後遺障害の事前認定ができない場合

最終更新日:2026年04月17日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q後遺障害の事前認定ができない場合、どうすればよいですか?

交通事故でけがを負い、治療を続けてもこれ以上回復が見込めない「症状固定」の状態になった場合、自賠責保険に対して後遺障害の等級認定を申請する手続きが必要になります。

この手続きには「事前認定」と「被害者請求」の2種類があり、相手方の任意保険会社が手続きを代行する「事前認定」という手続きが一般的に利用されています。しかし、状況によっては事前認定を利用できないケースがあります。

そのような場合でも、被害者が自ら自賠責保険に直接請求する「被害者請求」という方法があります。事前認定はあくまで任意保険会社がサービスとして行う手続きです。事前認定が使えなくても、後遺障害の等級認定の手続きは可能です。

交通事故でお困りの方へ
弁護士による無料相談受付中です。
タップして電話をかける
0120-916-746受付時間:平日・土日祝日 / 6:00~22:00
※本予約ダイヤルでの電話相談は行っておりません。

事前認定と被害者請求

後遺障害の等級認定を受けるための手続きには、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。どちらの手続きでも認定機関(損害保険料率算出機構)が審査を行いますが、手続きの流れが異なります。

事前認定は、加害者の任意保険会社が窓口となり、自賠責保険への等級認定申請を代行する方法です。被害者側の手間が少なく、書類の準備なども保険会社が行います。任意保険会社が自社の保険金を支払う前に等級をあらかじめ確認するため、「事前認定」と呼ばれます。

被害者請求は、自動車損害賠償保障法(自賠法)16条に基づき、被害者が直接、加害者の加入する自賠責保険(共済)に対して損害賠償を請求する方法です。後遺障害の等級認定も、この請求の一環として行われます。事前認定と異なり、被害者自身でレントゲン・MRI・CTなどの画像資料や診断書・診療報酬明細書(レセプト)などを取り揃えて提出する必要があります。手間はかかりますが、提出する資料を精査し、納得のいく形で提出できるメリットがあります。

詳しくは「症状固定・後遺障害の等級認定」もご参照ください。

事前認定

被害者請求

後遺障害の事前認定ができない場合

事前認定は、加害者の任意保険会社が「一括払い(対人任意一括払い)」というサービスを提供していることが前提であることが多いです。

そのため、次のような状況では事前認定の手続きが利用できない、または進められないことがあります。

加害者が任意保険未加入

事前認定の手続きを行うのは「加害者の任意保険会社」です。加害者が自賠責保険にのみ加入しており、任意保険に未加入の場合、手続きを代行する保険会社が存在しないため、事前認定は利用できません。

この場合は、被害者が自賠法16条に基づいて直接自賠責保険へ請求する「被害者請求」、または加害者が自賠法15条に基づいて請求する「加害者請求」のいずれかによることになります。

加害者が不明

ひき逃げや当て逃げなど、加害者が特定できない場合は、どの保険会社が責任を負うべきか特定できません。事前認定は加害者の任意保険会社が行う手続きですから、その主体が存在しない以上、事前認定は物理的に利用できません。

加害者が不明な場合に後遺障害の等級認定を受ける手段として、自賠法72条に基づく「政府保障事業」の活用が考えられます。

これは、加害者が不明または無保険のために賠償を受けられない被害者を救済するため、国が損害を立て替え払いする公的な制度です。後遺障害の等級認定も行われ、認定された等級に応じて慰謝料逸失利益が支払われる点は、通常の自賠責保険とほぼ同様です。

なお、政府保障事業への請求にあたっては、事故が実際に発生したことを証明する資料(交通事故証明書実況見分調書など)が必要です。また、健康保険や労災保険など他の社会保険から給付を受けられる場合は、それらを先に使うことが求められる点にも注意が必要です。

事故発生や受傷について任意保険会社が否定

加害者の任意保険会社が「この事故でけがをするはずがない」「事故の態様が異なる」として、事故と傷害の因果関係を否定する場合、保険会社は一括払い対応を拒否することがあります。

事前認定は任意保険会社が保険金を支払う前提として行われるものです。保険会社が支払いそのものを拒絶している状況では、事前認定の手続きも進みません。

この場合、被害者が自ら資料を揃えて被害者請求を行うことで、自賠責保険の判断を求めることになります。

人身傷害保険を使った場合

被害者自身が加入している「人身傷害保険」を優先的に使う場合、事前認定を利用できないケースがあります。

そもそも事前認定とは、加害者の任意保険会社が「一括対応(対人任意一括払い)」という形で自賠責保険分もまとめて被害者に支払うサービスの一環として行われるものです。つまり、加害者側の保険会社が支払いの窓口を担っていることが前提です。

被害者自身が加入する「人身傷害保険」を優先的に使う場合、加害者側の保険会社がこの一括対応の窓口に立たないケースがあります。

窓口にならない以上、保険会社がサービスとして等級認定を代行する理由もなくなるため、事前認定が行われないことがあります。

なお、人身傷害保険会社も人身傷害保険金を支払う前提として自賠責保険に必要な書類を提出の上、後遺障害の等級を確認することが可能です。これを「人傷一括の事前認定」ということがあります。

労災保険を使った場合

仕事中や通勤中の事故は、交通事故であると同時に労働災害でもあります。このような場合、労災保険と自賠責保険のどちらを先に使うかは、被害者が自由に選ぶことができます。

労災保険を先行して使う場合、手続きの窓口は「加害者側の任意保険会社」ではなく「労働基準監督署(国)」になります。

後遺障害の等級認定は、自賠責保険とは別のプロセスで進みます。

症状固定後、被害者本人が診断書やレントゲン写真などを添えて「障害補償等給付支給請求書」(様式第10号)(業務災害)または「障害等給付支給請求書」(様式16号の7)(通勤災害)を所轄の労働基準監督署長に提出し、必要に応じて専門医による確認を経て障害等級が認定されます。

労災の等級認定、障害補償給付が支給された後で、改めて慰謝料等を含む損害賠償金を決めるために、任意保険会社が事前認定を行うことになるでしょう。

等級を判断する基準は自賠責保険と共通していますが、認定を行う機関が異なるため(自賠責は損害保険料率算出機構、労災は労働基準監督署長)、認定結果に差異が生じることもあります。

なお、労災保険と自賠責保険はどちらか一方しか使えないわけではなく、両者の制度を並行して利用することができます。

事前認定ができない場合は被害者請求

事前認定が利用できない場合、後遺障害の等級認定を受けるための主な手段は「被害者請求」です。

被害者請求では、次の資料などを医療機関などから取り寄せて提出します。

  1. 後遺障害診断書(所定の書式で医師が作成したもの)
  2. 画像記録(レントゲン、CT、MRIなど)
  3. 診断書
  4. 診療報酬明細書(レセプト)
  5. 事故発生状況報告書

被害者請求の大きな特徴は、認定に有利と考えられる資料を被害者側で判断して提出できる点にあります。

被害者請求の詳細については「自賠責保険の補償内容や請求の流れを解説」もご参照ください。

よくあるご質問

ここでは、後遺障害の事前認定ができない場合について、よくあるご質問にお答えします。

「事前認定の結果、非該当でした」と言われました。諦めるしかないですか?

諦める必要はありません。

事前認定で「非該当(等級なし)」という結果が出た場合でも、「異議申し立て」という手続きが残されています。

異議申し立てで結論を覆すには、初回の申請では不足していた可能性のある新たな医学的証拠(追加の検査結果や、医師による詳細な意見書など)を提示することが極めて重要です。

異議申し立てについては「後遺障害の認定結果への異議申し立てはどう進めればよいですか?」もご参照ください。

被害者請求は自分でもできますか?

制度上は、被害者本人が自分で行うことが可能です。ただし、実際に取り組んでみると、書類の収集と資料の選定が想定以上に難しいという困難に直面することが少なくありません。

医療機関から診断書・画像記録・レセプトを取り寄せるだけでも手間がかかります。それ以上に難しいのが、「どの資料を、どのような形で提出するか」という判断です。

後遺障害の認定基準は傷害の部位ごとに異なり、たとえば脳の障害、脊髄の障害、手足の障害では、それぞれ確認すべき検査項目や診断書への記載ポイントが違います。

認定基準に合致した資料を自分だけで揃えることは難易度が高く、書類の不備や資料の選定ミスが認定結果に影響するリスクもあります。不安を感じる場合は、早めに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ:悩んだら弁護士に相談

後遺障害の等級認定は、その後の賠償金額を大きく左右する重要なステップです。

一方で、「症状固定日をいつにするか」「想定される等級はどれくらいか」「提出する診断書の記載は認定基準に沿っているか」といった判断は、専門的な知識が必要です。

手続きの方法や書類の準備で迷いが生じた場合は、早い段階で弁護士に相談することが、適切な認定を受けるための近道となります。

よつば総合法律事務所では、後遺障害の等級認定から示談交渉まで、交通事故被害に関するご相談を承っております。相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

関連情報

後遺障害Q&A一覧のトップへ戻る