傷跡の後遺障害の逸失利益と後遺障害慰謝料
最終更新日:2026年10月14日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q傷跡の後遺障害です。後遺障害慰謝料と逸失利益はどうなりますか?
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傷跡の後遺障害慰謝料は、認定された等級を目安に支払われます。
一方、逸失利益は、等級だけでは決まりません。傷跡の場所や大きさ、職業、実際の仕事への影響などによって、認められるかどうかや金額が変わります。
この記事では、傷跡の後遺障害について、特に争いになりやすい逸失利益を中心に、交通事故にくわしい弁護士がわかりやすく説明します。

目次

傷跡の後遺障害の認定要件
交通事故で傷跡が残ったときは、傷跡の場所や大きさなどによって、醜状障害として後遺障害に認定されることがあります。
醜状障害とは、交通事故による傷跡や、やけどのあとなど、外見に残った変化について認められる後遺障害です。どのような傷跡が後遺障害に認定されるかは、傷跡が残った場所によって異なります。
外貌(顔)
「外貌」とは、頭・顔・首など、日常生活で人目につきやすい部分です。これらの部位に傷跡が残ったときは、傷跡の大きさや長さ、目立ちやすさによって後遺障害等級7級、9級、12級に認定されることがあります。
顔の後遺障害の認定基準は次のとおりです。
| 後遺障害等級 | 内容 | 傷跡の主な目安 |
|---|---|---|
| 7級12号 | 著しい醜状 | 鶏卵大以上の瘢痕、10円硬貨大以上の組織陥没など |
| 9級16号 | 相当程度の醜状 | 長さ5cm以上の線状痕 |
| 12級14号 | 醜状 | 10円硬貨大以上の瘢痕、長さ3cm以上の線状痕など |
頭・首の後遺障害の認定基準は次のとおりです。
| 後遺障害等級 | 内容 | 傷跡の主な目安 |
|---|---|---|
| 7級12号 | 著しい醜状 | 手のひら大以上の瘢痕、欠損 |
| 12級14号 | 醜状 | 鶏卵大以上の瘢痕、欠損 |
瘢痕とは、傷が治ったあとに残る傷跡です。組織陥没とは、皮膚などの組織がくぼんでしまった状態のことです。線状痕とは、線のように残った傷跡です。
なお、9級16号は顔の醜状障害についてのみ定められている等級です。頭と首の醜状障害について認定される可能性がある等級は7級12号と12級14号の二つになります。
いずれも、原則として人目につく程度の傷跡であることが必要です。髪の毛や眉毛に隠れる部分は、原則として外貌の醜状障害には含まれません。
上肢・下肢
腕や足のうち、日常生活で露出する部分に一定以上の大きさの傷跡が残ったときも、12級や14級の後遺障害に認定されることがあります。
上肢や下肢の露出面に手のひらの3倍程度以上の傷跡が残ったときは12級相当に認定されることがあります。
上肢の露出面に手のひら大の傷跡が残ったときは14級4号、下肢の露出面に手のひら大の傷跡が残ったときは14級5号に認定されることがあります。
その他
胸やお腹、背中、お尻など、通常は服で隠れる部分でも、広い範囲に傷跡が残ったときは12級や14級の後遺障害に認定されることがあります。
傷跡がどの等級に当てはまるかは、部位・大きさ・目立ちやすさで変わるため、確認が必要です。
傷跡の後遺障害の逸失利益
傷跡について後遺障害等級が認定されても、逸失利益が必ず認められるわけではありません。
傷跡によって実際に仕事や将来の収入に影響があるかを、傷跡の場所や大きさ、職業、仕事への影響などから個別に判断します。
ここでは、傷跡の後遺障害で逸失利益が問題になる理由や、認められやすいケース、交渉のポイントを解説します。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られたはずの収入のことです。後遺障害で働く力が低下した分、収入が減るという考え方にもとづきます。
保険会社が傷跡の後遺障害の逸失利益を否定する理由
傷跡は体を動かす機能に影響しないことが多いため、事故後も同じ仕事を続け、収入も減っていないケースがあります。このようなとき、保険会社は「仕事への影響はない」として逸失利益を否定してくることがあります。
しかし、収入が減っていないからといって、逸失利益が認められないとは限りません。
たとえば、傷跡が目立たないよう工夫しながら仕事を続けていることもあります。勤務先が接客の少ない仕事に変えるなど、仕事の内容を配慮していることもあるでしょう。
このように、本人の努力や勤務先の配慮によって収入が維持されているときは、現在の収入だけではなく、実際にどのような影響が出ているかを踏まえて逸失利益を検討します。
逸失利益が認められやすいケース
傷跡による逸失利益は、傷跡が仕事や将来の収入に影響することを具体的に説明できるほど、認められやすくなります。
特に、次のような事情があるときは、逸失利益が認められやすい傾向があります。
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顔や首などの外貌に傷跡がある
外貌とは、顔や首など人目につきやすい部分です。腕や足、服で隠れる部分の傷跡と比べると、接客や営業、就職などへの影響が問題になりやすく、逸失利益が認められやすい傾向があります。
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傷跡が大きく、目立ちやすい
同じ場所の傷跡でも、大きく目立つ傷跡ほど、仕事への影響も大きくなる可能性があります。傷跡の大きさや目立ちやすさは、逸失利益を判断するときの重要な事情の一つです。
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実際の仕事に影響が出ている
事故後に接客業務から外れた、配置転換があった、顧客と接するときに支障が出ているなど、仕事への具体的な影響があるときは、逸失利益が認められやすくなります。
現在の収入が変わっていなくても、本人の努力や勤務先の配慮によって収入を維持しているときは、その事情も重要です。
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人と接することや容姿が仕事に関係する職業である
営業、接客、販売、介護など、人と直接接する機会が多い仕事では、傷跡が仕事に影響する可能性があります。
アナウンサーなど、容姿が仕事と密接に関係する職業でも、傷跡による影響が認められやすくなります。
また、年齢が若い人は、今後の就職や転職、昇進などへの影響が長く続く可能性があります。そのため、将来の働き方への影響も判断材料になります。
ただし、どれか一つに当てはまれば逸失利益が必ず認められるわけではありません。傷跡の場所や大きさ、年齢、職業、実際の仕事への影響などを総合して判断します。
逸失利益が否定されやすいケース
傷跡が現在の仕事にほとんど影響しておらず、将来の収入にも影響する可能性が低いときは、逸失利益が否定されることがあります。
たとえば、傷跡が仕事中は見えない場所にあり、仕事内容も容姿や対人業務と関係せず、事故後も仕事内容や収入に変化がないケースです。
ただし、現に収入が減っていなかったとしても、あきらめる必要はありません。本人の努力や勤務先の配慮によって、収入が維持されているだけの場合もあるためです。そうした事情があれば、逸失利益を主張できる可能性が残ります。
逸失利益を認めさせるための交渉のポイント
交渉では、「〇級の後遺障害だから〇%の逸失利益がある」と主張するだけでは十分ではありません。
傷跡によって仕事や将来の収入にどのような影響があるのかを、具体的な事実や資料で説明することが大切です。
たとえば、次のような事情を整理します。
- 事故前後の仕事内容や担当業務
- 顧客や利用者と接する仕事がどのくらいあるか
- 事故後の配置転換や担当変更の有無
- 昇進、昇給、転職など将来への影響
- 事故前後の給与や賞与
- 傷跡を隠すためにしている工夫
- 勤務先から受けている配慮
給与明細や源泉徴収票だけでなく、仕事内容を示す資料や、配置転換などがあればその経緯がわかる資料も役立ちます。
現在の減収だけを見るのではなく、「今後どのような場面で収入に影響する可能性があるのか」まで整理して交渉しましょう。
傷跡の後遺障害の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的な苦痛に対する賠償です。
金額の目安は、認定された後遺障害等級に応じて決まっています。自賠責保険の基準と、裁判や弁護士による交渉で用いる裁判基準(弁護士基準)では、次のとおり金額が大きく異なります。
| 等級 | 自賠責基準 | 裁判基準 (弁護士基準) |
|---|---|---|
| 7級 | 419万円 | 1000万円 |
| 9級 | 249万円 | 690万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
弁護士に依頼して交渉や裁判をするときは、裁判基準をもとに請求するのが一般的です。
傷跡の後遺障害慰謝料では、認定された等級をもとに、傷跡の場所や大きさ、目立ちやすさ、被害者の年齢なども踏まえて金額を検討します。特に顔などの外貌に傷跡が残ったときは、対人関係や対外的な活動への影響も考慮されることがあります。
また、傷跡の後遺障害を負っても、仕事への影響が大きくないとして逸失利益が認められないことがあります。そのような場合、傷跡による心理的な影響や対人関係への影響、将来の転職への影響などを考慮して、後遺障害慰謝料が増額されることがあります。
よくある質問
最後に、傷跡の後遺障害についてよくいただくご質問にお答えします。
後遺障害の申請はいつすればよい?
後遺障害の申請は、治療を続けても大きな改善が見込めなくなり、医師が「症状固定」と判断した後に行います。
傷跡(醜状障害)の場合、原則として事故から半年以上経過した時点が症状固定の目安となることが多いです。
逸失利益ゼロで回答されたらどうすればいい?
保険会社から逸失利益をゼロと回答されても、そのまま受け入れなければならないわけではありません。
傷跡の逸失利益は、現在の減収だけで決まるわけではありません。傷跡の場所や大きさ、職業や年齢のほか、収入を維持するための本人の努力や勤務先の配慮、将来の転職への影響なども考慮して判断します。
まずは保険会社が逸失利益を否定した理由を確認し、仕事内容や事故後の変化を整理しましょう。判断が難しいときは、示談する前に弁護士へ相談することをおすすめします。
子どもに傷跡の後遺障害が残ったらどうなる?
子どもでも、傷跡が認定基準を満たせば後遺障害に認定され、大人と同じように、等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。
一方、逸失利益は、子どもには現在の職業や収入がないため、大人とは異なる方法で検討します。国の統計による労働者の平均賃金などを基礎に計算したうえで、傷跡が将来の就職や職業選択にどの程度影響するかが問題になります。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
交通事故で傷跡が残ったときは、後遺障害慰謝料と逸失利益をそれぞれ分けて検討します。
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級が金額の目安になります。これに対して逸失利益は、等級だけでは決まらず、傷跡の場所や大きさ、仕事の内容、実際に仕事にどのような影響が出ているかなどが重要です。
保険会社から逸失利益を認めないと言われても、それだけであきらめる必要はありません。特に、顔や首に目立つ傷跡がある方や、人と接する仕事をしている方、事故後に仕事内容の変更や勤務先の配慮があった方は、逸失利益を改めて検討できることがあります。
保険会社の提示内容に疑問があるときや、逸失利益が認められるか判断に迷うときは、示談をする前に弁護士へ相談することをおすすめします。
交通事故による傷跡や後遺障害にお悩みの方は、よつば総合法律事務所にご相談ください。

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弁護士 粟津 正博













