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交通事故知識ガイド交通事故による後遺障害の解説

耳の後遺障害

最終更新日:2024年4月17日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

耳の後遺障害
耳の後遺障害には、聴力障害と欠損障害があります。

この記事では耳の後遺障害が残る被害者にむけて、後遺障害の認定基準、認定のポイントなどを交通事故に詳しい弁護士が解説します。

耳の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

1. 耳の後遺障害

耳の後遺障害
耳の後遺障害には、①聴力に支障が出る聴力障害と②耳が外形的に欠けてしまう欠損障害があります。

聴力障害は両耳と片耳の場合、耳鳴を伴う場合に分かれています。

それぞれの障害の種類と程度により、後遺障害の等級が決まります。

種類 等級 障害の程度
両耳聴力 4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
6級3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
6級4号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級3号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級8号 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
10級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
11級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
一耳聴力 9級9号 一耳の聴力を全く失ったもの
10級6号 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
11級6号 一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
14級3号  一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
耳鳴 12級相当 難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの
14級相当 難聴に伴い著しい耳鳴が常時あることが合理的に説明できるもの
耳介欠損 12級4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

2. 聴力検査の方法

聴力検査
聴力検査の方法にには次の2つがあります。
① 純音による聴力レベルの検査
② 語音による聴力レベルの検査

① 純音聴力検査

純音聴力検査には次の2つがあります。

  • 気道聴力検査
  • 骨導聴力検査

気道聴力検査は、ヘッドホンからの音を聞いて、耳小骨から内耳、中枢神経へと音が伝わっていく経路に異常がないかを確認する検査です。健康診断でもおなじみの手法です。

骨導聴力検査は、耳の後ろに端子をあてて音の振動を伝え、中にある蝸牛を骨から刺激して音の検査をする検査です。

純音聴力検査の注意点

  • 純音聴力検査は日を変えて3回行い、結果を後遺障害診断書に記載します。このうち障害等級にあたり参照される検査結果は2回目と3回目です。
  • 検査と検査の間隔は7日程度空ける必要があります。
  • 2回目と3回目の測定値に10dB以上の差がある場合は、さらに検査を重ねる必要があります。
  • 聴力検査の結果を書いた聴力図をオージオグラムといいます。後遺障害の申請では、オージオグラムを添付する必要があります。
  • 聞こえている音の大きさを数値で表すので、数値が大きいほど障害が重いということになります。
  • 一般的には25~40dBを軽度難聴、40~70dBを中度難聴、70~90dBを高度難聴、90dB以上で重度、100dBになるとほとんど何も聞こえない状態と整理されます。後遺障害が認定されるのは40dB以上の難聴からです。
  • 等級が認定されるためには、聴力検査による数値だけではなく、そのような障害が生じる原因について医学的な証明が必要です。

② 語音聴力検査

語音聴力検査には次の2つがあります。

  • 言葉の聞こえ方を図る検査である語音聴取閾値検査
  • 言葉を聞き分ける能力を図る語音弁別検査

語音聴力検査の注意点

  • 検査結果は音の高さ毎に明瞭度で示され、その最高値を最高明瞭度として採用します。
  • 語音聴力検査は、検査結果が適正と判断できる場合は1回のみでよいとされています。
  • 等級が認定されるためには、聴力検査による数値だけではなく、そのような障害が生じる原因について医学的な証明が必要です。

まとめ:聴力検査の方法

聴力障害は次の4つの検査結果を参照して等級を決定します。
① 純音聴力検査(気道聴力検査と骨導聴力検査)
② 語音聴力検査語(語音聴取閾値検査と語音弁別検査)

もっとも多く用いられるのは、オージオメーターを使った純音聴力検査です。

3. 両耳の聴力障害

両耳の聴力障害
左右両方の耳が聞こえなくなった場合、次の後遺障害になることがあります。

4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
6級3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
6級4号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級3号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級8号 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
10級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
11級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

純音聴力検査による聴力の後遺障害等級表(両耳・一耳)

純音聴力検査による聴力の後遺障害等級表(両耳・一耳)の表

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(両耳)

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(両耳)の表

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(一耳)

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(一耳)

※30dB以上の難聴に伴い耳鳴がある場合は、別途12級あるいは14級相当が認定される可能性があります。

Q「両耳の聴力を全く失ったもの」(4級3号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
② 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの
Q「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」(6級3号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの
② 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの
Q「一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」(6級4号)とはどのような場合ですか?
A1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上の場合です。
Q「両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」(7級2号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
② 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
Q「一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」(7級3号)とはどのような場合ですか?
A1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上の場合です。
Q「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」(9級7号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
② 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
Q「一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」(9級8号)とはどのような場合ですか?
A1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上の場合です。
Q「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」(10級5号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
② 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
Q「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」(11級5号)とはどのような場合ですか?
A両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上の場合です。

4. 一耳の聴力障害

左右どちらか一耳が聞こえなくなった場合、次の後遺障害になることがあります。

一耳聴力 9級9号 一耳の聴力を全く失ったもの
10級6号 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
11級6号 一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
14級3号 一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

なお、両耳に異なった聴力障害が残ったとしても以下の表により左右別々の等級を定めるのではなく、両耳の聴力障害 の基準に従って等級を定めます。

Q「一耳の聴力を全く失ったもの」(9級9号)とはどのような場合ですか?
A一耳の平均純音聴力レベルが90dB以上の場合です。
Q「一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」(10級6号)とはどのような場合ですか?
A一耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満の場合です。
Q「一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」(11級6号)とはどのような場合ですか?
A次の①②いずれかの場合です。
① 一耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
② 一耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
Q「一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」(14級3号)とはどのような場合ですか?
A一耳の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満の場合です。

5. 耳鳴

耳鳴とは、体外に音源がないにもかかわらず、耳内あるいは頭内に感じられる音感のことです。

耳鳴があって耳鳴に伴う難聴がある場合、耳鳴の検査を行い、検査結果に応じた等級になることがあります。

耳鳴で行う検査は次の2つです。
① ピッチ・マッチ検査
② ラウドネス・バランス検査

耳鳴を自覚するときは、耳鼻科に行きこれらの検査を受ける必要があります。

聴力障害の等級と耳鳴の等級の双方が認定されるときは、いずれか高い方の等級を取り上げて評価します。

耳鳴り 12級相当 難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの
14級相当 難聴に伴い著しい耳鳴が常時あることが合理的に説明できるもの
Q「難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの」(12級相当)とはどのような場合ですか
A30dB以上の難聴を残し、ピッチ・マッチ検査とラウドネス・バランス検査によって耳鳴残すことが医学的に証明される場合などです。
Q「難聴に伴い著しい耳鳴が常時あること」(14級相当)が合理的に説明できるもの
A30dB以上の難聴を残し、ピッチ・マッチ検査とラウドネス・バランス検査によって耳鳴残すことが合理的に説明できる場合などです。

6. 耳の欠損障害

耳の欠損障害として、「1耳の耳介の大部分を欠損したもの」は12級4号となります。

「耳介の大部分の欠損」とは耳介の軟骨部の2分の1以上を欠損した場合です。耳介とは、耳全体のうち外に出ている部分です。

外貌の醜状障害にもなるときは、耳の欠損障害と外貌の醜状障害のいずれか上位の等級となります。

7. 後遺障害認定のポイント

耳の後遺障害認定のポイントは次の3つです。
① 医学的原因を明らかにする
② 専門医を受診する
③ 発症遅延に注意する

① 医学的原因を明らかにする

聴力障害や耳鳴による後遺障害は、検査による数値上の要件を満たすだけでなく、聴力障害が生じる医学的な原因の証明が必要です。

たとえば、医証で頭部や耳部への受傷が確認できないときは、耳の後遺障害は否定される可能性があります。

初めの診断書に「頭部打撲」「脳震盪」などの診断名があるかも重要なポイントです。そのため、頭部や耳部を受傷したときは、医師にその旨を申告して診断書等に記載してもらいましょう。

② 専門医を受診する

聴力障害は、耳鼻科などの専門機関を受診することが重要です。

整形外科を受診して、難聴や耳鳴りを訴える方もいます。しかし、整形外科では後遺障害認定のために必要な聴力検査をすることは通常ないでしょう。

また、頭部外傷により聴覚神経を損傷し難聴になったときは、脳神経外科で原因となる所見を求めなければなりません。この場合、聴力検査は耳鼻科ですることが多いですが、脳神経外科を受診して紹介状をもって耳鼻科で検査のみをお願いすることが望ましいです。

③ 発症遅延に注意する

難聴や耳鳴で多いのが、事故からしばらくしてから症状を自覚して耳鼻科を受診するケースです。

しかし、症状の訴えが遅いだけで事故との因果関係を否定されてしまうこともあります。難聴を自覚するときは、1日も早く専門医を受診することをおすすめします。

8. まとめ:耳の後遺障害

耳の後遺障害は、聴力障害と耳の欠損があります。

聴力障害は、純音聴力検査(オージオグラム)の検査結果で等級を決定することが多いです。

後遺障害認定のためのポイントは次のとおりです。
① 医学的な原因を明らかにすること
② 専門医を受診すること
③ 耳の聞こえづらさを自覚したら一刻も早く受診すること

耳の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

純音聴力検査による聴力の後遺障害等級表(両耳・一耳)

純音聴力検査による聴力の後遺障害等級表(両耳・一耳)の表

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(両耳)

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(両耳)の表

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(一耳)

語音聴力検査及び純音聴力検査による後遺障害等級表(一耳)

(監修者 弁護士 粟津 正博

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