休業損害・事業所得者

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損害賠償の基準
(赤い本と青い本は賠償基準をまとめた本です。自賠責保険は加入義務のある保険です。)
赤い本の損害賠償基準
- 現実の収入減があった場合に認められる。
- 自営業者、自由業者などの休業中の固定費(家賃・従業員給料など)の支出は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められる。
青い本の損害賠償基準
- 基礎収入額(収入日額)は、通常、事故前年度の確定申告所得額によって認定する。なお、青色申告控除がなされている場合は、同控除額を引く前の金額を基礎とする。
- 事業を継続する上で休業中も支出を余儀なくされる家賃、従業員給料などの固定経費も、相当性がある限り休業損害に含まれる。
- 受傷やその治療のために休業し、現実に喪失したと認められる得べかりし収入額とする。
自賠責保険の損害賠償基準
- 1日につき原告として6100円とする。
事業所得者の休業損Q&A
- Q事業所得者とは何ですか?
- A商業、工業、農林水産業、サービス業などに従事する個人名で事業を営んでいる人です。
【解説】
- 「株式会社」の代表取締役の場合、事業所得者ではありません。
- 株式会社の代表取締役の休業損害は、会社役員の休業損害の解説をご参照下さい。
- Q確定申告の金額に毎年大幅な変動がある場合、年収はどのように計算しますか?
- A数年分を平均することが多いです。
【解説】
- 個人事業主の場合、年度によって確定申告の所得額に大幅な増減があることが多いです。
- 増減が多い場合、数年分の平均額を計算するなど、事案によって適切な計算方法で計算することとなります。
- Q確定申告の所得を上回る所得が実際にあった場合はどうなりますか?
- A証明ができれば実際の所得額を基準として年収を計算します。
【解説】
- 確定申告の申告所得額を超える所得額の主張をする場合、確実な証拠が必要です。
- 確定申告の申告所得額では生活の維持が困難という事情がある場合、確定申告の所得額を超える年収額を元に休業損害の算定が行われやすいです。
- Q確定申告をしていない場合はどうなりますか?
- Aある程度の休業損害は認められます。
【解説】
- 確定申告をしていないからといって休業損害がゼロとなるわけではありません。
- 資料がある範囲で証明をすることにより、ある程度の休業損害が認められます。
- ただし、認められる休業損害額は実損額より少額となることが多いです。
- Qどのような固定経費を休業損害に含めて計算できますか?
- A休業しても発生し続ける固定経費です。
【解説】
次のような固定経費等を休業損害に含めて計算することが可能です。- 租税公課
- 損害保険料
- 利子割引料
- 地代家賃
- 諸会費
- リース料
- 減価償却費
- 修繕費
- 管理諸費
過去の具体的な事例
大阪地方裁判所令和元年12月24日判決
【結論】
- バレエダンサー(兼講師)について休業損害199万円が認められた
【理由】
- 左肩神経症状のバレエダンサー(兼講師)の35歳(後遺障害等級14級)
- 直ちにバレエダンサーとして稼働することは困難
- 講師として稼働することは可能
- 事故前の年間所得324万円を基礎
- 入院期間56日
- 事故後60日は100%の休業損害、その後100日は80%の休業損害、その後170日は50%の休業損害を認める
まとめ
- 現実の収入減があった場合に事業所得者の休業損害は認められます。
- 休業中の固定費の支出は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められることがあります。