交通事故の過失割合が決まる時期

最終更新日:2025年12月18日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q交通事故の過失割合はいつ決まりますか?

物損事故の場合、損害額の算定が比較的早い段階で可能なため、事故後早い段階で過失割合についての具体的な交渉が始まり、合意に至ることが多いです。

人身事故の場合、①事故後早い段階または②治療が終了した時点以降に具体的な交渉が始まり、合意に至ることが多いです。

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交通事故の過失割合の決め方

交通事故の過失割合は、基本的に当事者同士の話し合い(示談交渉)で決められます。多くのケースでは、加害者側の保険会社の担当者と交渉することになるでしょう。

交渉の際は、過去の裁判例をもとに作られた客観的な基準が用いられます。

有利に進めるためには、事故の状況を証明できる資料が欠かせません。特に重要なのは、警察が作成する実況見分調書です。これは事故の状況を詳細に記録したもので、有力な証拠となります。なお、物損事故などの場合に作成される「物件事故報告書」は簡易な内容のため、事故状況の証明には不十分なことがあります。

また、ドライブレコーダーの映像などもとても重要な証拠になります。

交通事故の過失割合が決まるタイミング

過失割合が最終的に確定するタイミングは、事故の状況次第です。ここでは、代表的な6つのタイミングを見ていきましょう。

① 事故直後

事故直後においては、保険会社が治療費の支払対応(一括対応)を行うかどうかの判断のために、事故状況や大まかな過失の有無が確認されることがあります。

この段階で最終的な過失割合まで確定させないこともありますが、この際に出た過失割合が今後の交渉の基準となることもあります。

たとえば、「被害者にも4割の過失があるので、一括対応はできません。健康保険を使って、一度自費で立替をお願いします」などと言われるケースがあります。

② 車の修理費の確定後

物損のみの事故の場合、車の修理費用などについては損害額が比較的早くに確定します。

損害額がわかれば賠償額の全体像が見えてくるため、このタイミングで保険会社から過失割合が提示され、交渉が本格化することがあります。

物損と人身の両方がある事故では、まず物損の示談交渉で過失割合を決め、そこで決まった割合がその後の人身損害交渉に影響することもあります。

③ 治療終了後

人身事故でけがが完治した場合、治療終了時点(症状固定)で損害額がほぼ確定します。治療費入通院慰謝料などの総額が計算できるようになります。

賠償額の全体像が見えてくるため、この時期に示談交渉が始まることがあります。その交渉の中で過失割合も話し合われることがあります。

④ 後遺障害認定後

けがが完治せず後遺障害が残ってしまった場合、まずは後遺障害等級の認定を受けます。

認定された等級によって賠償額が大きく変わり、賠償額の全体像も見えてきます。その後の示談交渉で過失割合も話し合われることがあります。

⑤ 最後の示談交渉時

過失割合が最終的に確定するのが、「最後の示談交渉」のタイミングであることもあります。

示談交渉では、まず損害額の全体(治療費、慰謝料、逸失利益など)を計算してから、最後に過失割合を掛け合わせて実際の支払額を決めます。このように過失相殺は計算の最終段階で行うため、過失割合の交渉も示談の最後に行うのが合理的だからです。

また、交渉が決裂し裁判に進んだ場合、解決まで1年以上かかることもあり、判決結果も予測できません。費用や時間、精神的な負担を考えれば、できる限り訴訟を避けたいということが多いです。だからこそ、最終段階の交渉では「裁判に進まずに終わらせたい」という共通の思いが働きやすく、過失割合を含めた合意が成立することが多いです。

⑥ 裁判の判決

交渉で過失割合について合意できない場合、最終的には裁判所の判断に委ねるほかありません。

訴訟では当事者双方が証拠を提出して自らの主張を立証し、裁判官が判決で最終的な過失割合を決定します。

和解協議の中で、裁判官から過失割合についての心証が示され、それが解決の基準となることもあります。

物損事故でのよくあるタイミング

物損事故の場合、損害額の算定が比較的早い段階で可能なため、事故後早い時点で過失割合についての交渉も本格化します。

物損の損害費目(修理費、買替差額など)は、事故後に修理費の見積もりや中古車市場価格などの資料が揃えば、損害額を計算できます。損害額が確定すれば、賠償額の全体像が見えるため、相手方保険会社と示談交渉を始めることができ、その中で過失割合も決まることが多いです。

後遺障害がない人身事故でのよくあるタイミング

後遺障害が残らなかった人身事故では、事故後早い段階または治療が終了した時点以降の示談交渉で過失割合が決まることが多いです。

物損と人損と両方ある場合には、事故後早い段階で物損についての交渉をする際に、過失割合についての交渉が始まることが多いです。

人身のみの場合でも、事故後早い段階で過失割合についての交渉が始まることもありますが、当初は治療に専念し、治療終了後の最後の示談交渉のタイミングで交渉・合意に至ることもあります。

後遺障害が認定された人身事故でのよくあるタイミング

後遺障害が残った人身事故も、事故後早めの段階または後遺障害認定後の示談交渉で過失割合が決まるのが一般的です。

過失割合が決まる時期のよくあるご質問

ここでは、過失割合が決まる時期についてよくいただく質問にお答えします。

警察は過失割合を決めますか?

警察は過失割合を決定しません。

警察の役割は、事故の状況を捜査し、刑事事件として立件するかどうかを判断することです。

その過程で作成される「実況見分調書」などの捜査資料は、後の示談交渉や裁判において、過失割合を判断するための非常に重要な客観的証拠となりますが、警察が民事上の賠償問題である過失割合に立ち入って決定することはありません。

警察が「あなたは悪くない」「過失ゼロ」などと言っていても、民事の交渉や裁判で過失が認められてしまうケースもあります。

相手が提示する過失割合に納得できません。どうすればよいですか?

相手方の保険会社が提示する過失割合に納得できない場合、安易に同意してはいけません。

まずは、なぜその割合になるのか、根拠を明らかにすることが重要です。その上で、客観的な証拠(実況見分調書、ドライブレコーダーの映像など)に基づいて反論し、交渉を行いましょう。

交渉で合意に至らない場合は、民事訴訟を提起して、裁判所に判断を委ねる選択肢もあります。弁護士に相談すれば、適切な過失割合の見通しを立て、証拠収集や交渉を代理で行うことが可能です。

最後の示談交渉の段階まで過失割合を決めなくてもよいのですか?

最後の示談交渉の段階まで過失割合を決めなくても問題ありません。

過失割合は、最終的に受け取る賠償金の額に直接影響する重要な要素です。そのため、治療が終了し、後遺障害の有無が確定するなど、損害の全体像が明らかになってから、他の損害項目とあわせて最終的に合意する方法もあります。

物損と人身で異なる過失割合になることはありますか?

物損と人身で過失割合が異なることがあります。

物損の示談時と人身の交渉時では判明している情報が違うため、後になって新たな事実がわかった場合、過失割合にも影響が出ます。

また、人身の損害を裁判で争う場合は、裁判所が証拠や判例に基づいて独自に判断するため、物損の合意内容と異なる結果になることも珍しくありません。

もっとも、先行して解決した物損事故での過失割合(合意内容)が、後の人身事故の交渉でも事実上の基準として扱われてしまうことがよくあります。物損だからといって安易に妥協して示談してしまうと、人身の賠償額にも大きな影響を与えるリスクがあるため注意が必要です。

過失割合の連絡がこない場合、どうすればよいですか?

過失割合の連絡が遅れている場合は、まず相手方の保険会社に連絡を取り、現在の状況と今後の見通しを確認しましょう。

相手方の保険会社に催促しても回答が得られない、または交渉が進まない場合は、次の方法を検討することになります。

  1. 弁護士への依頼
    交渉を代理してもらい、法的な観点から適切な過失割合を主張できます。
  2. 交通事故紛争処理センターの利用
    中立的な第三者機関による示談あっせんを受けられます。
  3. 裁判所への提訴
    最終手段として、損害賠償請求訴訟を起こすことも可能です。
まずは弁護士に相談し、現在の状況で取るべき最善の対応について助言を得ることをおすすめします。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

交通事故の過失割合が決まる時期は、事故の種類や損害の内容によって異なります。物損だけなら早期に、人身事故なら治療終了後や後遺障害認定後になることもあります。

過失割合は賠償金額に直接影響する重要な要素です。相手方の提示に納得できない場合や、交渉が進まない場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

よつば総合法律事務所では、交通事故に関するご相談を承っています。適切な過失割合の見通しを立て、有利な条件で示談を進めるために、まずはお気軽にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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