休業損害・学生

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損害賠償の基準
(赤い本と青い本は賠償基準をまとめた本です。自賠責保険は加入義務のある保険です。)
赤い本の損害賠償基準
- 原則として認めないが、収入があれば認める。
- 就職遅れによる損害は認められる。
青い本の損害賠償基準
- 生徒・学生は、社会人として就労する前の地位であるから、本来ならば金銭収入は得ておらず、休業損害は発生しない。
- アルバイトをしている者については、現実のアルバイト収入を基礎として算定した休業損害が認められる。
- 一般の社会人のように安定した雇用関係とは言えないので、現実的な就労予定日数を認定して損害算定をする。
- 治療が長期にわたり、学校の卒業ないし就職の時期が遅延した場合は、就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められる。
自賠責保険の損害賠償基準
- 特段の基準なし
学生の休業損害Q&A
- Q学生の休業損害の日数はどのように決めますか?
- A現実の過去のアルバイトの日数などを元に決めます。
【解説】
- 学生のアルバイトは一般の社会人のように安定した雇用関係とは言えません。そのため、過去の就労状況や継続性、授業や単位取得のための試験の負担による就労日数の減少などを検討し、現実的な就労予定日数を設定して損害額を決めます。
- Q学校の卒業が遅延した場合の休業損害の基準となる金額はどのように決めますか?
- A就職が内定していて、給与額が明確に推定できるような場合には内定先の給与によります。給与額がはっきりとしない場合、学歴別の初任給平均値となることが多いです。
- Q後遺障害が認定された場合の学生の逸失利益はどのように計算しますか?
- A全年齢平均の賃金センサスを使うことが多いです。詳細は学生の逸失利益の解説をご参照下さい。
過去の具体的な事例
名古屋地方裁判所平成23年2月18日判決
【結論】
- 大学3年生の事故につき休業損害199万円が認められた
【理由】
- 大学3年生の男性
- 就職活動のために直ちにバイトを自粛しなければならない状況ではない
- 事故前日までの102日間の実収入を参考に休業損害の日額を計算
- 症状固定まで384日間199万円が認められた
福岡地方裁判所平成28年4月25日判決
【結論】
- 事故時高校生につき月額6万2000円を基礎に229万円が認められた
【理由】
- 症状固定時22歳の大学生
- 高校時に事故
- 大学進学後もアルバイトに従事する予定
- 事故前のアルバイト収入は月額5万4546円
- 月額7万5600円のアルバイト収入の時もあった
- 同じ大学の卒業生のアンケート結果によるとアルバイトは月額平均6万1067円
大阪地方裁判所平成19年1月31日判決
【結論】
- 高校3年生時の事故につき426万円が認められた
【理由】
- 症状固定時は23歳の女性(後遺障害等級1級)
- 事故に遭わなければ大学を卒業していた可能性が高い
- 大学を卒業年の4月1日から症状固定まで518日間426万円を認めた
- 賃金センサス女性大卒20歳から24歳平均賃金を基礎に計算した
大阪地方裁判所平成24年7月30日判決
【結論】
- 専門学校生について約40カ月分の989万円が認められた
【理由】
- 事故時18歳の専門学校生の右目失明外貌醜状(後遺障害等級併合5級)
- 事故がなければ翌々年4月から就労開始予定
- 賃金センサス男性高専短大卒20歳から24歳平均の年収を基礎に計算した
- 就労開始予定日から症状固定日まで40カ月で989万円
まとめ
- 学生の場合、アルバイトが事故によりできなくなった場合、休業損害が認められます。
- 長期間の治療で卒業遅延、就職遅延などとなった場合、就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められます。