相手方任意保険、健康保険、労災保険のどれを使えばよいですか。
- Q8:相手方任意保険、健康保険、労災保険のどれを使えばよいですか?
- A相手方任意保険を優先して考えましょう。過失相殺等の事情がある場合、健康保険・労災保険の利用も検討しましょう。
(文責:弁護士 大澤 一郎)
相手方任意保険・健康保険・労災保険とは
- 相手方任意保険
交通事故の加害者である相手方が加入している保険です。
ただし、加害者が任意保険に未加入の事案もあります。 - 健康保険
病気になった際に通常利用する保険です。 - 労災保険
通勤中又は業務中の事故の際に利用できる保険です。
労災保険の詳細は「交通事故と労災保険」をご参照下さい。
相手方任意保険を使うメリット・デメリット
メリット
- 交通事故の場合の原則的な保険なので手続がスムーズに進みます。
- 病院窓口での自己負担が原則不要です。
デメリット
- 過失相殺がある事案等の場合には受領額が減ってしまうことがあります。詳細は、「加害者側の保険会社から「健康保険を使って通院して欲しい」と言われました。どうしたらよいでしょうか?」をご参照下さい。
- 労災保険と比較して治療費が打ち切りされやすい傾向にあります。
- 労災保険と比較して休業損害が打ち切りされやすい傾向にあります。
- 労災保険と比較して後遺障害申請が認められにくい傾向にあります。
健康保険を使うメリット・デメリット
メリット
- 被害者に過失がある事案等では健康保険を利用した方が受領できる賠償額が多くなることが多いです。詳細は、「加害者側の保険会社から「健康保険を使って通院して欲しい」と言われました。どうしたらよいでしょうか?」をご参照下さい。
デメリット
- 病院が「(当院では)健康保険は使えない」と健康保険利用を事実上拒むことがあります。
- 病院が診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書、その他の書類の作成を拒むことがあります。
- 窓口負担で一度お金を立替する可能性があります。
労災保険を使うメリット・デメリット
メリット
- 過失相殺がされません。過失がある事案で有利です。
- 相手方任意保険と比較して治療期間を長めに考えてくれる傾向があります。
- 相手方任意保険と比較して休業補償給付(休業損害)を長めに考えてくれる傾向があります。
- 相手方任意保険と比較して後遺障害認定がされやすい傾向があります。なお、相手方任意保険(自賠責保険)と労災保険の両方に対して後遺障害申請をすることが可能です。
- 休業特別支給金の受領が可能です。例えば、休業損害の場合、本来の休業損害の約20%
に相当する金額が休業損害とは別途受領できます。
参考:東京労働局 労災保険給付の一覧
デメリット
- 職場の協力がないと手続が難しいです。
- 役所の窓口や病院の窓口で「加害者の任意保険しか使えません」などと言われ労災保険の利用がしにくいことがあります。
- 慰謝料の支払はありません。慰謝料は別途相手方任意保険会社と協議する必要があります。
- 休業損害全額の支払がないことが多いです。具体的には休業損害の60%程度の支払のことが多いです。残部は別途相手方任意保険会社と協議する必要があります。
まとめ
- 相手方任意保険の利用を優先して考えましょう。
- 過失相殺等の事情がある場合、健康保険・労災保険の利用も検討しましょう。
- 複数の保険を併用できる場合もありますので併用も検討しましょう。
(文責:弁護士 大澤 一郎)