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交通事故知識ガイド上肢及び手指 

上肢その6~8 主に前腕

上肢その6 橈骨・尺骨骨幹部骨折(とうこつ・しゃくこつこつかんぶこっせつ)

前腕部には、橈骨と尺骨の2本の長管骨があります。
親指側にあるのが橈骨、小指側にあるのが尺骨です。
骨幹部とは、長管骨の中央部分のことです。

交通事故では、直接前腕を強打したときや(短軸方向の外力)、飛ばされるなどして手を地面についたときに(長軸方向の外力)、前腕に捻りの力が加わり、橈骨および尺骨が骨折します。

短軸方向の外力により橈骨及び尺骨が骨折を起こしたときは、両骨の骨折部位は同一となることが多いです。一方、長軸方向の外力により捻りの力が加わって橈骨及び尺骨が骨折を起こしたときは、骨折部位が異なる(たとえば、尺骨の骨幹部と橈骨の近位端部が骨折する)ことが多いです。

橈骨と尺骨の両方が骨折すると、激痛を感じ、大きく腫脹が生じます。前腕の中央部は大きく変形します。
単純XP撮影での診断を比較的容易に行うことが可能です。両骨に骨折が生じた事例では、かなり強い外力が加わっていることが多く、大きく転位しているものがほとんどです。
橈骨・尺骨骨幹部骨折
かつて、こうした骨折に対し、多くは、徒手整復+ギプス固定による治療が行われました。

この治療方法ですと、尺骨や橈骨の骨幹部は、両端に比較すると細くなっており、血流が少ないことから、骨癒合が遅れてしまい、偽関節となってしまうことが多かったのです。
近年では、通常はAOプレートとスクリューによる固定が行われることから、偽関節に至ることは稀です。

上肢その7 モンテジア脱臼骨折

モンテジア脱臼骨折
尺骨骨幹部骨折と橈骨頭脱臼が同時に発生したものをモンテジア脱臼骨折と呼びます。
事故直後は、尺骨骨折の痛みが強く、肘関節での橈骨頭脱臼が疑われないままであることも多いです。

橈骨頭の前方脱臼が起きたときは、前方を走行する後骨間神経を絞扼・圧迫することにより、指を伸ばせなくなり、下垂指という変形をきたすことがあります。
下垂指
治療は、成人であれば、尺骨骨折の新鮮例に対し、観血的手術を行って内固定を行うことが多いです。

受傷から6か月以上経過した陳旧姓のものは、尺骨の骨癒合は終わっているものの、橈骨頭の脱臼は残存しており、肘関節には可動域制限がある状況です。

これに対する治療としては、尺骨の矯正骨切り術や延長術を行い、橈骨頭の整復が図られます。 橈骨頭の変形が著しいときは、橈骨頭切除術が実施されています。

上肢その8 ガレアッチ脱臼骨折

手をつくことによって橈骨骨幹部骨折が生じたとき、その転位(ずれ)が大きいと、手関節側の橈骨と尺骨の関節(遠位橈尺関節)の尺骨骨頭が脱臼することがあります。
このように、橈骨骨幹部骨折と遠位橈尺関節の尺骨関節の尺骨脱臼が同時に生じた状態を、ガレアッチ脱臼骨折といいます。

受傷直後は橈骨の痛みが強いため、手関節に脱臼が生じていることが疑われないと、遠位橈尺関節の尺骨脱臼が見過ごされてしまう可能性があります。橈骨や尺骨の骨幹部が単独で骨折しているときは、近位と遠位の橈尺関節に脱臼がないかどうか確認する必要があると、整形外科のテキストにも書かれています。

成人では、整復ギプス固定では不安定ですので、保存療法ではなく、観血的手術が選択され、金属プレートを用いて橈骨を内固定します。橈骨の内固定を行うことにより、脱臼した尺骨も整復されることが多いです。整復できなかったときは、これも観血的に整復します。
整復が不十分ですと、手関節の可動域に問題を生じかねません。

後遺障害のポイント(橈骨・尺骨骨幹部骨折、モンテジア脱臼骨折、ガレアッチ脱臼骨折)

1)橈骨・尺骨骨幹部骨折が単独で生じたときは、AOプレートとスクリューで固定を行うのが一般的です。開放性の挫滅や粉砕骨折などでない限りは、通常、偽関節や変形治癒の後遺障害に至ることはありません。

2)モンテジア脱臼骨折、ガレアッチ脱臼骨折が生じたときは、初診で脱臼が確認されており、骨折がAOプレートとスクリューで固定されたものでは、ほとんどのケースで後遺障害に至りません。

3)脱臼が見逃されてそのまま放置され、陳旧化してしまったときが問題です。
診断書の傷病名欄には尺骨骨幹部骨折とのみ記載されているものの、実際には肘関節脱臼が発生しており、事故直後の画像でもそれが確認できたという被害者の方があり、この方は、肘の可動域制限が残ってしまっていました。こうした場合は、画像を提出して後遺障害等級として評価される必要があります。