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交通事故知識ガイド上肢及び手指 

上肢その9~10 橈骨遠位端骨折

上肢その9 橈骨遠位端骨折(コーレス骨折とスミス骨折)

橈骨遠位端部つまり橈骨の手関節に近い部分で骨折が生じるものです。
転倒時に手の平をついて橈骨遠位端に加わった力により発生するのがコーレス骨折、手の甲をついては橈骨遠位端部に加わった力により発生するのがスミス骨折です。

1)コーレス骨折

手関節が伸展位にあるときに発生することから、橈骨遠位端部伸展型骨折ともいいます。 橈骨の遠位骨片(手関節に近い方の骨片)が、手背方向つまり手の甲のほうへ転位(移動)します。
コーレス骨折

コーレス骨折が発生すると、食器のフォークを伏せて置いたような変形が見られます。

変形
健側の手で支えないと、患側の手はブラブラ状態で力が入りません。
橈骨の手のひら側を正中神経が走行していますが、その正中神経が折れた骨や腫れで圧迫されると、親指から薬指までに痺れが生じることもあります。
コーレス骨折
コーレス骨折はXP画像で確認できます。骨折部には、フォークの背のような形に変形した様子がみられます。
治療は、まず麻酔で除痛し、徒手整復を行います。徒手整復が奏功したときはそのままギプスやギプスシーネで固定します。
徒手整復を試みたものの、骨片がずれたままの場合には手術が必要になります。X線で透視しながら鋼線を刺し入れて骨折部を固定する方法や、骨折部を切開して整復してプレートで固定する方法があります。ロッキングプレートが開発されてからは、これによる固定を行うやり方が比較的多く行われてきています。

↓ロッキングプレート
ロッキングプレートプレート固定を行うと、早期に手関節が動かせるようになります。
早期にリハビリを開始すると、手関節の機能障害が残ることを防止できます。

2)スミス骨折

転倒の際に、手の甲を地面について骨折すると、骨折部は手のひらの方向に転位します。この骨折をスミス骨折と呼んでいます。

交通事故では、自転車やバイクのハンドルを握った状態のまま転倒したときに発生することがあります。
XP画像を確認すると、骨折片がコーレス骨折とは逆の手掌側に転位している状態が見られます。 その他の点は、概ねコーレス骨折と共通します。

スミス骨折

橈骨遠位端骨折、コーレス骨折とスミス骨折における後遺障害のポイント

1)徒手整復から固定するという治療法(固定療法)が行われたとき、6か月間の治療期間を経て症状固定と診断された場合は、手関節の可動域制限(伸展・屈曲)が残り、12級6号が認定される可能性がかなりあります。
この辺りは、少しでも手術をせずに固定療法で治療できる可能性があればそちらを選ばれる方もいらっしゃいますから、固定療法と手術とどちらが優れていると一概にはいえないでしょう。子供の場合は、骨の修復能力が高いため転位が多少あっても保存療法を選択することも多いようです。また、高齢者には手術が有効でないとの見解もあります。

2)手術が行われたときも、手関節の疼痛、握力の低下、前腕の回内・回外制限等が残る可能性はあります。このときは、手関節付近の骨の状態に器質的異常があるかどうかがポイントとなります。3DCT画像を撮影し、手関節付近の器質的異常の有無をチェックする必要があります。

上肢その10 橈骨遠位端骨折(バートン骨折)

橈骨遠位端骨折
コーレス骨折、スミス骨折、掌側バートン骨折、背側バートン骨折

ここでお書きするバートン骨折も橈骨遠位端骨折の1つです。関節外の骨折であるコーレス骨折・スミス骨折と異なり、バートン骨折は関節内骨折です。橈骨遠位端骨折の中では、重症例です。

バートン骨折は、橈骨の骨折片だけでなく、手根骨まで転位してしまったものです。遠位骨片が手根骨とともに背側(手の甲側)に転位しているものを背側バートン骨折、掌側(手のひら側)に転位しているものを掌側バートン骨折と呼びます。
多くの場合、バートン骨折は関節靭帯や関節包の損傷を合併します。徒手整復が困難であることが多く、手術療法が行われます。

受傷直後のXPで、関節面の転位が認められるときは、手術で完全な整復を行う必要があるとされます。関節面のずれが2mm以上あるかないかが手術療法を選択するかどうかの基準であるという見解もあります。
橈骨の短縮があると、疼痛や前腕の回内・回外運動の制限が予想されますので、やはり手術を行う必要性が生じます。橈骨短縮が6mm以上あるときは手術を行うべきとの見解もあります。

治療後も手関節の尺側(小指側)に慢性的な痛みがあるときは、尺骨の茎状突起部の偽関節の可能性が予想されます。XP、CTで確認する必要があります。

バートン骨折における後遺障害のポイント

1)バートン骨折は、橈骨の骨折片とともに手根骨が背側あるいは掌側に転位する脱臼骨折です。同時に靭帯や関節包を損傷していることが多く、難治性です。

症状は、事故直後から、手関節の強い痛み、腫脹、関節可動域の制限が起こります。
手関節に変形が見られることも多く、手指に力が入らず、十分に握ることができません。
骨折部は不安定な状態で、反対側の手で支える必要があります。
手指にしびれが生じ、後になって、親指の伸筋腱が切断されていることが判明することもあります。

2)後遺障害は、手関節の機能障害、重症例では、右手の脱力で、字を書けなくなることもあります。

骨折後の骨癒合状況を3DCTで確認する必要があります。
バートン骨折が起こったとき、手関節の可動域制限が残り、10級10号の後遺障害等級が認定される可能性が高いです。

3)二次的障害として、筋肉の線維・骨膜などの損傷により、本来骨がない筋肉の中に骨と同じ骨組織が形成される骨化性筋炎を発症することもあります。
手関節を曲げることができない、筋肉が突っ張って痛いなどの症状では、骨化性筋炎を疑います。 手関節を曲げることができないのは、筋組織内が骨化してしまって筋肉を動かすことができなくなるからです。XPやCTを撮影すると、筋肉内に存在するはずのない骨組織が形成されているのが確認できます。

4)万一骨折が放置されたり、徒手整復が不充分であったりしたときは、変形したまま骨が固まり(変形治癒)、手関節に10級10号以上の機能障害が残ることもあります。
また、遅発性の二次的障害ですが、手指の先が強烈に痺れる手根管症候群という神経の障害を合併することもあります。

変形骨癒合の例

変形骨癒合の例