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よつばの特長よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」

55 後遺障害の基準に達しない(弁護士 佐藤 寿康)

「物が二重に見える」

治療が終わったのだが、視線を上に向けると物が二重に見えるという相談を受けました。
実際にお会いして、顔を正面に向けたまま視線を上に向けて頂くと、左右対称でない様子が窺えます。

「視線を上に向けると物が二重に見える」という症状は、複視と呼ばれるもので、後遺障害の等級でいうと13級2号「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」に該当します。
そこで、眼科医に書いてもらったという後遺障害診断書を確認しましたところ、複視の等級審査に欠かせない検査(「ヘススクリーンテスト」というものです。)をしていませんでした。このまま等級認定審査に提出しても、後遺障害が認定されることはありません。

「2°足りない」

そこで、病院に赴いてヘススクリーンテストが必要であることを説明し、検査をしてその検査結果を記載したもの(「ヘスチャート」といいます。)を作成してもらいました。
その結果、3°のずれがあることが判明しました。

労働災害の基準では、5°のずれがあって初めて等級に該当することになっています。自賠責においても、労働災害の基準を準用していますから、この方は、複視に関しては、後遺障害非該当ということになります。

自賠責の認定基準、認定手法

後遺障害に該当するかどうかについては、後遺障害の認定基準を確認するのが必要なのは当然です。
さらに、それをどのような資料(検査方法等)を提出しなければならないかという、自賠責の認定手法を知らなければなりません。

上記の例でいいますと、複視の後遺障害の審査にはヘススクリーンテストが必須であることを知らなければ、等級認定はされません。

なお、医師はこうしたことを知らないことも多いです。
医師は治療することが仕事であり、治らなかった後遺症についての審査には何が必要かといった知識は、治療とは関係ありませんから、やむを得ないことだと思います。

ですから、医師に対して検査が必要であることを説明してお分かりいただき、必要な検査を実施してもらう必要があります。

後遺障害の基準に達しない

たとえば、関節可動域が制限されているが、それが後遺障害認定基準まで至っていないとか、きず跡が残ったものの、長さ2.5センチメートルにとどまるといったときは、後遺障害等級は非該当ということになります。上記でご紹介しました3°のずれがある複視も、同様に後遺障害の基準に達していませんから、後遺障害の等級としては非該当です。

このことを御説明しましたところ、「これでそもそも基準に達しないなんて驚きだ。私はこれでも相当不便を感じている。」との感想を仰いました。
事故前の体に戻らなかったのだから、その点は認めてほしいというのは当然の思いですし、私もそう思います。

ですが、損害賠償実務では、後遺障害等級に応じて損害額が大きく変わってきますから、まずは、後遺障害に当たるかどうか、当たるとしても、どの等級か、さらに高い等級が認定される余地はないのかを探求していかなければなりません。

その結果、残った症状が後遺障害認定基準に達していないことが明らかになったとしても、基準に達しなかった症状が残り、それが客観的に明らかであることは、損害賠償交渉の場面で強調して、「事故前の体に戻らなかった」ことについて考慮されるよう最大限努めて、被害回復のために力を尽くさなければなりません。

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