橈骨遠位端骨折(コーレス骨折・スミス骨折・バートン骨折)

最終更新日:2025年07月28日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

橈骨遠位端とは、前腕にある2本の骨のうち、親指側の橈骨(とうこつ)の手首に近い部分のことです。

この記事では、橈骨遠位端の骨折である、コーレス骨折やスミス骨折、バートン骨折などについて、骨折の原因や治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

橈骨遠位端骨折は専門的な判断が必要です。気になることや悩みがある場合、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせ下さい。

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橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端とは、橈骨のうち遠位すなわち心臓から遠い方の手首側の端という意味です。

橈骨遠位端骨折とは腕にある二本の骨のうち親指側にある橈骨が、遠位端(手首)側で折れる骨折です。手首の骨折として最も起こりやすく、交通事故でも転倒して手をついてしまった際などでよく見られます。

橈骨遠位端骨折にはいくつか種類がありますが、本記事ではそのうちコーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折について解説します。

コーレス骨折とは

転倒時に手の平をついて橈骨遠位端に加わった力により発生するのがコーレス骨折です。手の平から力が伝わり、橈骨の遠位骨片が、手背方向つまり手の甲のほうへ転位(移動)します。

下の図では左に太く見えるのが橈骨です。遠位で骨が背側(上側)にずれているのがわかります。骨が階段状にずれて、背側(上側)に移動し、段差を形成します。

コーレス骨折

以下は実際のレントゲン画像です。

コーレス骨折のレントゲン画像(左画像は骨折が見られます。右画像は骨片が背側に転移している。)

コーレス骨折の原因

バイクや自転車運転中、歩行中などに衝突され転倒し、地面に手の平をついて発生することが多いです。

手関節が伸展位(手の甲側に反った状態)にあるときに発生することから、橈骨遠位端部伸展型骨折ともいいます。

コーレス骨折の治療

コーレス骨折はXP画像で確認できます。

コーレス骨折が発生すると、力が入りづらく、骨折していない方の手で支えないと力が入りません。
この場合、フォークを伏せて置いたような変形が見られます。この特徴的な変形がコーレス骨折の診断のポイントの一つです。

コーレス骨折が発生してフォークを伏せておいたような変形が見られる

骨折が確認された場合、麻酔で痛みを緩和し、徒手で整復を試みます。徒手整復が成功した場合、そのままギプスやギプスシーネで固定します。

徒手整復を試みたものの、骨片がずれたまま残り、うまくいかない場合には手術が必要になります。

手術には、X線で透視しながら鋼線を刺し入れて骨折部を固定する方法や、骨折部を切開して整復してプレートで固定する方法があります。ロッキングプレートが開発されてからは、これによる固定を行う方法が比較的多く採用されています。

以下はロッキングプレートの例です。

ロッキングプレート

プレート固定を行うと、手首の安定性が回復し、早期に手関節が動かせるようになります。
そして、早期にリハビリを開始すると、手関節の機能障害が残ることを防止できます。

スミス骨折とは

転倒の際に、手の甲をぶつけるなどして、手の甲から衝撃が加わって骨折すると、骨折部が手のひらの方向にずれて転位します。この骨折をスミス骨折と呼んでいます。

スミス骨折とは、コーレス骨折とは逆方向への骨片転位が生じる骨折です。

スミス骨折

XP画像を確認すると、骨折片がコーレス骨折とは逆の手掌側に転位している状態が見られます。その他の治療方法や経過は、概ねコーレス骨折と共通します。

スミス骨折の原因

交通事故では、自転車やバイクのハンドルを握った状態のまま転倒したときに発生することがあります。

特に、手首が掌屈(手の平が内側に曲がった)状態で、地面やハンドルに強い力で衝突することによって発生します。

スミス骨折の治療

軽度の場合は、徒手整復により手で骨片を元の位置に戻します。

そのまま、軽度掌屈+橈屈位でギプス固定を1~2カ月試みます。
徒手整復によっても、骨片がずれたままの場合は、手術が必要になります。

バートン骨折とは

バートン骨折も橈骨遠位端骨折の1つですが、関節内にまで骨折線が及び、手根骨が脱臼・転位してしまったものです。

関節外の骨折であるコーレス骨折・スミス骨折と異なり、バートン骨折は関節内骨折です。橈骨遠位端骨折の中では、重症例です。

遠位骨片が手根骨とともに背側(手の甲側)に転位しているものを背側バートン骨折、掌側(手のひら側)に転位しているものを掌側バートン骨折と呼びます。多くは掌側型で、関節面が関与するため予後に注意が必要です。

コーレス骨折、スミス骨折、掌側バートン骨折、背側バートン骨折

バートン骨折の原因

背側バートン骨折の原因はコーレス骨折と同様、手を反った状態で、手の平側から特に強い外力を受けた場合に発生します。

掌側バートン骨折の原因はスミス骨折と同様、手を内側に曲げた状態で、手の甲側から特に強い力を受けた場合に発生します。

バートン骨折の治療

症状は、事故直後から、手関節の強い痛み、腫脹、関節可動域の制限が起こります。手関節に変形が見られることも多く、手指に力が入らず、十分に握ることができません。骨折部は不安定な状態で、反対側の手で支える必要があります。手指にしびれが生じ、後になって、親指の伸筋腱が切断されていることが判明することもあります。

骨折の存在はXP撮影によりますが、関節内骨折の有無を正確に把握するにはCTが必要です。

バートン骨折は、多くで関節靭帯や関節包の損傷を合併します。徒手整復が困難であることが多く、手術療法が行われます。

受傷直後のXPで、関節面の転位が認められるときは、手術で完全な整復を行う必要があるとされます。なお関節面のずれが2mm以上あるかないかが手術療法を選択するかどうかの基準であるという見解もあります。

橈骨の短縮があると、疼痛や前腕の回内・回外運動の制限が予想されますので、やはり手術を行う必要性が生じます。なお橈骨短縮が6mm以上あるときは手術を行うべきとの見解もあります。

治療後も手関節の尺側(小指側)に慢性的な痛みがあるときは、尺骨の茎状突起部の偽関節の可能性が予想されます。XP、CTで確認する必要があります。

コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折の後遺障害

コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折で認定されうる後遺障害は、機能障害、変形障害、神経障害の3種類です。

機能障害
8級6号 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
変形障害
12級8号 長管骨に変形を残すもの
神経障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

機能障害(関節の動く範囲の制限)

機能障害は、関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。

8級6号 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

コーレス骨折、スミス骨折は手関節に近い部分の骨折なので機能障害を生じる可能性があります。

バートン骨折は手関節の関節内骨折ですので、機能障害により後遺障害が認定される可能性が高いです。重症例では、右手の脱力で、字を書けなくなることもあります。

手関節の可動域制限の場合、原則として屈曲と伸展による運動を参照します。

可動域の測定にはルールがあります。関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認ください。

認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。

「用を廃したもの」(8級)

「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節が全く動かない場合
  2. 関節の可動域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
  3. 人工関節置換術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合

著しい機能障害(10級)

「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
  2. 人工関節置換術を行った場合

機能障害(12級)

「関節の機能に障害を残すもの」(12級)とは次の場合です。

  1. 関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合

変形障害(骨折部の偽関節や変形)

変形障害とは、骨折した部分がくっつかなかったり、変形して癒合した場合の後遺障害です。後遺障害認定基準は次のとおりです。

12級8号 長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」(12級)とは、コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折は骨端部の骨折ですので、以下の場合に該当します。

  • 橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
  • 橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

神経障害(手関節周辺の痛み)

神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折後に痛みやしびれを残すときは12級か14級になることがあります。

12級は、画像から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。

たとえば、次のような場合は12級になることがあります。

  1. 骨が変形してあるいは不正に癒合して、これが原因で痛みが生じる場合
  2. 関節面に不正を残して骨癒合して、これが原因で痛みが生じる場合

また、神経損傷を合併し、その存在が客観的に証明できる場合もこれらを原因として、12級が認定されることがあります。橈骨遠位端骨折の場合正中神経損傷が合併する例が見られます。また整復後の仮骨形成によって遅発性の手根管症候群を引き起こすことがあります。

14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。

つまり、画像上痛みが生じる原因は明らかとはいえないものの、当初の受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。

まとめ:コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折の後遺障害

コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折は、前腕に強い衝撃を受けたり、転倒して手をついた際によく起こる症状です。

後遺障害は、主に機能障害・変形障害・神経障害があり、8級~14級まで等級があります。

バートン骨折は関節内の骨折なので、機能障害を残す場合後遺障害が認定される可能性が高いです。

コーレス骨折やスミス骨折でも骨がずれたままくっついてしまったり、神経損傷を伴う場合に後遺障害が認定される可能性があります。コーレス骨折やスミス骨折は関節外骨折に分類されますが、骨折線が関節内に及ぶことも稀ではありません。このような場合、後遺障害が認定されやすくなります。

コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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