交通事故の過失割合は当事者の合意で原則として決定

最終更新日:2026年01月07日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q交通事故の過失割合は誰が決めますか?

交通事故の過失割合は、原則として事故の当事者同士の話し合いによって決まります。

話し合いで合意に至らない場合には、最終的に裁判所が判断を下すことになります。

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交通事故の過失割合の決め方

交通事故の損害賠償額を決める際、重要な役割を果たすのが「過失割合」です。これは、事故の原因となった不注意の度合いを、損害の公平な分担という観点から、被害者と加害者それぞれについて数値化したものです。

被害者側にも過失があると判断された場合、その割合に応じて受け取れる賠償金額が減額されます。この仕組みが「過失相殺」です。

過失割合を判断する際は、過去の膨大な交通事故訴訟を分析して作られた「過失相殺の基準」が参考にされます。この基準には、事故の態様ごとに基本となる過失割合が示されており、そこから個別の具体的な事情を考慮して増減が行われます。

具体的には、別冊判例タイムズ38号という雑誌に、事故状況ごとの割合が示されています。

交通事故の過失割合は誰が決めるのか?

過失割合は、一体誰がどのようにして決めるのでしょうか。大きく分けて2つの方法があります。

① 原則は当事者間で合意して決める

交通事故の過失割合は、事故の当事者である被害者と加害者が話し合って決めるのが原則です。

多くのケースでは加害者が任意保険に加入しているため、実際の交渉は加害者本人ではなく、加害者側の保険会社の担当者と行うことになります。

ただし、事故に不慣れな当事者が、突発的に起きた事故の状況を正確に思い出し、「過失相殺の基準」を分析しながら、双方の注意義務違反を公平に評価して割合を決定するのは容易ではありません。

適切な解決のため、必要に応じて弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。

② 合意できない場合は裁判所が決める

当事者間での話し合いで互いに譲歩できず、交渉が平行線をたどった場合、最終的な判断は裁判所に委ねられます。

被害者または加害者が民事訴訟を提起し、裁判官に過失割合の決定を求めます。

裁判における過失割合の配分は、提出された証拠に基づき、裁判官が判断することになります。

なお、判決に至る前に、裁判官から双方が妥協できる案(和解案)が提示され、話し合いで解決することも多くあります。

当事者間での合意の場合の流れ

加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉は加害者側の保険会社の担当者と行うのが一般的です。

過失割合を決める具体的な流れを見ていきましょう。

① 事故状況の認識を合わせる

まず、事故の当事者間で事故状況の認識をすり合わせます。

過失割合は事故の状況をもとに決めるため、双方の認識が一致していなければ話が進みません。

このとき重要なのは、大まかな状況だけでなく、細かい点まで丁寧に確認することです。
たとえば、次のような事項を確認します。

  • 速度違反の有無
  • ウインカーを出していたか
  • 当時の道路状況(見通し、渋滞など)
  • 信号の色
  • 道路の形状(優先道路か否か、一時停止の有無、道路幅)

ドライブレコーダーの映像事故現場周辺の防犯カメラ実況見分調書などがあると、スムーズに確認が進みます。

② 基本の過失割合を確認する

事故状況の認識が一致したら、次に事故の類型に応じた「基本の過失割合」を調べます。

交通事故では、事故の類型ごとにおおよその過失割合があらかじめ定められています。たとえば、「停車中の車への追突事故なら、追突車:被追突車=100:0」といった具合です。
この基本の過失割合が算定の出発点となります。

基本の過失割合は、次の書籍で確認できます。

③ 修正要素を加える

基本の過失割合は、あくまで目安にすぎません。実際の事故には個別の事情があるため、「修正要素」を加えて調整していきます。

修正要素とは、過失割合を増減させる具体的な事情のことです。たとえば、次のような修正要素があります。

  • 速度違反があった場合
    過失割合を5~20%加算することが多い
  • 夜間に無灯火だった場合
    過失割合を5~10%加算することが多い
  • ウインカーを出さなかった場合
    過失割合を5~10%加算することが多い

ただし、修正要素は多岐にわたり、どの修正要素をどの程度反映させるかをめぐって、加害者側と意見が対立するケースも少なくありません。

修正要素の判断は専門的な知識を要するため、弁護士の見解を確認しながら進めることをおすすめします。

④ 保険会社からの過失割合の提示

保険会社の担当者は、上記の基準や修正要素を踏まえて過失割合を算定し、被害者に提示します。

ただし、保険会社からの過失割合の提示は、あくまで加害者の事故状況の認識を前提にした、保険会社側の主張であることを理解しておく必要があります。

⑤ 交渉

示談の初期段階では、被害者側の主張と保険会社側の主張に隔たりが生じることは珍しくありません。双方が証拠を示しながら、それぞれの主張を伝え合います。

事故状況を示す証拠や類似の裁判例などを提示することで、自分の主張の正当性を訴えることが可能です。

⑥ 合意(示談成立)

交渉を通じてお互いが譲歩し、双方が納得できる過失割合で合意に至れば、示談が成立します。

示談書を作成し、合意した過失割合に基づいて算出した損害賠償金が支払われます。

裁判所が決める場合の流れ

当事者間の交渉で合意に至らない場合、民事訴訟を提起して裁判所に判断を委ねることになります。

具体的な手続きの流れは次の通りです。

① 訴訟の提起と証拠の提出

当事者は、それぞれ自身の主張を裏付けるための資料(証拠)を裁判所に提出します。

事故の態様を明らかにする証拠として、警察が作成した実況見分調書や供述調書など、刑事事件の記録が利用されることが多いです。

② 裁判官による判断

裁判官は、提出された証拠をもとに過失割合を判断していきます。

裁判実務では、保険会社との交渉時と同様に、「別冊判例タイムズ」(通称「判タ」)や弁護士会が発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)といった基準が基礎として用いられることが一般的です。

③ 判決

これらの基準を参考にしつつ、事故現場の状況や当事者の速度違反、道路の広さなど、個別具体的な事情(修正要素)を考慮して、最終的な過失割合が決定されます。

判決が確定すれば、その過失割合に基づいて損害賠償額が確定します。

なお、裁判の途中で和解(合意)により解決することもあります。

よくあるご質問

ここでは、過失割合に関してよく寄せられるご質問にお答えします。

保険会社が一方的に割合を通知してきました。どうすればよいですか?

保険会社が提示する過失割合は、あくまで保険会社側の見解に過ぎず、法的な拘束力はありません。納得できないのであれば、合意する必要は一切ありません。

実は、相手の保険会社が示す過失割合は、必ずしも適切とは限りません。次のような問題が潜んでいることも多いのです。

  • 保険会社は法律の専門家ではないため、過失割合の判断を誤ることがある
  • 加害者の認識している事故状況だけを聞いて過失割合を決めていることがある

「保険会社が言うのだから正しいだろう」と思って鵜呑みにするのは危険です。

示談の初期段階では、双方の主張に開きがあるのは自然なことです。焦って同意する必要はありません。

納得できる内容でないときは、きちんと反論して交渉を継続しましょう。話し合いで解決できないときは、裁判という選択肢もあります。

保険会社の担当者は交渉のプロです。被害者が一人で対応するのは難しいことも多いため、過失割合や示談金額に少しでも疑問を感じたら、弁護士に相談することをおすすめします。

相手が提示する過失割合を変えさせたいです。どうすればよいですか?

相手方が提示する過失割合を変更させるためには、こちらの主張を裏付ける客観的な証拠を示し、説得力のある反論を行うことが重要です。

具体的には、次のような方法が考えられます。

  • 裁判例の基準に基づく主張

    保険会社も用いる「別冊判例タイムズ」などの基準には、基本的な過失割合を修正するための「修正要素」が定められています。

    たとえば、「相手のウインカー不灯」や「15km以上の速度違反」といった具体的な事情を主張・立証することで、相手方の過失をより大きく認定してもらえる可能性があります。

  • 客観的な証拠の収集

    主張を裏付けるためには証拠が不可欠です。ドライブレコーダーの映像や、警察が作成した刑事記録などが有効な証拠となり得ます。

警察は過失割合を決めますか?

警察は過失割合を決める権限を持っていません。

最終的に過失割合を決めるのは、あくまで当事者同士の合意、または裁判所の判断です。

事故現場で警察官が実況見分を行う様子を見て、「警察が過失割合を判断するのだろう」と思う方は多いです。しかし、それは誤解です。

過失割合のような損害賠償に関する問題は「民事の問題」に分類されます。警察は「民事の問題」には介入しないため、「あなたも悪い」あるいは「あなたの過失はゼロ」と言われても、民事の過失割合に必ずしも結び付きません。

警察の役割は、道路交通法違反などの刑事事件として捜査を行うことです。事故の原因や当事者の不注意を調べるため、実況見分を行ったり、関係者から話を聞いて供述調書を作成したりします。

ただし、警察が作成する実況見分調書は、過失割合を決める際の重要な証拠資料となります。そのため、警察の捜査に協力するときは、事故の状況をできるだけ正確に伝えることが大切です。正確な記録が残れば、後の交渉や裁判で有利に働く可能性があります。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

交通事故の過失割合は、最終的に受け取れる賠償金額を大きく左右する重要な要素です。

しかし、保険会社との交渉では、専門的な知識や基準が用いられるため、被害者ご自身だけで有利に交渉を進めるのは簡単なことではありません。

もし、相手方の保険会社が提示する過失割合に少しでも疑問や不満を感じたら、示談に合意してしまう前に、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、専門的な知見と過去の裁判例に基づき、あなたの状況における適切な過失割合を判断し、あなたに代わって保険会社と交渉を行います。

交渉が決裂した場合には、訴訟手続きを依頼することも可能です。

よつば総合法律事務所では、交通事故の過失割合に関するご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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