股関節中心性脱臼
最終更新日:2026年03月12日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
股関節中心性脱臼とは、大腿骨が骨盤骨の受け皿からお腹側へ飛び出し、股関節が外れてしまう大きなけがです。
この記事では、股関節中心性脱臼について、原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
股関節中心性脱臼は専門的な判断が必要です。気になることやお悩みがある場合は、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせください。

目次
股関節中心性脱臼
股関節は、大腿骨側の大腿骨頭(ボール)が、骨盤側の寛骨臼(受け皿)にすっぽりと包み込まれる構造になっています。
股関節中心性脱臼は、大腿骨頭が、受け皿である骨盤の底を突き破って、お腹側(内側)にめり込んでしまった状態を指します。
脱臼という名前がついていますが、 通常は受け皿である寛骨臼底骨折を伴う脱臼です。股関節内方脱臼ともいいます。
股関節中心性脱臼の原因
股関節中心性脱臼は、大腿骨頭が骨盤内部に向かって転位するものです。
股関節や大腿骨頭の周囲は、人の体重を支えられるようにがっちりと軟骨や筋肉でおおわれています。中心性脱臼となるのは、股関節に相当な衝撃が加わって、大腿骨頭が寛骨臼の底を突き破ってしまうようなケースです。
交通事故においては、大転子部に対する外力、つまり側方からの力が加わることによって発生することが多いです。
たとえば、自転車・バイク対自動車の衝突で、自転車・バイクの運転者がはねられて、足からあるいは横向きに道路に叩きつけられた際に生じてしまうことがあります。
股関節脱臼の種類
股関節脱臼は、大腿骨頭が寛骨臼から外れた方向により、後方脱臼、前方脱臼、下方脱臼、上方脱臼、内方脱臼に分かれます。このうち、最も多いのが後方脱臼で、次に多いのがこの中心性脱臼(内方脱臼)です。
中心性脱臼が起こると、脱臼部位に激痛と腫れが生じ、関節の可動域は著しく制限されて内転(脚が内側に閉じる)、内旋(つま先が内側を向く)します。
大腿骨が内側に押し上げられてめり込むことにより、大腿の見た目の長さが変わることがあります。また、骨盤の壁が壊れるため、関節の中だけでなく、骨盤の内部に大量の血が溜まります。これにより、鼠径部部(そけいぶ:足の付け根)周辺が著しく腫れ上がります。
股関節中心性脱臼の治療
一般的な治療としては、大腿骨の遠位部または大転子部に鋼線を刺入してそこを力点とし、直達牽引を行います。

これにより、大腿骨を臼蓋底(受け皿となっている寛骨臼の底)から引っ張りだし、臼蓋底骨折部が自然に癒合するのを待ちます。関節面が正しく整復されたものであれば、7~9週間牽引して骨癒合(こつゆごう:骨がくっつくこと)を待ちます。
その後、リハビリテーションに移行します。
治療において重要なのは、骨折部の早期の正確な復元(整復)と、その後の適切な免荷(めんか:体重をかけないこと)です。
骨が修復する前に体重をかけすぎると、元に戻した骨が再びめり込み、症状が悪化するおそれがあります。医師の指示に従い、松葉杖などで「体重をかけない期間」をしっかり守ることが、将来の歩行能力を左右します。
また、この傷病は関節の表面が壊れてしまうため、後に変形性股関節症になりやすいという特徴があります。そのため、リハビリと長期的な経過観察がとても重要です。
合併症
受傷直後は大量出血と神経損傷に注意が必要です。
骨盤の壁を突き破る際、周囲の動脈を損傷して大量の出血が起こり、出血性ショックを引き起こすことがあります。
また、めり込んだ大腿骨頭や、砕けた骨片がすぐ後ろを通る「坐骨神経」を圧迫・損傷し、坐骨神経麻痺を伴うケースがあります。
股関節に大きな衝撃が加わるため、大腿骨側の骨折、例えば大腿骨頭骨折、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部・転子下骨折などを伴うケースも多いです。
骨折や脱臼が複数発生する可能性がありますので要注意です。
股関節中心性脱臼の後遺障害
股関節中心性脱臼は、関節内で起きる傷害です。骨盤の底が突き破られ寛骨臼が破壊されると、関節の表面が完全な「真ん丸」には戻りにくく、可動域制限が生じることが多いです。
直達牽引により、臼蓋底骨折部の骨癒合が良好に推移すれば、大腿骨頭の壊死に至る可能性は低いですが、時間の経過とともに軟骨がすり減り、変形性股関節症を発症することがあります。
これがひどい場合は、最終的に人工股関節置換術を検討することになります。変形性股関節症を合併する場合は、受傷時だけでなく、治療中や症状固定時のCT・MRI撮影も行うことが重要です。
股関節中心性脱臼で認定される可能性がある主な後遺障害は、機能障害(下肢)、変形障害、短縮障害、神経障害の4種類です。
交通事故が原因で人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合には、原則として後遺障害が認定されます。
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
| 12級5号 | 骨盤骨に著しい変形を残すもの |
|---|
| 8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
|---|---|
| 10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
| 13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害(関節の動く範囲の制限)
機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。
股関節中心性脱臼の場合、股関節の機能障害が考えられます。
| 8級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
|---|---|
| 10級11号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
股関節の可動域制限の場合、原則として屈曲と伸展、または外転と内転による運動を参照します。

屈曲と伸展

内転と外転
可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。
認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。
「用を廃したもの」(8級)
「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。
- 関節が全く動かない場合
- 関節の可動域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
- 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
著しい機能障害(10級)
「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。
- 関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
- 人工骨頭置換術・人工関節置換術を行った場合
機能障害(12級)
「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは次の場合です。
- 関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合
変形障害
変形障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
| 12級5号 | 骨盤骨に著しい変形を残すもの |
|---|
「著しい変形を残すもの」とは、レントゲンで骨折の跡や変形がわかる程度では不十分で、裸体になったときに、変形が明らかにわかる程度のものなどをいいます。
短縮障害
短縮障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
| 8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
|---|---|
| 10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
| 13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
短縮障害の認定においては、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較して測定します。
上前腸骨棘とは、骨盤骨の横の一番突出している部分です。下腿内果下端とはくるぶしの一番下の部分です。
股関節中心性脱臼の場合、大腿骨頭が骨盤の内側にめり込んだまま、少しでも押し込まれた位置で骨がくっついてしまうと、その分だけ脚の全長が短くなります。そのため、下肢短縮の後遺障害が多くみられます。
数センチの差であっても、歩く際に関節や腰に負担がかかり、体が左右に揺れる(跛行)原因となります。跛行が生じている時には、脚長差による可能性があるため、必ず長さを測定してもらいましょう。
神経障害
神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級は、画像や検査結果から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。
たとえば、次のような場合は12級になることがあります。
- 骨が変形してあるいは不正に癒合して、これが原因で痛みが生じる場合
- 関節面に不正を残して骨癒合して、これが原因で痛みが生じる場合
股関節中心性脱臼の場合は、坐骨神経の損傷による神経性疼痛を生じるケースも考えられます。
14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。
つまり、客観的な所見から痛みが生じる原因が明らかとはいえないものの、受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。
まとめ:股関節中心性脱臼の後遺障害
股関節中心性脱臼とは、大腿骨が、受け皿である骨盤の底を突き破って、お腹側にめり込んでしまう大きな怪我です。
股関節中心性脱臼となった場合、めり込んでしまった大腿骨をけん引により、骨盤から引っ張り出し、受け皿の部分を修復して、骨癒合を待ちます。
後遺障害は、主に機能障害・変形障害・短縮障害、神経障害があり、8級から14級まで等級があります。
股関節中心性脱臼の後遺障害は専門的な判断が必要です。お困りの際は、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

- 監修者
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弁護士 粟津 正博













