。これらの骨は「頸椎」といいます。
頸椎は、いずれも椎間板、靭帯、筋肉によってつながっています。 外傷性頸部症候群とは、追突事故などの衝撃によって頭部が大きく振られることによって首に過屈曲、過伸展が生じ、椎間板、靭帯、筋肉(まとめて「軟部組織」と呼ばれます。)が大きく伸びてしまったり、断裂したりすることによって発症するものです。「頸椎捻挫」と呼ばれることもありますが、ほぼ同じものです。

外傷性頸部症候群と後遺障害

外傷性頸部症候群の治療が終了し、後遺症が残ってしまったとき、それが後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」または12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当するか、それともそのいずれにも該当しないか(後遺障害非該当)が問題になります。
とりわけ、14級9号に該当するか、それとも非該当かが問題になることが多いです。

ところで、損害保険料率算出機構調査事務所(自賠責調査事務所)は、外傷性頸部症候群の14級9号の後遺障害認定基準を公表しています。それは、次のとおりです。

「外傷性頸部症候群に起因する症状が、

  1. 神経学的検査所見や画像所見から証明することはできないが、
  2. 受傷時の状態
  3. 治療の経過などから
  4. 連続性、一貫性が認められ、説明可能な症状であり、
  5. 単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの。」

以下、順に説明します。

①神経学的検査所見や画像所見から証明することはできない

腱反射、神経根誘発検査や徒手筋力テスト(MMT)、電気生理学検査(ENG)などによる異常がなかったり、レントゲン写真やMRI画像で異常がなかったりすることです。

外傷性頸部症候群の症状の多くは軟部組織の異常が原因で発生しますが、軟部組織の異常は画像に現れないことが多いです。また、各種検査でも有意な所見が出ないことが多いです。

逆に、これらの検査で有意な所見が得られ、画像検査にも異常があり、その両者が関連しているときは、12級13号に該当するかどうかが問題になってきます。(痛いから14級、とても痛いから12級という関係にはなっていません。)

②受傷時の状態

受傷時の状態とは、受傷機転や事故発生状況のことです。

受傷機転というのは、どのようにして外傷が発生したかということです。たとえば、停止中、どのような姿勢を取っていたときに衝撃を受けたか、その衝撃によって人体がどのような動きをしたかなどです。

事故発生状況というのは、道路の交通量、天候、発生時間などが挙げられまして、交差点か、坂道か、前面衝突か、追突か、側面衝突か、スピードはどの程度であったか、衝撃の程度はどれくらいであったかなどです。

大変な痛み等の症状が発生したとしても、それなりの大きな衝撃によって発生した傷害でなければ、後遺障害等級14級9号は認められにくくなります。どの程度の衝撃であったかは、自動車にどのような損傷が生じたかなどの客観的事情が考慮されます。

たとえば、自動車の損傷が激しく、修理箇所が多く、修理額が大きい場合、全損の場合などはそれなりの大きな衝撃があったのではないかという方向に考慮されます。
逆に、擦過傷のみで済んだときや、バンパーの交換程度で済んだようなときは、衝撃の程度がそれほど大きくなかったのではないかという方向に考慮されます。

以上は、自動車対自動車の交通事故の場合の話でございまして、歩行者対自動車、自動車対自転車、バイク対自動車の場合などにおいては当てはまりません。

③治療の経過

治療の経過とは、事故直後から、左右いずれかまたは両方の頸部、肩、上肢~手指にかけて、重さ感、だるさ感、痺れなどの神経症状を訴えていることです。事故から数か月経ってから発生した症状は、事故によるものではないと認定されることが多いです。

また、事故直後は神経症状を訴えており、その後それが消失したものの、さらにその後再び同じ神経症状を訴えたようなときも、後遺障害に認定されにくくなります。

なお、頸部痛や頸部の可動域制限は、後遺障害に認定されることは少ないです。

④連続性、一貫性が認められる、(医学的に)説明可能なもの

連続性、一貫性とは、治療のために継続的に真面目に通院していたことをいいます。具体的には、1か月当り10回以上、6か月60日以上が目安となります。

どんな症状を訴えていても、6か月間で30回程度の通院では、後遺障害に認定されることは厳しくなります。

仕事がお忙しく、なかなか通院することができないということもあろうかと存じます。
しかし、上記の通院日数がなければ、真面目な通院であると判断されにくくなります。
また、整骨院は、整形外科より遅い時間まで営業していることが多いことから、整骨院に通っていらっしゃる方も多いと思います。確かに整骨院の施術は治療のために有意であることも多いですが、治療行為とは、あくまでも医師(整形外科医)が行うものでして、整骨院に通っただけでは、真面目に通院したことにはなりません。整骨院に通う場合も、整形外科に通院する必要があります。

(医学的に)説明可能であるというのは、被害者の訴える症状が発生することが、各種検査及び画像からは証明できなくても、(証明できれば12級13号に該当することになります。)受傷時の状態や治療の経過などから、説明できることを指します。ですから、この点は、②や③と関連してきます。

たとえば、極端な例ですが、追突事故で首の過屈曲、首の過伸展が起こったから、足の小指に痺れが生じたというのでは、医学的な説明はできないということになります。

⑤単なる故意の誇張ではないと医学的に推定される

単なる故意の誇張ではないとは、訴える症状が大袈裟ではなく本当のものであるということです。

発言が過激で、症状の訴えが大袈裟など、被害者意識が余りにも強く、賠償志向も強く、加害者保険会社が非常識であると判断したときは、後遺障害が認められにくくなります。

つまり、被害者の方に常識があり、その訴えが信用できるということです。

たとえば、公共交通機関の利用が可能であると考えられるのに、過大な症状を訴えて常にタクシーを利用して通院するといったことは、故意の誇張であると判断されかねません。

もちろん、故意の誇張というべき症状の訴えがあっても、その訴える症状が受傷時の状態とそぐわないものであれば、その症状は(医学的に)説明できないものですから、故意の誇張かどうかは、②や④とも関連しているともいえます。

まとめ

「外傷性頸部症候群に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見などから証明することはできないとしても、痛みやしびれを生じさせるような事故受傷であり、当初から自覚症状があり、その原因を突き止めるために医師の診察・治療を受け、MRIの撮影も受けている。
その後も、痛みや痺れが継続していることが通院先や通院実日数から推測ができるところから、事故から現在までを総合して考えるのであれば、これは、後遺障害として認めるべきであろう。」

自賠責調査事務所がこのように判断したときは、14級9号が認定されるということになります。
逆に言えば、症状があるのに診察時にその訴えをしないとか、前に告げた症状だから今回はその症状を告げなくても良いと考えることとか、逆に大袈裟な訴えをするとかいうことは、後遺障害等級認定のためには、避けなければなりません。