逸失利益の就労可能年数

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損害賠償の基準
(赤い本と青い本は賠償基準をまとめた本です。自賠責保険は加入義務のある保険です。)
赤い本の損害賠償基準
- 労働能力喪失期間終期は、原則として67歳とする。
- 症状固定時の年齢が67歳を超える者については、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とする。
- 症状固定時から67歳までの年齢が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる者の労働能力喪失期間は、原則として平均余命の2分の1とする。
- 労働能力喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により異なる判断がされることがある。
- 労働能力喪失期間の始期は症状固定日とする。未就学者の就労の始期については原則18歳とするが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とする。
- むち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に(労働能力喪失期間を)制限する例が多く見られるが、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきである。
青い本の損害賠償基準
- 就労可能年数(通常は67歳、高齢者(家事従事者を含む)の場合は平均余命の2分の1の年数)まで、喪失期間を認める裁判例が多い。
- (むちうち損傷)については、後遺障害等級12級該当については10年、後遺障害等級14級該当については5年の労働能力喪失期間を認めた例が多い。ただし、これと異なる長期短期の喪失期間を定めた例もある。
自賠責保険の損害賠償基準
- 独自の基準あり(省略)
逸失利益の就労可能年数Q&A
- Q労働能力喪失期間で注意するポイントは何ですか?
- A50代~60代の場合、67歳までの期間で計算しないことがあります。
【解説】
- 若年の場合、67歳までの期間で計算するので間違うことは少ないです。
- 他方、50代~60代の場合、【67歳までの期間】と【平均余命の半分】を比較して長い期間が労働能力喪失期間となります。そのため、67歳までの期間で計算すると間違うことがありますので要注意です。
- Qむちうち以外でも労働能力喪失期間が5年~10年に制限されることはありますか?
- A骨折を伴わない痛み、しびれなどの場合はあります。
【解説】
- 頚椎捻挫・腰椎捻挫などの場合、14級で5年、12級で10年程度に労働能力喪失期間が制限されることはあります。
- 頚椎捻挫・腰椎捻挫以外でも、痛み、しびれなどの14級等の後遺障害の場合、労働能力喪失期間が制限されることがあります。
- 非器質性精神障害の後遺障害の場合も、労働能力喪失期間が制限されることがあります。
過去の具体的な事例
佐賀地方裁判所令和元年8月6日判決
【結論】
- 10年間5%の労働能力喪失期間が認められた
【理由】
- 40代の工務店経営の男性
- 後頭部頚両肩背中の痛み(後遺障害等級14級)、腰痛(後遺障害等級14級)、右足関節痛(後遺障害等級14級)の併合14級の後遺障害
- 症状固定から5年経過しても症状残存
- 局部の神経症状が3か所
- 5年の労働能力喪失期間ではなく、10年の労働能力喪失期間が相当
東京地方裁判所平成29年4月18日判決
【結論】
- 16年間5%の労働能力喪失期間が認められた
【理由】
- 56歳の主婦の女性
- 左胸部痛(後遺障害等級14級)、両臀部痛(後遺障害等級14級)、左右膝痛(後遺障害等級14級)の併合14級の後遺障害
- 日常生活上の動作に一定程度の支障を生じ、日時の経過により低減するとは言えない
- 平均余命の半分の16年間の労働能力喪失期間が相当
まとめ
- 労働能力喪失期間終期は、原則として67歳となります。
- むちうち等の場合は、12級で10年前後、14級で5年前後の労働能力喪失期間となることが多いです。