交通事故の見舞金とは?

最終更新日:2025年06月30日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q交通事故の見舞金とは何ですか?誰からいくらもらえますか?

交通事故の見舞金とは、事故の被害者に対して支払われるお見舞いの金銭のことです。

主に2つの種類があり、ひとつは加害者が謝罪の気持ちを込めて渡すもの、もうひとつは保険会社が契約に基づいて支払う保険金です。

加害者からの見舞金は5万円から10万円ほどが目安とされ、法的義務ではありませんが社会的な慣習として支払われることがあります。

一方、保険会社からの見舞金は、搭乗者傷害保険などによって支払われ、契約内容や通院日数、けがの程度などにより金額が決まります。

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交通事故の見舞金は2種類

交通事故の被害者が受け取る見舞金には、大きく分けて2つの種類があります。①加害者からの見舞金と②保険会社からの見舞金です。

それぞれの見舞金には性質や意味合いが異なります。誤解やトラブルを防ぐためにも、違いを正しく理解しておくことが大切です。

① 加害者からの見舞金

加害者から支払われる見舞金は、法的な義務ではなく、あくまで「お詫びの気持ち」を形にしたものです。

一般的には、加害者が被害者のもとを訪れて謝罪する際に、現金や品物(果物、花など)を手渡すかたちで渡されます。これは、社会常識に照らして「お見舞いの意思を示す行動」として行われるものです。

加害者自身の判断や、保険会社からのアドバイスにより支払われることが多く、金額も一定ではありません。

ただし、加害者が見舞金を持って訪れた場面では、被害者として感情が揺れ動くことも少なくありません。

「そこまでひどいけがではなかった」
「自分にも少し落ち度があったかもしれない」

といった発言を気まずさや同情心からしてしまうと、その言葉が示談交渉や過失割合の判断に影響することがあります。

とくに、加害者の保険会社の担当者が同席している場合は、発言内容に慎重になる必要があります。「お見舞い」は感情的な場面になりやすいため、あらかじめ心構えをしておくことも大切です。

② 保険会社からの見舞金

交通事故に遭ったとき、自分が加入している保険会社から支払われる保険金が「見舞金」として扱われることがあります。

代表的なのが、任意保険に含まれる「搭乗者傷害保険」です。これは、契約している車に乗っていた人が事故でけがをしたり亡くなったりした場合に、契約内容に応じた金額が支払われる保険です。

この保険金は、被害者が「自分の保険会社」に対して請求するものです。加害者側の保険会社から支払われる賠償金とは別の制度です。

事故後に保険会社に連絡し、必要書類をそろえて請求することで支払いが受けられます。支払われる金額は、入院や通院の日数、けがの程度などに応じて決まります。

「見舞金」と呼ばれることはありますが、実際には保険契約に基づいた保険金です。そのため、加害者の謝罪や気持ちとは関係なく、手続きによって淡々と支払われる点が特徴です。

加害者からの見舞金の相場

加害者から渡される見舞金には、法律上の基準がありません。

もっとも、一般的な傾向としては、5万円~10万円程度であることが多いです。事案によっては1万円~30万円程度のこともあります。

この金額は、けがの重さや事故の状況、加害者の反省の程度によって変わります。場合によっては、より高額の見舞金が示されることもありますが、金額が大きくなるほど、受け取る側としては注意が必要です。

見舞金はあくまで「お見舞い」として支払われるもので、法的な損害賠償とは原則として別物です。

加害者から見舞金を受け取る場合の注意点

加害者からの見舞金には、単なる「お見舞い」にとどまらず、法的・社会的にいくつかの影響があります。

ここでは、見舞金を受け取ることで起こりうる2つの注意点を紹介します。

① 刑罰が軽くなるかもしれない

人身事故の場合、加害者が刑事事件として処罰される可能性があります。

そのような状況で、被害者が見舞金を受け取った事実は、「加害者が反省している」「被害者が許している」といった評価につながり、不起訴や執行猶予など、刑が軽くなる材料として扱われることがあります。

加害者への処罰を強く求めたいという気持ちがある場合は、見舞金の受け取りが刑事罰に影響することもあるため、慎重な判断が必要です。

② 最終的な賠償額が減るかもしれない

見舞金と損害賠償金は本来別物です。

しかし、加害者やその保険会社が「見舞金は損害賠償の一部」と主張してくるケースもあります。

特に、金額が大きい場合は、損害賠償額から差し引かれる可能性が高まります。

受け取る際の会話ややりとりの中で、「これで済んだ」と見なされることもあるため、損害賠償とは別の支払いであることを、できるだけ文書で明確にしておくと安心です。

保険会社からの見舞金の相場

保険会社から支払われる見舞金(搭乗者傷害保険金)は、契約内容によって金額が決まります。

主に「日額方式」と「部位・症状別払い」のいずれかの方法で支給されるのが一般的です。

  • 日額方式
    入通院の日数に応じて支払われるタイプです。たとえば「1日あたり1万円」と設定されていれば、「1万円 × 通院日数分」が保険金として支払われます。
  • 部位・症状別払い
    けがの部位や症状ごとに定められた金額が支払われます。たとえば骨折やむち打ちなど、けがの内容によって支給額が異なります。

保険会社から見舞金を受け取る場合の注意点

保険会社からの見舞金は、契約に基づいて支払われる保険金の一種です。受け取る際に注意しておきたいポイントを確認しておきましょう。

① 自分の自動車の保険会社に確認して漏れを防ぐ

保険金の請求は、被害者自身が加入している任意保険会社に対して行います。

事故直後は混乱しており、請求できる補償を見落としやすいものです。「搭乗者傷害保険」など、見舞金的な性質の保険が付帯していることに気づかないまま、手続きを忘れてしまうケースもあります。

まずは、自分の加入している保険内容を確認し、受け取れる補償がないかチェックしましょう。

特約やセットプランに含まれていることもあるため、契約書類が手元にない場合は、保険会社に直接問い合わせることをおすすめします。

② 自動車保険以外の保険会社に確認して漏れを防ぐ

交通事故でけがをした場合、自動車保険以外にも請求できる保険があることがあります。
たとえば、傷害保険や生命保険などに加入していれば、それらの保険でも見舞金や保険金を受け取れる可能性があります。

勤務先で加入している団体保険や、家族が契約している保険に含まれる補償が適用されるケースもあるため、契約者本人だけでなく、家族全体の保険契約を一度整理しておくと安心です。

事故後の申請には期限があるため、見舞金のもれがないよう、早めに確認・申請することが大切です。

見舞金に関するよくあるご質問

見舞金を受け取る際には、損害賠償や税金との関係など、気になる点がいくつも出てきます。ここでは、交通事故の見舞金に関してよくあるご質問とその回答を紹介します。

見舞金を受け取ると追加の請求ができなくなりますか?

いいえ、必ずしもできなくなるわけではありません。

ただし、見舞金を受け取る際に「これで全て解決した」と誤解されるような言動や書類のやりとりがあった場合、後の損害賠償請求に影響が出ることがあります。

とくに、加害者から受け取る見舞金については注意が必要です。示談書や領収書に「これ以上の請求はしない」などの文言が入っている場合、その記載が有効とされる可能性があります。

そのため、見舞金を受け取る場合には、次のような対応をしておくと安心です。

  • 見舞金は損害賠償とは別であることを明確にする
  • 「これ以上の請求はしない」というような表現の書面は作成しない

最終的な示談前にお金を受け取る方法はありますか?

最終的な示談前にお金を受け取るには、いくつかの方法があります。見舞金以外にも、示談成立前に金銭を受け取る制度が存在します。

代表的な方法は次の3つです。

  1. 自賠責保険への被害者請求
    加害者側の自賠責保険に、被害者自身が直接請求を行う制度です。治療費休業損害などについて、120万円までの範囲で支払いが受けられます。
  2. 自賠責保険の仮渡金制度
    事故直後の生活費や治療費に充てるための、前払い制度です。けがの程度により、5万円・20万円・40万円、死亡事故の場合は290万円が支給されます。
  3. 任意保険の内払い制度
    加害者側の任意保険会社に対して、賠償金の一部を先に支払ってもらう方法です。特に、休業損害や治療費など早期の補填が必要な費目では、保険会社と交渉のうえ支払いが認められることがあります。

ただし、いずれの制度も請求には証拠書類や理由説明が必要であり、すぐに支給されるとは限りません。

見舞金には贈与税がかかりますか?

原則として、見舞金には贈与税はかかりません。

加害者から被害者に支払われる見舞金は、一般に社会通念上妥当な範囲内での慰謝や謝罪の表れとして支払われるものであり、税務上も非課税とされています。

ただし、次のようなケースでは贈与税の対象となる恐れがあります。

  • けがの内容に比べて極端に高額な見舞金である場合
  • 見舞金の名目で支払われた金額が、実質的に贈与に近いと判断される場合

たとえば、軽い打撲にもかかわらず数百万円以上の見舞金を一括で受け取ったような場合には、税務署から課税対象と見なされる可能性があります。

高額な見舞金を受け取る前には、事前に税理士や弁護士に相談しておくと安心です。

まとめ:見舞金の受け取りで悩んだら弁護士に相談

見舞金の取り扱いは、一見シンプルに見えて、実際には判断が難しい場面も多くあります。不用意な発言や対応が、示談交渉や損害賠償に影響を及ぼすことも少なくありません。

見舞金を受け取るか迷っているときや、相場や条件について不安があるときは、一人で判断せずに弁護士に相談することをおすすめします。

よつば総合法律事務所では、交通事故に詳しい弁護士が、被害者の立場に立ってアドバイスを行っています。適切な補償を受けられるよう、法的な視点からしっかりサポートいたします。

監修者
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弁護士 粟津 正博

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