高次脳機能障害におけるCTとMRIの役割

最終更新日:2026年08月27日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q高次脳機能障害におけるCTとMRIの役割は何ですか?

CTとMRIは、脳に傷があること(脳の器質的損傷)を目に見える形で証明するための検査です。高次脳機能障害の後遺障害認定では、画像による証明がとても重視されます。

CTは、事故直後の脳内出血や頭蓋骨骨折などを短時間で確認することが得意です。一方、MRIは、CTではわかりにくい細かな脳の損傷や、事故から時間がたって現れる脳の変化を詳しく調べることに向いています。

このように、CTとMRIはそれぞれ役割が異なるため、症状や受傷後の経過に応じて使い分けられます。

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高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、交通事故などで脳が傷ついた結果、記憶や注意、感情のコントロールなどがうまく働かなくなる障害です。

見た目には大きな異常がわからないことも多く、本人も自覚していない場合があります。そのため、「以前と人が変わった」と家族や周囲の人が変化に気づくケースも少なくありません。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害の代表的な症状には、次のようなものがあります。

  1. 新しいことを覚えられない、同じ質問を繰り返す
  2. 集中力が続かない、ミスが増える
  3. 計画を立てて物事を進められない
  4. 怒りっぽくなる、感情をうまく抑えられない

症状の現れ方や程度には個人差があり、仕事や日常生活に支障が生じることもあります。

高次脳機能障害が認定される要件

高次脳機能障害は、交通事故による後遺症として残ることがあります。

後遺障害慰謝料逸失利益(事故にあわなければ得られたはずの収入)などの損害賠償を請求するためには、自賠責保険で高次脳機能障害が後遺障害として認定されることが重要です。

自賠責保険における高次脳機能障害の後遺障害の認定では、主に次の3つが重視されます。

  1. 脳の器質的損傷
    CTやMRIなどによる、脳そのものの傷を示す所見
  2. 意識障害
    受傷直後の意識障害や、もうろうとした状態、事故前後の記憶が抜けていること(外傷後健忘)などの有無・程度・経過
  3. 認知障害や人格変化
    事故の後に生じた記憶力や性格の変化と、日常生活や仕事への影響

特に重要なのが、CTやMRIなどの画像で脳の器質的損傷を確認できるかどうかです。器質的損傷とは、脳の組織そのものについた物理的な傷のことです。気分の落ち込みなどの心の不調とは区別され、脳自体が傷ついていることを画像で示す必要があります。

たとえば、外傷性くも膜下出血や急性硬膜下血腫は、脳の表面や膜の間で起きる出血です。出血そのものだけでなく、それによって脳が圧迫された痕跡や、その後に脳の萎縮などが生じているかどうかが、器質的損傷を証明するポイントとなります。

以上のように、高次脳機能障害の認定では、適切な時期にCTやMRIなどの画像検査を受け、脳の状態を正確に確認することが重要です。

CT検査とは

高次脳機能障害でCT検査

CTは、X線を使って体の断面を撮影する検査です。コンピューター断層撮影ともいいます。

検査時間が短いため、交通事故の救急現場で最初に行われることが多い検査です。

CT検査の方法

CT検査では、ドーナツ型の機械の中に体を通し、X線でぐるりと撮影します。撮影は数分程度で終わるため、事故直後のあわただしい場面でも実施しやすい検査です。

頭部CTでは、脳を輪切りにしたような断面画像を確認できます。事故直後の出血は白く写ることが多く、硬膜下血腫やくも膜下出血などの大きな出血をすばやく見つけられます。

事故直後のCTで異常がはっきりしなくても、数時間後や数日後の再検査で所見が現れるケースもあります。頭を打ったあとに様子がおかしいときは、医師に伝えて再検査の実施について相談しましょう。出血の量が増えていく経過を画像で追えると、その記録自体が脳の損傷を裏づける有力な材料になることがあります。

レントゲン検査との違い

レントゲン検査は、主に骨の状態を平面的に写す検査です。脳の内部や、頭の中の出血を確認することには適していません。

一方、CTはコンピューター処理により、脳の内部を断面図として確認できます。

事故直後の出血の有無や、出血が増えていないかを調べるときは、レントゲンではなくCTが役に立ちます。

MRI検査とは

高次脳機能障害のMRI検査を伝える医師

MRIは、強い磁石と電波を使って体の内部を撮影する検査です。磁気共鳴画像ともいいます。

X線を使わないので被曝の心配がなく、脳の組織の細かな変化を写せることが特徴です。

MRI検査の方法

MRI検査では、筒状の装置の中に横になって撮影します。検査時間は20~40分程度が目安です。撮影中は大きな音がしますが、痛みはありません。

ペースメーカーなどの医療機器や金属が体内にある場合は、機器の種類や撮影条件によって検査を受けられないことがあります。該当するものがあるときは、必ず事前に医師や検査担当者へ伝えましょう。

CTと比較したMRIの特徴

MRIは、CTと比べて脳の組織を細かく写すことができ、微細な脳挫傷や脳の深い部分の損傷などを確認しやすいという特徴があります。また、放射線を使わないため、被ばくの心配がありません。

一方、撮影には20~40分程度かかり、事故直後の救急現場で迅速に出血や骨折を確認する用途には、CTの方が適しています。

CTとMRIの主な違いをまとめると、次のとおりです。

項目 CT MRI
撮影時間 数分程度 20~40分程度
放射線 使う 使わない
得意なこと 事故直後の出血の発見 細かな脳の損傷や経時変化の確認
主な役割 救急での迅速な診断 細かな損傷の精密な評価

MRIでは、CTに写らない小さな脳挫傷や微小出血などが確認できることがあります。びまん性軸索損傷が疑われる場合にも、MRIが脳損傷を裏付ける手がかりになることがあります。

MRIの撮影方法

MRIの画像はどれも同じように見えますが、実は様々な撮影方法があります。

主な撮影方法と特徴は次のとおりです。

撮影方法 特徴
T1強調画像 脳の形や、脳の縮み(脳萎縮)などを確認する基本的な撮影方法です。
T2強調画像 水分の多い部分が明るく写りやすい基本的な撮影方法です。脳のむくみや脳挫傷に伴う変化を確認する手がかりになります。
FLAIR(フレア) 脳脊髄液(脳のまわりを満たす水分)の信号を抑えて撮影する方法です。脳の表面や脳室の近くにある損傷を確認しやすくなります。
T2スター(T2*) 小さな出血の痕を黒い点として捉える撮影方法です。時間が経過した後も残る出血の痕を確認できます。
SWI(磁化率強調画像) T2スター強調画像よりも感度が高い撮影方法です。より細かな出血の痕を捉えられると期待されています。
拡散強調画像(DWI) 水分子の動きの変化を画像にして、事故から間もない時期(急性期)の細かな脳の変化を捉える手がかりとなる撮影方法です。見え方は、損傷の種類や撮影時期によって異なります。

このうち高次脳機能障害で特に大切になるのが、T2スター(T2*)強調画像、SWI、DWIの3つです。脳が強くゆさぶられたときに起きる細かい出血や損傷を、見つける手がかりになるためです。

T2スター(T2*)強調画像やSWIに出血の痕が写るのは、軸索(神経の線維)が引き伸ばされて傷つくときに、周りの細い血管も傷ついて、わずかな出血が起きることがあるからです。ただし、写った出血の痕だけで、脳の損傷の程度や高次脳機能障害の重さが決まるわけではありません。ほかの画像所見や症状の経過とあわせて評価されます。

一方、拡散強調画像(DWI)には、出血をともなわない損傷も写せるという強みがあります。ただし、見え方は時間とともに変化するため、早めの検査が必要です。

どの方法の撮影が適切かは症状や時期に応じて主治医が判断します。気になることがあれば、主治医に相談しましょう。

MRI撮影のポイント

高次脳機能障害の認定では、MRIを撮影する時期や撮影方法が重要になります。

脳の損傷を示す所見の中には、時間の経過とともに確認しにくくなるものもあるため、適切な時期に撮影することが大切です。

事故後早めに撮影する

脳の小さな損傷は、時間の経過とともに画像から消えてしまうことがあります。そのため、事故直後からなるべく早い時期(症状が安定した段階や受傷後数週間以内など)にMRIを撮影しておくことが望ましいです。

頭を打った、意識がもうろうとした、様子がおかしいといった症状があらわれたときは、早めに医師へ相談しましょう。

脳萎縮や脳室拡大を経時的に確認する

事故直後の画像だけでなく、時間をおいて撮影した画像と比べることも大切です。

脳の神経が傷つくと、時間の経過とともに脳が縮んだり、脳室と呼ばれる脳内の空間が広がったりすることがあります。事故直後には目立たなかった変化が、数か月後の画像で明らかになる場合もあります。

そのため、後から撮影した画像だけを見るのではなく、受傷直後の画像と比較し、事故後に脳萎縮や脳室拡大が生じたかを確認することが重要です。このような経時的な変化が確認できれば、事故による脳の損傷を裏付ける資料になります。

びまん性軸索損傷の場合の注意点

びまん性軸索損傷とは、事故による急激な加速・減速や回転の力によって、脳内の神経線維である軸索が広い範囲で引き伸ばされ、傷つく損傷です。

言葉を分解すると、意味がつかみやすくなります。「びまん性」は広い範囲に広がっていること、「軸索」は神経細胞から伸びて情報を伝える線維、「損傷」は傷つくことです。

脳の中に張り巡らされた無数のケーブルが、事故の衝撃によって広い範囲で傷ついた状態と考えるとわかりやすいでしょう。

びまん性軸索損傷では、傷ついた軸索そのものを通常のCTやMRIで直接確認することが難しく、事故直後の画像に明らかな異常が現れないこともあります。一方、軸索の損傷に伴って微小出血が生じている場合には、T2スター(T2*)強調画像やSWIなどのMRIで捉えられることがあります。

また、事故直後の画像で大きな異常が確認できなくても、時間の経過とともに脳萎縮や脳室拡大が現れる場合があります。ただし、すべてのケースでこのような変化が生じるわけではありません。

そのため、受傷直後の画像だけで判断するのではなく、その後に撮影した画像と比較し、脳に経時的な変化が生じていないかを確認することが重要です。

よくある質問

最後に、高次脳機能障害のCTやMRIについて、よくいただく質問をまとめました。

CTのみで脳挫傷と診断された場合、MRIも撮影したほうがいい?

MRIの撮影も検討することをおすすめします。CTで脳挫傷がわかったときでも、MRIを撮影すると、CTでは写らなかった細かい損傷や損傷の範囲を確認できる可能性があるからです。

とくに受傷後の早い時期にT2スター(T2*)強調画像やSWI、FLAIRなどで撮影しておくと、あとの後遺障害認定で役に立つことがあります。撮影の要否や方法は、主治医と相談して決めましょう。

症状固定の段階で再度CTやMRIを撮影したほうがいい?

症状固定の段階で再度CTやMRIを撮影することをおすすめします。

脳の萎縮や脳室の拡大といった変化は、受傷後およそ3か月〜6か月程度かけて現れ、定着していくと考えられています。

症状固定時の画像は、事故による脳の損傷の最終的な結果を示す証拠になりえます。事故直後の画像と比べて変化があれば、脳の損傷を客観的に裏づけられる可能性があります。

撮影のタイミングは主治医や弁護士に相談しましょう。

画像に異常がない場合でも後遺障害になる?

画像に異常がない場合でも後遺障害として認められる可能性はゼロではありません。しかし、画像所見があるときと比べると、そのハードルは極めて高いでしょう。

画像所見がないときは、事故直後に重い意識障害が続いた事実、認知機能検査の結果、家族が記録した日常生活の変化などを積み重ねて主張していくことになります。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

高次脳機能障害の適正な認定を受けるためには、CTやMRIの画像がとても重要です。いつ、どのような条件で撮影するかによって、脳の損傷を証明できるかどうかが変わることがあるからです。

難しいのは、検査についての判断が必要になる時期が、事故直後の余裕のない時期と重なることです。撮影の時期を逃すと、あとから取り返せないケースもあります。

そして、脳の損傷を画像で証明できるかどうかは、後遺障害の等級(後遺症の重さの区分)を左右します。認定された等級は、後遺障害慰謝料や逸失利益といった賠償金の算定に大きな影響を及ぼします。

だからこそ、必要な検査を受けられているか、画像に見落としがないかを、早い段階で確かめておくことが重要です。

「事故のあと、家族の様子が以前と違う」と感じたときが、相談のタイミングです。

よつば総合法律事務所では、高次脳機能障害を含む交通事故のご相談をお受けしています。検査や後遺障害申請の進め方に迷ったら、お気軽にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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