搭乗者傷害保険
最終更新日:2026年03月23日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q搭乗者傷害保険とはどのような保険ですか?
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搭乗者傷害保険は、ご契約の自動車に搭乗中の運転者や同乗者が交通事故で死傷した場合に、契約時に定められた一定額の保険金が支払われる任意保険です。
この保険の最大の特徴は、加害者側からの賠償金や、ご自身の人身傷害保険とは別に受け取ることができる点です。
実際の治療費を計算するのではなく、あらかじめ決められた定額が支払われる「定額給付方式」を採用しており、速やかな支払いが可能です。
自損事故や過失の大きい事故でも補償され、損害賠償額から差し引かれることもないため、交通事故に遭われた際の経済的負担を大きく軽減できる重要な補償といえるでしょう。

目次

搭乗者傷害保険とは
搭乗者傷害保険は、ご自身が契約している自動車保険に任意で付帯できる特約です。契約車両に搭乗中の運転者や同乗者が交通事故で死傷した場合に、契約時に定められた一定額の保険金が支払われます。
他の保険と重複して受け取れる
この保険の最大の特徴は、加害者側の保険会社から支払われる賠償金や、ご自身の人身傷害保険金とは別に受け取ることができる点です。
つまり、複数の補償を重ねて受けられるため、経済的な負担を大きく軽減できる可能性があります。
定額給付方式で迅速な支払い
搭乗者傷害保険は、実際にかかった治療費を計算して支払うのではなく、あらかじめ契約で定められた金額が支払われる「定額給付方式」です。
たとえば、「骨折で〇円」、「〇日以上の入通院で〇円」「「入通院日額○円」「後遺障害〇級の場合〇円」「死亡の場合〇円」といった形で、けがの部位や症状の程度に応じて決まった金額が支払われます。
補償の対象者
契約車両に搭乗中の運転者および同乗者が補償の対象となります。
被保険者(保険の対象となる本人)の家族でなくても、契約車両の乗車中に事故に遭い、死傷すれば補償を受けられます。原則として、座席など「正規の乗車用構造装置のある場所」に搭乗していることが条件です。
搭乗者傷害保険が使える場合
搭乗者傷害保険は、被保険者が「急激かつ偶然な外来の事故」によって死傷した場合に保険金が支払われる仕組みです。具体的には次のようなケースが該当します。
- 被保険自動車の運行に起因する事故
- 運行中の飛来物や落下物との衝突
- 火災・爆発
- 被保険自動車の落下
保険金が支払われるためには、原則として被保険自動車に「搭乗中」であることが条件です。「搭乗中」とは、一般的に「乗車のためにドアや座席に手足をかけた時から、降車のために車外に両足をつける時まで」を指します。
ただし、裁判例では柔軟な解釈が示されています。たとえば、高速道路上で自損事故を起こした運転者が、後続車との衝突を避けるために車外へ避難し、その後、後続車にはねられて死亡した事案では、最高裁判所が支払いを認めました。
この判決では、最初の事故と車外での事故との間に相当因果関係が認められる限り、補償対象となると判断されています。具体的には、危険を避けるための自然な避難行動であったこと、事故が時間的・場所的に近接していたことなどが考慮されました。
したがって、事故後に車外で傷害を負った場合でも、搭乗者傷害保険が支払われる可能性があります。
搭乗者傷害保険の補償内容
搭乗者傷害保険は、交通事故によって死亡した場合、後遺障害が残った場合、あるいは傷害を負った場合に、保険契約であらかじめ定められた金額が支払われます。
たとえば、「死亡保険金○円」「後遺障害等級に応じて○円」「医療保険金(診断名や入院・通院日数に応じて)○円」といった形で、けがの部位や症状の程度などに応じて定額が支払われるのが一般的です。
加害者が加入する対人賠償責任保険や、ご自身が加入する人身傷害保険、自損事故傷害保険、無保険車傷害保険などから保険金が支払われる場合でも、搭乗者傷害保険の保険金はそれらとは別に受け取ることができます。
よくあるご質問
ここでは、搭乗者傷害保険についてよくいただく質問にお答えします。
自分の運転ミスによる自損事故(単独事故)でも使えますか?
自損事故でも搭乗者傷害保険は使えます。
搭乗者傷害保険は、事故を起こした運転者自身も補償対象です。保険金が支払われる条件は「被保険自動車の運行に起因する事故」とされており、相手がいる事故に限定されていません。
したがって、ご自身の運転ミスによる単独事故(自損事故)であっても、ご自身や同乗者の死傷について保険金を受け取ることができます。
自分の過失が大きい事故でも使えますか?
ご自身の過失が大きい事故でも、搭乗者傷害保険は使えます。
搭乗者傷害保険は、事故を起こした運転者自身も補償対象となる保険です。そのため、ご自身の過失の程度が大きい事故であっても、保険金を受け取ることができます。
搭乗者傷害保険をもらうと、加害者の保険会社からもらえる金額が減りますか?
原則として、減りません。
搭乗者傷害保険から支払われた保険金は、加害者の任意保険会社などから受け取る損害賠償額から差し引かないルールです。
これは、搭乗者傷害保険が実際の損害を填補する性質のものではなく、搭乗者を厚く保護することを目的とした保険である、という考え方に基づいています。
ただし、例外的に、加害者が被害者に支払うべき「慰謝料」の金額を決める際に、搭乗者傷害保険金の支払いが考慮されることがあります。これは主に、運転者自身の過失によって同乗者を死傷させてしまった事故で問題となります。
このような場合、裁判所は「搭乗者傷害保険に加入する人(運転者)は、万一同乗者を死傷させた場合に、支払われる保険金を同乗者への慰謝料の一部に充てることを想定しているのが一般的である」という考えから、同乗者への慰謝料額を決めるときに搭乗者傷害保険の支払いが考慮されるケースがあります。
搭乗者傷害保険を使うと、翌年の自動車保険の保険料は上がりますか?
搭乗者傷害保険は「ノーカウント事故」として扱われるため、この保険を使用しても翌年の等級に影響せず、保険料も上がりません。
これは、搭乗者傷害保険が被保険者自身やその同乗者を守るための補償であり、事故の責任の有無とは無関係に支払われる保険だからです。
対人賠償保険や対物賠償保険などの賠償責任保険を使用した場合は、通常、翌年の等級が下がり保険料が上がりますが、搭乗者傷害保険を単独で使用する場合にはそのような影響はありません。
そのため、搭乗者傷害保険を使える状況であれば遠慮なく請求することをおすすめします。
搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いは何ですか?
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は、どちらもご自身の自動車保険から支払われる保険ですが、その性質や補償範囲に次のような違いがあります。
① 保険金の支払われ方
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搭乗者傷害保険
契約時に決められた定額が支払われます。けがの部位や入通院日数などに応じて、あらかじめ定められた金額が支払われる仕組みです。生命保険に近いです。
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人身傷害保険
治療費・休業損害・慰謝料などを含め、保険会社の基準に基づいて算定された実際の損害額が、契約金額を上限に支払われます。過失割合にかかわらず補償されるのが特徴です。
② 補償される人の範囲
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搭乗者傷害保険
原則として、契約車両に搭乗中の人(運転者・同乗者)です。
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人身傷害保険
契約車両に搭乗中の人に加え、契約内容によっては被保険者やその家族(配偶者・同居親族など)も対象となります。他車搭乗中や歩行中・自転車事故も補償対象となることがあります。
③ 他の保険金との関係
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搭乗者傷害保険
損害填補目的ではないため、加害者からの賠償金や人身傷害保険などと別に受け取ることができます。
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人身傷害保険
実損填補型の保険であるため、加害者から賠償金を受け取ったときなどは保険金額が調整されます。
まとめ:まずは弁護士に相談
搭乗者傷害保険は、交通事故に遭った際の経済的な支えとなる重要な保険です。
ただ、人身傷害保険や加害者への損害賠償請求との関係で、どの保険をどの順番でどう請求すべきか迷われることもあるかもしれません。支払い基準や根拠について保険会社の説明がわかりにくいケースもあります。
保険の請求、加害者への損害賠償請求との関係について少しでも疑問や不安があれば、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。個別の状況を正確に把握したうえで、最適な対応策をご提案します。
よつば総合法律事務所には、交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士 粟津 正博













