適正な慰謝料をもらうための通院頻度

最終更新日:2026年04月22日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q適正な慰謝料をもらうため、なるべく多く通院したほうがよいですか?

「通院回数を増やせば慰謝料が増える」と誤解されがちですが、実務ではそう単純ではありません。むしろ、医師の指示を無視した過剰な通院は、治療費の打ち切りや示談交渉のトラブルを招くリスクがあります。

交通事故の慰謝料のうち、通院についての「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」は、「入通院期間」を基礎として計算されるのが原則です。もっとも、通院が長期にわたる場合には、実際の通院日数に基づいた上限(目安)が設けられることがあります。

大切なのは「多く通院すること」ではなく、「医師の指示に従い、症状に応じた適切な頻度で継続的に通院すること」です。

具体的には、症状の内容にもよりますが、医師の指示のもと月10回程度(2~3日に1回)のペースで通院することが、結果として適切な評価に繋がりやすい傾向があります。

本記事では、通院頻度と慰謝料の関係、過多・過少それぞれのリスク、よくある疑問について詳しく解説します。

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適正な慰謝料のための通院頻度の目安

適切な通院頻度を考える上で、まずは慰謝料がどのように算出されるのかを知っておく必要があります。

慰謝料の算定基準

交通事故の入通院慰謝料には、主に次の3つの算定基準があります。①自賠責基準、②任意保険基準、③裁判所の基準です。

① 自賠責基準

自賠責保険が用いる最低限の基準です。

慰謝料は「4300円×対象日数」で計算されます。対象日数は、「治療期間(事故日から最終通院日までの日数)」と「実際の通院日数×2」を比べて、少ない方を採用します。

たとえば、60日間通院し、実際に病院へ行ったのが20回だった場合、「20日×2=40日」と「60日」を比較して40日が採用され、4300円×40日=172000円となります。

この計算式からわかるとおり、自賠責基準では2日に1回程度の通院が慰謝料上の上限となります。それ以上通院しても、計算上の日数は変わりません。

② 任意保険基準

加害者側の任意保険会社が使用する基準で、各社の内部基準のため非公開です。自賠責基準と裁判基準の中間程度の水準が多いです。

③ 裁判所の基準

裁判所が判決で使う基準であり、一般的には3つの基準の中で最も高額です。「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)の算定表をもとに計算し、弁護士が示談交渉をする際もこの基準を使います。

裁判基準には、けがの程度に応じて2種類の算定表があります。

  • 別表Ⅰ:骨折など、レントゲンやMRIといった画像検査で症状が確認できる「他覚所見あり」の場合に使用します。
  • 別表Ⅱ:むち打ち症で他覚所見がない場合や、軽い打撲・軽い擦り傷などの場合に使用します。

裁判基準では、通院期間に応じて慰謝料が決まります。

たとえば、むち打ち(別表Ⅱ)で3か月通院した場合は53万円、6か月通院した場合は89万円が目安となります。

ただし、通院期間が長期にわたる場合は、実際の通院日数が少なければ慰謝料が減額されることがあります。

医師の指示に基づき2~3日に1回が目安

通院頻度の目安が「2~3日に1回」とされる背景には、裁判実務における慰謝料の計算ルールが関わっています。

裁判基準を用いる場合、慰謝料は原則として「入通院期間」で算定します。しかし、通院が長期にわたり、通院日数が少ない場合は、「実際の通院日数」をもとに期間を調整して計算することがあります。

その目安として、次の倍率が実務上の基準となっています。

  • 重いけが(別表Ⅰ)の場合:実通院日数×3.5倍
  • むち打ち等(別表Ⅱ)の場合:実通院日数×3倍

この計算では、①「実通院日数×倍率」で算出した日数と、②実際の治療期間を比較し、短い方を慰謝料算定の基礎期間として使います。つまり、通院日数が少ないと、実際には長期間治療を続けていても計算上の対象期間が短くなり、慰謝料が減額されてしまう可能性があるのです。

もっとも、この倍率計算は、あくまで「通院が長期にわたる場合」などに期間を圧縮して計算するための実務上の目安です 。全ての事案で自動的にこの倍率が適用されるわけではなく、個別の症状や通院の必要性によって判断が分かれます。

むち打ち(別表Ⅱ)で1か月(30日間)治療の具体例

むち打ち(別表Ⅱ)で1か月(30日間)治療を続けたケースで具体的に確認してみましょう。

通院ペース 計算 結果
月10日
(3日に1回)
10日×3倍
=30日
治療期間30日と一致。1か月分の慰謝料が満額認められる。
月2日 2日×3倍
=6日
治療期間30日を下回る。
6日分を基礎に計算され、減額される可能性がある。
月11日以上 11日×3倍
=33日
上限は治療期間の30日。10日通院の場合と金額は変わらない。

このように、慰謝料の減額を防ぎつつ、治療期間に応じた評価を受けるためには、「実通院日数×3(または3.5)」が実際の治療期間を大幅に下回らないようにするという合理性があります。

これを月単位で換算すると、月10回程度、すなわち「2~3日に1回」というペースが合理的な目安となります。

ただし、あくまでこれは目安です。医師から「週1回でよい」と指示されている場合や、骨折の固定期間中で安静を要する場合など、医療上の理由から通院頻度が下がることもあります。

通院頻度が多すぎる場合のリスク

「少しでも慰謝料を増やしたい」という気持ちから、医師の指示以上に毎日通院しようとする方がいます。しかし、必要以上の通院は慰謝料の増額につながらないばかりか、むしろ次のようなリスクがあります。

治療費の打ち切りが早くなる可能性

加害者側の任意保険会社は、治療の必要性・相当性を確認しています。

医学的に必要とは言えない過剰な通院を続けていると、「治療が漫然と行われている」「実態は症状が軽いにもかかわらず通院を続けている」と判断され、治療費の支払いを早期に打ち切られるリスクが高まります。

示談交渉でもめる可能性

通院期間や日数が長期・高頻度になるほど、治療費や慰謝料の総額が増え、示談交渉において保険会社から強く争われやすくなります。

自賠責保険の傷害部分の限度額は120万円であり、これを超えた部分は加害者側の任意保険会社の負担となります。

そのため、自賠責保険の限度額(120万円)に近づいたり、これを超えたりするようなケースでは、保険会社自体の負担額が増えるため、より厳しく通院の必要性を精査される傾向があります。

過失がある場合に自己負担額が増える

交通事故の賠償においては、被害者側にも過失がある場合、その割合に応じて受け取れる賠償金が減額されます(過失相殺)。

たとえば、被害者の過失割合が20%の場合、治療費・慰謝料などの総額から20%が差し引かれた金額が最終的な受取額となります。過剰な通院で治療費が膨らむと、20%の自己負担分もその分だけ膨らむため、手元に残る金額は少なくなります。

通院頻度が少なすぎる場合のリスク

仕事や家事が忙しく、思うように通院できないという方も多いと思います。しかし、通院頻度が低いと、慰謝料の算定において不利になることがあります。

症状が軽かったり治ったりと判断される可能性

交通事故の慰謝料は、被害者が受けた「肉体的・精神的苦痛」を補うためのものです。そのため、痛みの程度や治療の必要性が金額を左右します。

特にむち打ち症のように画像検査では症状が写らないケース(他覚所見なし)では、被害者本人の訴えと通院実績が重要な証拠となります。

通院頻度が極端に低いと、保険会社や裁判所から「日常生活に支障がない程度には回復していた」「症状はそれほど重くなかった」と評価され、慰謝料の算定に低い基準が適用されるリスクがあります。

また、通院と通院の間が大きく空いていると、「その期間に症状が悪化したのは事故とは別の原因ではないか」と疑われることもあります。

慰謝料が少なくなる可能性

通院が長期にわたる場合の「3倍ルール」「3.5倍ルール」が適用されると、実際の通院期間よりもはるかに短い期間として慰謝料が計算され、受け取れる金額が減ってしまうことがあります。

具体例で確認しましょう。むち打ちで6か月(180日)間治療を続けたとします。

通院状況 計算 慰謝料の目安
月10回×6か月
=60日通院
60日×3倍=180日
(治療期間と一致)
89万円
(6か月分が満額)
月3回×6か月
=18日通院
18日×3倍=54日
(約1.8か月分)
約36万円程度
(89万円から減額)

6か月間、真剣に治療に向き合っていながら、通院頻度が足りなかっただけで慰謝料が半分以下になってしまうことも理屈としてありえるのです。症状が続いている間は、医師の指示にしたがって、無理のない範囲で継続的に通院することをおすすめします。

よくあるご質問

通院の形態や内容によって、慰謝料の対象となるかどうかの判断は異なります。実務上の細かな取り扱いについて回答します。

医師の診察なくリハビリのみでも通院回数に入りますか?

リハビリも治療行為の一環であり、通院日数に含まれます。

ただし、治療の経過は「経過診断書」や「診療報酬明細書」によって確認されるため、医師の診察を定期的に受けたうえで、治療内容や症状の経過を診断書にきちんと記録してもらうことが重要です。

リハビリだけを漫然と繰り返し、医師への報告が不十分だと、治療の必要性を疑われる原因になります。

病院ではなく整骨院への通院です。通院回数に入りますか?

整骨院(接骨院)での施術も通院日数として考慮されます。

ただし、整骨院への通院は「医療行為」ではなく「柔道整復師の施術」であるため、保険会社から必要性を疑われやすいという側面があります。

整骨院に通う際は、①事前に医師の許可・同意を得ること、②加害者側の保険会社にも連絡しておくこと、③病院への通院も月1回以上は継続することなどが重要です。

また、整骨院では診断書の発行やレントゲン・MRIなどの画像検査、薬の処方ができません。後遺症が残った場合の後遺障害認定には医師による診断書が不可欠ですので、整骨院のみに通うことは避け、医師の診察も受け続けてください。

自宅で療養しました。通院回数に入りますか?

原則として、自宅での療養は通院日数にはなりません。

ただし、例外的に「入院期間」として評価されるケースがあります。たとえば、骨折でギプスを装着しており医師から安静を指示されていた期間、入院が必要でありながら都合上早期退院を余儀なくされた期間などがこれに該当することがあります。

自宅療養を余儀なくされた事情がある場合は、医師にその旨を診断書へ記載してもらうことを検討してください。

毎日通院しても問題はありませんか?

毎日通院すること自体は禁止されていませんが、慰謝料の計算において有利になるケースはあまりありません。

裁判基準では通院日数ではなく通院期間が基準となるため、毎日通院しても数日に1回のペースで通院しても、慰謝料額は通常は変わりません。

また、医師の指示なく毎日通院することは、過剰診療とみなされ治療費の減額や打ち切りにつながる恐れもあります。医師の指示に沿った通院頻度を守ることが最善です。

週に1回程度しか通院できませんが問題はありませんか?

週1回の通院では、「3倍ルール」「3.5倍ルール」が適用され、慰謝料が減額されることがあります。

週1回(月4~5日)の通院を3倍すると月12~15日分となり、実際の通院期間よりも短い期間として慰謝料が算出されてしまう可能性があります。ただし、医師の指示や症状によっては、週1回程度の通院が適切ということもあります。

症状がないのに通院を続けてもよいですか?

適切ではありません。入通院慰謝料は、治癒(完治)または症状固定(これ以上の改善が見込めない状態)と診断されるまでの期間を対象とするものです。

症状が消失しているにもかかわらず通院を続けることは、損害賠償の対象外となるだけでなく、保険金の不正請求となりえます。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

通院頻度と慰謝料の関係を整理すると、次のポイントが重要です。

  1. 医師の指示に従い、2〜3日に1回(週2〜3回)を目安に継続して通院する

    治癒または症状固定まで通院を続けることが、適正な慰謝料を受け取るための基本です。

  2. 多すぎる通院も少なすぎる通院も、慰謝料に悪影響を及ぼす

    医師の指示を超えた過剰な通院は、漫然治療とみなされ治療費の打ち切りや示談交渉のトラブルを招きます。反対に、通院頻度が低すぎると慰謝料算定に不利な評価を受けることになります。

  3. 通院状況に不安があれば、早めに弁護士へ相談する

    「仕事の都合で通院が少なくなってしまった」「保険会社から治療費の打ち切りを告げられた」「提示された慰謝料が妥当かわからない」といった場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

交通事故の賠償実務に精通した弁護士であれば、通院状況をふまえた適正な慰謝料の見通しを示し、保険会社との交渉を有利に進めるサポートをすることができます。

よつば総合法律事務所では、交通事故に関する無料相談を承っております。通院中の方、これから治療を始める方、示談交渉でお困りの方など、どのタイミングでも遠慮なくご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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