過失割合の決め方
最終更新日:2025年09月02日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q過失割合の決め方はどのようなものですか?
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交通事故の過失割合は、事故の状況を整理し、過去の裁判例を参考にしながら当事者同士で話し合って決めるのが基本です。
状況によっては修正要素を加えたり、話し合いがまとまらなければ最終的に裁判で決めることもあります。

目次

過失割合とは
「過失割合」とは、交通事故が起きたときに、加害者と被害者がそれぞれどのくらいの責任を負うかを割合で表したものです。「8対2」や「7対3」などのような割合で示され、数字が大きい人ほど、事故の責任が重いと考えられます。
交通事故では、どちらか一方だけが100%悪いというケースは意外と少なく、多くの場合、被害者の側にも多少の過失が認められます。
もし被害者にも過失があると認められるなら、加害者にすべての損害を負担させるのは不公平です。そのため、被害者自身の過失分は賠償金から差し引かれる仕組みになっています。
過失割合の決め方
では、過失割合はどのようにして決めるのでしょうか。基本的な流れを紹介します。
過去の事例を踏まえて当事者の合意で決定
交通事故の過失割合は、事故を起こした当事者同士の話し合いで決まります。実際には、被害者と加害者の保険会社が交渉を進めるケースが一般的です。
このとき参考にされるのが、過去の裁判例をもとに作られた「基本過失割合」です。ただし、すべての事故がそのまま当てはまるわけではありません。事故の状況や当事者の言い分をもとに、基本過失割合に事情を加味して調整されます。
そのうえで、最終的には当事者が納得して合意する必要があります。
合意できない場合は裁判で決定
もし示談交渉でお互いの主張が食い違い、過失割合について折り合わないときは、最終的に裁判で解決を図ることになります。
裁判では、裁判所が法律に基づき、証拠や当事者の意見をもとに適切な過失割合を決めます。手続きの中で、裁判官が和解案を出すこともありますが、合意に至らなければ判決で決着をつけます。
ただし、裁判には時間と費用がかかり、結果が必ずしも希望通りになるとは限りません。
できれば交渉で解決できないか、慎重に考えてから進めることも大切です。
警察は過失割合を決めない
警察は、事故が発生した事実を記録するだけで、過失割合を決めることはありません。
事故の現場では実況見分が行われ、状況を示す報告書が作成されます。この報告書は、のちに保険会社や裁判所で証拠として使われることがありますが、警察自体に過失割合を決める権限はありません。
過失割合は、あくまで当事者の話し合いや裁判で決めるものです。
過失割合決定までの流れ
交通事故の過失割合は、過去の裁判例を参考にしながら事故状況を確認し、当事者同士の話し合いで決まりますが、まとまらない場合は最終的に裁判で決まります。
ここでは、過失割合が決まるまでの大まかな流れを4つのステップで紹介します。
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事故状況を正確に把握する
まずは事故状況をできるだけ正確に整理します。当事者の認識がずれたままでは適切な割合は決められません。信号の色、優先道路の有無、一時停止やウインカーの合図などを一つずつ確認し、必要なら写真やドライブレコーダー映像などの証拠で裏付けます。
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「基本の過失割合」を探す
状況を整理できたら、過去の判例から似ている事故パターンを探して基本過失割合を調べます。たとえば直進車と右折車の事故では「直進車2:右折車8」とされるケースがあります。
このような基準は「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準別冊判例タイムズ38号」に掲載されていますが、内容は専門的です。事故類型の選び方に悩んだら、弁護士に相談することをおすすめします。
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修正要素を考慮する
同じ事故のパターンでも、状況は一つひとつ違います。たとえば、スピード違反やわき見運転があったり、被害者が高齢者や子どもだったりする場合です。
こうした事情を考慮して、基本過失割合に「修正要素」をプラスしたりマイナスしたりして調整します。「+10%」「-5%」といった形で修正することで、より実際の状況に合った割合になります。
代表的な修正要素には次のようなものがあります。
- 夜間や薄暗い時間帯
- 幹線道路、交通量が多い場所
- 歩行者の急な飛び出し
- 高齢者や子どもが被害者の場合
- スマホ等を使ったわき見運転、酒気帯びなどの著しい過失
- 酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転などの重過失
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話し合いで最終的に決める
基本過失割合と修正要素を踏まえた上で、最終的な数字は当事者同士が話し合いを繰り返して決めます。同じ事故は一つとしてないため、お互いが納得できる形に整えることが大切です。
もし話し合いで合意ができない場合は、最終的に裁判で決着をつけます。裁判では、裁判所が証拠や状況を確認して適正な過失割合を判断します。ただし、時間や費用がかかるため、できるだけ話し合いで解決できるかどうかを考えて進めることをおすすめします。
過失割合の決め方のよくあるご質問
交通事故の過失割合について、被害者の方から特によくいただく疑問をまとめました。示談交渉や保険会社との話し合いの参考にしてみてください。
過失割合はいつ決まりますか?
過失割合は、示談交渉の中で当事者同士が話し合い、合意したときに初めて決まります。
話し合いのタイミングは、事故後に保険会社から連絡がきたころ、特に修理費等物損の話し合いを開始したタイミングであることが多いです。ただし、事故後早い段階で決まらないときは、最終的な示談交渉や裁判の時点で決まることになります。
なお、物損と人身の両方に被害がある場合は、先に物損部分で過失割合を決め、その内容が人身部分の示談にも影響することが多いです。物損の段階でも安易に合意せず、適正かどうかをしっかり検討することが大切です。
加害者の保険会社が提示する過失割合に応じなければいけませんか?
提示された過失割合に無理に応じる必要はありません。
相手の保険会社が示す過失割合は、必ずしも被害者にとって公平とは限りません。加害者側の保険会社は被害者の味方ではないため、実際よりも不利な割合を提案されることもあります。
提案に納得できないときは、すぐに同意せず、提示された根拠が妥当かどうかをしっかり確認しましょう。証拠を集めて状況を整理し、必要に応じて弁護士に確認してもらうと、不利な示談を防ぐことができます。
過失割合を「ゴネ得」されないためにはどうすればよいですか?
相手が不当に有利な割合を主張してくる、いわゆる「ゴネ得」を防ぐには、何より事故状況を客観的な証拠で示すことが大切です。
以下のような証拠が揃っていれば、相手が一方的に主張を変えても根拠を示して反論できます。
- ドライブレコーダー映像
- 事故現場の写真
- 車の損傷写真
- 警察の実況見分調書
- 目撃者の証言
- 防犯カメラ映像
また、示談交渉の途中で不安を感じたときは、弁護士が代わりに交渉することで、不利な主張を退けやすくなります。
過失割合を有利に交渉するコツは何ですか?
過失割合を少しでも被害者側に有利に進めるためには、「正しい情報」と「十分な証拠」を整理しておくことが基本です。また、過去の裁判例や基準を調べ、相手の提示が妥当かどうかを冷静に判断する力も必要です。
ポイントは、次の3つです。
- 事故状況をできるだけ具体的に証拠で示す
- 相手の主張に流されず、根拠を確認する
- 必要に応じて弁護士に交渉を任せる
一人で交渉を進めると、専門用語や法的根拠で押し切られてしまうこともあります。心配なときは、早めに弁護士への相談をおすすめします。
過失割合の決め方で悩んだらよつば総合法律事務所へ
交通事故の過失割合は、示談交渉や賠償金の金額を左右する大切なポイントです。しかし、保険会社とのやり取りや必要な証拠集めを一人で進めるのは簡単ではありません。
よつば総合法律事務所には、交通事故を数多く扱ってきた専門チームがあり、必要に応じて顧問医や事故調査の専門家とも連携しながら、後遺障害の認定や過失割合の確認なども納得できる形で進められるようサポートしています。
「このまま進めて大丈夫かな」と不安を感じたときは、どうか一人で抱え込まずにご相談ください。
私たちよつば総合法律事務所は、交通事故の無料相談を受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。

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